近年、情報セキュリティの重要性が一層高まりつつあり、その市場は急速に拡大しています。この動きの背景には、技術の進化、新しいセキュリティ脅威の出現、さまざまな規模のデータ侵害事件、そしてデジタルトランスフォーメーションの加速があります。
こうした中、情報セキュリティ業界のリーダーとなっている企業は、どのような位置を占めているのでしょうか?本記事では、2023年の時価総額に基づいた情報セキュリティ会社のランキングTOP100をご紹介します。
世界の情報セキュリティ会社ランキング:時価総額TOP100
下記の世界の情報セキュリティ会社ランキング一覧は、本メディアReinforz Insightが各社の公表情報を元に集計している時価総額ランキングです。時価総額は、各企業の株式時価に基づいて算定されており、企業の実質的な価値を示す指標となります。
このランキングを元に分析すると、以下が特徴として見えてきます。
- 国別:アメリカがダントツで最も多くの企業をリストに載せており、セキュリティ技術分野での圧倒的なリーダーシップを示しています。次いで、中国と日本がリストに数多くの企業を擁しています。
- 時価総額:時価総額ではCisco Systems Incが最も高く、その時価総額は2位のPalo Alto Networks Incの2.7倍以上になります。このことから、Ciscoはこのリストの企業の中で非常に大きなシェアを占めているといえます。
- 上位企業の傾向:上位の企業の多くはネットワークセキュリティに焦点を当てています。これには、Cisco Systems、Palo Alto Networks、Fortinetなどが含まれます。
- 下位企業の傾向:リストの下位に位置する企業の多くは、特定の地域やニッチなセキュリティソリューションに焦点を当てているようです。
- 多様性:リストには、アメリカ、イギリス、フランス、イスラエル、中国、日本、チリ、スウェーデン、台湾、大韓民国、マレーシア、インド、香港、フィンランド、スイスの15カ国からの企業が含まれています。これは、サイバーセキュリティが世界中の多様な企業にとって重要な課題であることを示しています。
以下は、ランキングトップ5にランクインしている企業です。
1位:Cisco Systems Inc(アメリカ)
Ciscoは、ネットワーク機器の大手メーカーとして知られ、ルーターやスイッチ、ファイアウォールなどの製品を提供しています。また、企業向けの統合的なセキュリティソリューションも手がけています。
Ciscoの製品は世界中の多くの組織で使用されており、堅牢なセキュリティソリューションやネットワークインフラの提供能力が高く評価されています。
2位:Palo Alto Networks Inc(アメリカ)
Palo Alto Networksは、次世代ファイアウォールを中心に、クラウドセキュリティやエンドポイント保護などの幅広いセキュリティソリューションを提供しています。
企業のデジタル変革が進む中で、Palo Alto Networksの先進的なセキュリティ技術は多くの企業から信頼を受けており、特にクラウド環境におけるセキュリティニーズの高まりと合わせて、成長を続けています。
3位:Fortinet Inc(アメリカ)
Fortinetは、高性能なセキュリティアプライアンスや次世代ファイアウォール、エンドポイント保護、クラウドセキュリティなどの製品を提供しています。
一貫したセキュリティプラットフォームとしての「Security Fabric」を提唱し、エンドツーエンドの保護を実現しています。この統合されたアプローチが多くの企業から評価されています。
4位:CrowdStrike Holdings Inc(アメリカ)
CrowdStrikeは、クラウドネイティブのエンドポイント保護プラットフォームを提供しており、サイバー脅威に対する迅速な検出と対応を実現しています。
エンドポイントのセキュリティがますます重要になってきている中、CrowdStrikeのAIを活用した先進的な脅威ハンティングや迅速な対応が高く評価されています。
5位:BAE Systems PLC(イギリス)
BAE Systemsは、防衛、航空宇宙、セキュリティソリューションの分野で活動するグローバルな企業であり、サイバーセキュリティもその主要な事業の一つです。
防衛業界での長い経験と実績を活かし、高度な脅威に対するソリューションを提供しています。特に国家レベルのサイバーセキュリティニーズに対応する能力が高いため、多くの政府や大手企業からの信頼を得ています。
これらの企業は、それぞれ独自の強みや製品ポートフォリオを持ち、サイバーセキュリティ市場でのリーダーシップを維持しています。高まるセキュリティ脅威に対して、これらの企業が提供するソリューションは、多くの組織にとって不可欠であるため、ランキング上位に位置しています。
【世界の情報セキュリティ会社ランキング:時価総額TOP100リスト】
