近年、音楽業界は大きな変革の最中にあります。CDやレコードといった物理的なメディアから、オンライン上でのストリーミング配信へと移行が進む中、各音楽配信サービス会社は独自の戦略を展開して市場での競争を繰り広げています。その結果、どの企業が業界をリードするのか、投資家や音楽ファン、さらにはアーティストたちの注目が高まっています。今回は、2023年の最新情報を基に、世界の音楽配信サービス会社の時価総額によるランキングTOP14をご紹介します。このランキングを通じて、音楽業界の最前線でどのような動きがあるのか、その全貌を掴んでいただくことを目指します。
世界の音楽配信サービス会社ランキング:時価総額TOP14
下記の世界の音楽配信サービス会社ランキング一覧は、本メディアReinforz Insightが各社の公表情報を元に集計している時価総額ランキングです。時価総額は、各企業の株式時価に基づいて算定されており、企業の実質的な価値を示す指標となります。
このランキングを元に分析すると、以下が特徴として見えてきます。
- 地域別企業の存在:
- 日本: 7社
- 中国: 2社
- 大韓民国 (韓国): 3社
- ルクセンブルク: 1社
- オーストラリア: 1社
- シンガポール: 1社
このデータから、日本がこのリストに最も多く存在しており、音楽関連の企業の強さや市場規模を示唆しています。
- 時価総額の範囲:
- 最大の時価総額: Spotify Technology SAの41,933億円
- 最小の時価総額: Edition Ltdの17億円 Spotifyの時価総額は、リスト内の次の最大のTencent Musicの約2.5倍以上であり、その市場支配力を示しています。
- 時価総額の順位と国の関連:
- トップ2の企業はルクセンブルクと中国を拠点としています。これに対して、日本の最初の企業はランキングの3位に位置しています。
- 韓国、中国、オーストラリア、シンガポールの企業は、リストの中央から下位に位置しています。
- 分散性:
- リスト上位に位置する企業の時価総額は、下位の企業と比べて非常に大きい差があります。SpotifyとTencent Musicの時価総額は他の企業と比較して非常に大きいのに対して、リストの中央から下位にかけての企業は時価総額が比較的近いものとなっています。
総括: このリストは、音楽関連の企業の時価総額における大きな格差を示しています。SpotifyとTencent Musicが業界の巨人である一方、他の多くの企業は比較的小規模です。地域的には、日本の企業がリスト内で最も多く、多様な音楽関連の企業が存在していることがわかります。
以下は、ランキングトップ5にランクインしている企業です。
1位:Spotify Technology SA(ルクセンブルク)
スウェーデン発の音楽ストリーミングサービスとして世界中で非常に知名度が高い。ユーザーは無料で音楽をストリーミングすることができ、また有料会員として広告なしで音楽を楽しむことができる。
世界中での強固なユーザーベースと、楽曲のライブラリが豊富であり、多くのアーティストやレコード会社との提携を持っているため。
2位:Tencent Music Entertainment Group(中国)
中国最大の音楽ストリーミングサービスで、複数のプラットフォームを運営している。中国以外にも展開を広げており、多岐にわたるエンターテインメントサービスを提供している。
中国という巨大な市場での圧倒的なシェアと、テンセントという巨大な親会社の支援による資金力とブランド力。
3位:USEN-NEXT HOLDINGS(日本)
日本の音楽放送サービスの老舗であり、店舗向けのBGM放送や音楽配信サービスなど、多岐にわたる音楽関連サービスを提供している。
日本国内での長い事業歴史と、幅広い音楽サービスでのシェアを持っているため。
4位:エイベックス(日本)
日本の大手音楽エンターテインメント企業で、多くの有名アーティストを抱えており、音楽制作からアーティストマネジメント、ライブイベントの主催まで手掛けている。
著名なアーティストとの契約、及び日本国内での高いブランド認知度と業界内での影響力のため。
5位:エムティーアイ (MTI)(日本)
日本のIT企業で、音楽配信サービスやモバイルコンテンツの提供を行っている。特に、スマートフォン向けのコンテンツ提供が主力。
日本のモバイル市場での強固な地位と、幅広いコンテンツ提供を通じた多角的な事業展開のため。
これらの企業は、各国の音楽・エンターテインメント市場において強固な地位を築いており、その結果として高い時価総額を持っていると分析できます。特にSpotifyとTencent Musicは、それぞれの地域を代表する音楽ストリーミングサービスとしての地位を確立しており、その市場シェアとブランド力が高い時価総額を支えていると考えられます。
【世界の音楽配信サービス会社ランキング:時価総額TOP14リスト】
※対象となる音楽配信サービス会社として「上場企業」かつ「音楽配信サービス業を展開している企業」
※対象決算期はデータ入手が可能な直近決算期を採用
※時価総額は記事執筆時点(2023年7月27日)の株価および為替レートで算出
ランキング | 企業名 | 所在国 | 決算期 (決算期) | 時価総額(億円) |
1 | Spotify Technology SA | ルクセンブルク | 2022/12 | 41,933 |
2 | Tencent Music Entertainment Group | 中国 | 2022/12 | 16,848 |
3 | USEN-NEXT HOLDINGS | 日本 | 2022/08 | 1,995 |
4 | エイベックス | 日本 | 2023/03 | 685 |
5 | エムティーアイ | 日本 | 2022/09 | 349 |