※対象となる情報セキュリティ会社として「上場企業」かつ「情報セキュリティ業を展開している企業」
※対象決算期はデータ入手が可能な直近決算期を採用
※時価総額は記事執筆時点(2023年8月9日)の株価および為替レートで算出
ランキング | 企業名 | 所在国 | 決算期 (決算期) | 時価総額(億円) |
1 | Cisco Systems Inc | アメリカ | 2022/07 | 285,736 |
2 | Palo Alto Networks Inc | アメリカ | 2022/07 | 102,286 |
3 | Fortinet Inc | アメリカ | 2022/12 | 80,022 |
4 | CrowdStrike Holdings Inc | アメリカ | 2023/01 | 48,136 |
5 | BAE Systems PLC | イギリス | 2022/12 | 46,748 |
6 | Thales | フランス | 2022/12 | 40,355 |
7 | Zscaler Inc | アメリカ | 2022/07 | 30,929 |
8 | VeriSign Inc | アメリカ | 2022/12 | 28,505 |
9 | Check Point Software Technologies Ltd | イスラエル | 2022/12 | 20,310 |
10 | Gen Digital Inc | アメリカ | 2023/03 | 16,667 |
11 | 360 Security Technology Inc | 中国 | 2022/12 | 15,969 |
12 | Okta Inc | アメリカ | 2023/01 | 15,671 |
13 | トレンドマイクロ | 日本 | 2022/12 | 9,449 |
14 | CyberArk Software Ltd | イスラエル | 2022/12 | 9,105 |
15 | Sangfor Technologies Inc | 中国 | 2022/12 | 8,792 |
16 | Tenable Holdings Inc | アメリカ | 2022/12 | 7,307 |
17 | Qualys Inc | アメリカ | 2022/12 | 6,652 |
18 | Qi An Xin Technology Group Inc | 中国 | 2022/12 | 6,579 |
19 | SentinelOne Inc | アメリカ | 2023/01 | 5,898 |
20 | Venustech Group Inc | 中国 | 2022/12 | 5,221 |
21 | Viasat Inc | アメリカ | 2023/03 | 4,940 |
22 | Aisino Corp | 中国 | 2022/12 | 4,646 |
23 | CommVault Systems Inc | アメリカ | 2023/03 | 4,574 |
24 | Ziff Davis Inc | アメリカ | 2022/12 | 4,501 |
25 | Sectra AB | スウェーデン | 2023/04 | 4,246 |
26 | CETC Cyberspace Security Technology Co Ltd | 中国 | 2022/12 | 4,245 |
27 | Varonis Systems Inc | アメリカ | 2022/12 | 4,081 |
28 | Darktrace PLC | イギリス | 2022/06 | 3,897 |
29 | Rapid7 Inc | アメリカ | 2022/12 | 3,630 |
30 | QinetiQ Group PLC | イギリス | 2023/03 | 3,428 |
31 | Xiamen Meiya Pico Information Co Ltd | 中国 | 2022/12 | 2,892 |
32 | NetScout Systems Inc | アメリカ | 2023/03 | 2,666 |
33 | ForgeRock Inc | アメリカ | 2022/12 | 2,427 |
34 | Nsfocus Technologies Group Co Ltd | 中国 | 2022/12 | 1,867 |
35 | Grupo Security SA | チリ | 2022/12 | 1,452 |
36 | Beijing VRV Software Corp Ltd | 中国 | 2022/12 | 1,348 |
37 | Riskified Ltd | イスラエル | 2022/12 | 1,116 |
38 | Zhongfu Information Inc | 中国 | 2022/12 | 916 |
39 | SecureWorks Corp | アメリカ | 2023/01 | 856 |
40 | Feitian Technologies Co Ltd | 中国 | 2022/12 | 842 |
41 | デジタルアーツ | 日本 | 2023/03 | 794 |
42 | Surfilter Network Technology Co Ltd | 中国 | 2022/12 | 770 |
43 | Ituran Location and Control Ltd | イスラエル | 2022/12 | 748 |
44 | OneSpan Inc | アメリカ | 2022/12 | 723 |
45 | Mitek Systems Inc | アメリカ | 2022/09 | 665 |
46 | Lanner Electronics Inc | 台湾 | 2022/12 | 587 |
47 | AHNLAB Inc | 大韓民国 | 2022/12 | 570 |
48 | オプティム | 日本 | 2023/03 | 538 |
49 | サン電子 | 日本 | 2023/03 | 468 |
50 | Dagang NeXchange Bhd | マレーシア | 2022/06 | 465 |
51 | Sinosun Technology Co Ltd | 中国 | 2022/12 | 454 |
52 | グローバルセキュリティエキスパート | 日本 | 2023/03 | 453 |
53 | SoundThinking Inc | アメリカ | 2022/12 | 363 |
54 | GMOグローバルサイン・ホールディングス | 日本 | 2022/12 | 355 |
55 | HENNGE | 日本 | 2022/09 | 287 |
56 | Caswell, Inc. | 台湾 | 2022/12 | 285 |
57 | ギガプライズ | 日本 | 2023/03 | 275 |
58 | Proact IT Group AB | スウェーデン | 2022/12 | 273 |
59 | サイバーセキュリティクラウド | 日本 | 2022/12 | 262 |
60 | ポールトゥウィンホールディングス | 日本 | 2023/01 | 257 |
61 | Kudelski SA | スイス | 2022/12 | 255 |
62 | WithSecure Corp | フィンランド | 2022/12 | 251 |
63 | ソリトンシステムズ | 日本 | 2022/12 | 245 |
64 | ラック | 日本 | 2023/03 | 235 |
65 | Telos Corp | アメリカ | 2022/12 | 226 |
66 | インテリジェント ウェイブ | 日本 | 2022/06 | 216 |
67 | イー・ガーディアン | 日本 | 2022/09 | 215 |
68 | サイバートラスト | 日本 | 2023/03 | 208 |
69 | Setopia Co Ltd | 大韓民国 | 2022/12 | 203 |
70 | Blancco Technology Group PLC | イギリス | 2022/06 | 194 |
71 | Dream Security Co Ltd | 大韓民国 | 2022/12 | 164 |
72 | Wins Co.Ltd | 大韓民国 | 2022/12 | 154 |
73 | Quick Heal Technologies Ltd | インド | 2023/03 | 139 |
74 | Kellton Tech Solutions Ltd | インド | 2023/03 | 129 |
75 | Genians Inc | 大韓民国 | 2022/12 | 124 |
76 | Edvance International Holdings Ltd | 香港 | 2023/03 | 120 |
77 | FFRIセキュリティ | 日本 | 2023/03 | 110 |
78 | Automated Systems Holdings Ltd | 香港 | 2022/12 | 102 |
79 | Ksign Co Ltd | 大韓民国 | 2022/12 | 99 |
80 | SMIT Holdings Ltd | 香港 | 2022/12 | 97 |
81 | RaonSecure Co Ltd | 大韓民国 | 2022/12 | 96 |
82 | セキュア | 日本 | 2022/12 | 91 |
83 | Fasoo Co Ltd | 大韓民国 | 2022/12 | 90 |
84 | Korea Electronic Certification Authority | 大韓民国 | 2022/12 | 87 |
85 | 網屋 | 日本 | 2022/12 | 86 |
86 | Hancom WITH Inc | 大韓民国 | 2022/12 | 86 |