6 | Genie Music Corp | 大韓民国 | 2022/12 | 229 |
7 | オリコン | 日本 | 2023/03 | 151 |
8 | FNC Entertainment Co Ltd | 大韓民国 | 2022/12 | 116 |
9 | A8 New Media Group Ltd | 中国 | 2022/12 | 100 |
10 | NHN BUGS Corp | 大韓民国 | 2022/12 | 72 |
11 | フェイス | 日本 | 2023/03 | 71 |
12 | スペースシャワーネットワーク | 日本 | 2023/03 | 49 |
13 | Jaxsta Ltd | オーストラリア | 2022/06 | 22 |
14 | Edition Ltd | シンガポール | 2022/12 | 17 |
出典:各社プレスリリースなど
世界の音楽配信サービス会社ランキングの有用性
世界の音楽配信サービス会社のランキングの有用性について詳しく考えると、以下のようなポイントが挙げられます。
- 市場動向の理解:ランキングを通じて、音楽配信業界の動向や成長している企業、新興企業などの傾向を掴むことができます。
- 投資判断の参考:投資家やアナリストはランキング情報を利用して、投資先企業の選定やポートフォリオの最適化を行う際の参考とすることができます。
- ビジネス戦略の策定:企業間の競争力や市場シェアを知ることで、自社の位置付けや今後の戦略を策定する参考とすることができます。
- 消費者の選択基準:ユーザーはランキングを参照して、どの音楽配信サービスを利用するかを選択する一つの基準とすることができます。
- マーケティング活動の参考:企業は自らのランキング位置をPRやマーケティング活動で強調することで、ブランドイメージの向上や新規顧客獲得の戦略として利用することができます。
- 業界の健全性の指標:業界全体の成長や縮小、企業の参入・退出の動向などをランキングを通じて把握することで、業界の健全性や将来的な展望を評価することができます。
- グローバル視点の確立:世界のランキングを参照することで、国内だけでなくグローバルな視点での市場分析や戦略策定が可能となります。
- 業界内のパートナーシップの可能性:ランキング上位の企業や注目される企業をターゲットとして、提携やパートナーシップの機会を模索することができます。
ただし、ランキングには以下のような限界点や注意点も存在します。
- 単に時価総額や利益などの経済的指標だけで企業を評価すると、その企業の品質やサービス、ユーザーエクスペリエンスなどの非経済的要因が疎外される可能性がある。
- 一時的な市場の動きや短期的な成功によってランキングが変動する場合があり、長期的な業界の動向を判断する際には慎重な分析が必要。
以上の点を考慮すると、ランキング情報は多岐にわたる有用性を持つ一方で、それをどのように解釈・利用するかが重要であると言えます。
世界の音楽配信サービス会社ランキング:変化を与える要素
世界の音楽配信サービス会社ランキングに変化を与える要素は、以下の通りです。
技術の進化
配信技術の向上や新たな音質技術の導入、新しいプラットフォームへの対応など、技術の進化はサービスの質や配信速度、利便性を向上させ、競争力を左右します。
楽曲ライブラリの充実
有名アーティストや注目の新人との契約、多様なジャンルや国の楽曲を持つことでユーザーを引き付け、サービスの競争力を高めることができます。
ビジネスモデルの革新
新しい価格設定、サブスクリプションモデル、広告モデルなど、ユーザーに受け入れられるビジネスモデルの採用や革新は大きな差別化要因となり得ます。
マーケティングとブランド戦略
効果的な広告戦略、エンドースメント、ブランディングはユーザー獲得やブランドの認知度向上に貢献します。効果的な広告戦略、エンドースメント、ブランディングはユーザー獲得やブランドの認知度向上に貢献します。
ユーザーエクスペリエンスの向上
使いやすいUI/UX、パーソナライゼーション、レコメンデーションの精度向上など、ユーザーの満足度を高める要素はサービスの競争力を強化します。
規制や法律の変化
特定の国や地域における著作権法や規制の変更は、サービスの展開やビジネスモデルに影響を与える可能性があります。
経済的環境
経済の好不調、消費者の購買力、通貨の価値などが音楽配信サービスの利用頻度や収益に影響を及ぼすことがあります。
社会的・文化的トレンド
音楽の消費方法や好み、新しい音楽ジャンルの登場、文化的な変化や社会的な動きは、ユーザーの音楽サービスに対する需要や期待に影響を与えます。
競合との協業やM&A
業界の再編や大手企業間の提携、M&Aはランキングに大きな変動をもたらす可能性があります。
地域展開の戦略
新しい市場への進出や地域特有の戦略の展開は、会社の市場シェアや収益に影響を及ぼす可能性があります。
これらの要因は、それぞれの音楽配信サービス会社の競争環境やポジション、ランキングに変動をもたらす要因となる可能性があります。そして、これらの要因の組み合わせや相互作用が、ランキングの動きを形成する要因となります。
まとめ
音楽業界の中心は、もはや物理的なメディアではなく、オンライン上のストリーミングサービスへと大きく移行しています。そして、その中心での競争は日々激化していることが、このランキングからも明らかになりました。技術の進化、ビジネスモデルの変革、文化や社会のトレンド、そして経済的環境など、様々な要因がこれらの音楽配信サービス会社の成績に影響を与えています。今後も、この動的な業界の変化を追いかけることで、新たな音楽の形やビジネスの可能性を発見することができるでしょう。音楽ファンはもちろん、ビジネスパーソンや投資家も、この業界の今後の動向に目を光らせることが求められます。