87 | Azion Corp | 台湾 | 2022/12 | 84 |
88 | ブロードバンドセキュリティ | 日本 | 2022/06 | 81 |
89 | Verimatrix | フランス | 2022/12 | 78 |
90 | アイキューブドシステムズ | 日本 | 2022/06 | 76 |
91 | Igloo Corp | 大韓民国 | 2022/12 | 71 |
92 | エルテス | 日本 | 2023/02 | 60 |
93 | Initech Co Ltd | 大韓民国 | 2022/12 | 60 |
94 | Virinchi Ltd | インド | 2023/03 | 55 |
95 | Bluedon Information Security Technologies Co Ltd | 中国 | 2022/12 | 55 |
96 | Corero Network Security PLC | イギリス | 2022/12 | 53 |
97 | Willowglen MSC Bhd | マレーシア | 2022/12 | 52 |
98 | Megasoft Ltd | インド | 2023/03 | 47 |
99 | VirnetX Holding Corp | アメリカ | 2022/12 | 46 |
100 | Danlaw Technologies India Ltd | インド | 2023/03 | 45 |
出典:各社プレスリリースなど
世界の情報セキュリティ会社ランキングの有用性
情報セキュリティ会社のランキングは、企業や個人がセキュリティソリューションを選定する際の参考情報として非常に有用です。以下は、情報セキュリティ会社のランキングの有用性に関する考察です。
- 市場の認知度の確認:ランキングは、ある会社がその分野でどれだけの認知度や影響力を持っているかを示す指標となる。上位に位置する企業は、市場での信頼性や認知度が高いと一般的に考えられる。
- 技術的な優越性の指標:一般的に、上位のセキュリティ会社は技術的なリーダーシップや優越性を持っている可能性が高い。これは、そのような企業が持っている技術が他の企業と比較して優れている、あるいは独自のものであることを意味することが多い。
- 製品やサービスの選定:企業や個人は、セキュリティソリューションの選定に際してランキングを参考にすることができる。特に、情報セキュリティの専門知識が不足している場合、ランキングは重要な判断基準となる。
- 競合分析:企業は、自社のポジショニングや競合との差別化を理解するためにランキングを使用することができる。このような情報は、マーケティング戦略や製品開発の方向性を決定するのに役立つ。
- 投資の参考:投資家やアナリストは、情報セキュリティ産業の動向や将来性を評価する際にランキングを参考にすることができる。上位の企業は安定した経営基盤や強固な市場地位を持っている可能性が高いため、投資先としての魅力が高まる。
- 業界のトレンド把握:ランキングの変動や新たにランキング入りする企業を追うことで、業界の最新のトレンドや技術革新を把握することができる。
ただし、ランキングの有用性を過度に信じることはリスクがある。ランキングは一つの指標であり、全ての情報を反映しているわけではない。最終的な製品やサービスの選定、投資判断等に際しては、ランキング以外の多角的な情報を基に判断することが重要です。
世界の情報セキュリティ会社ランキング:変化を与える要素
世界の情報セキュリティ会社ランキングに変化を与える要素は、以下の通りです。
技術的な革新
新しいセキュリティ技術やソリューションの導入は、会社の市場地位を急速に向上させる可能性があります。革新的な技術を持つ会社は、競合他社よりも高い評価を受けることが多い。
セキュリティインシデント
会社が提供する製品やサービスに重大な脆弱性やバグが発見されると、その評価やランキングは大きく低下する可能性があります。また、その企業が対応する速さや方法もランキングに影響を及ぼす。
業界のトレンドと需要の変化
情報セキュリティの領域は常に変化しています。新しい脅威やリスク、法的要件など、市場の需要が変化すると、それに応じて最適なソリューションを提供する会社の評価が変わることがあります。
企業の合併や買収
大手企業が他のセキュリティ会社を買収することで、そのランキングや市場地位が大きく変動することがあります。
マーケティングとブランディング
効果的なマーケティング戦略やブランドイメージの構築は、消費者やビジネスの信頼を獲得する上で重要です。これにより、企業のランキングにも影響を及ぼす可能性があります。
顧客のフィードバックと評価
顧客満足度やフィードバックは、情報セキュリティ製品やサービスの品質を示す指標として重要です。高い顧客満足度は、ランキングの向上をもたらす要因となることが多い。
研究開発の投資
継続的な研究開発への投資は、会社の技術的なリーダーシップを維持・強化する上で不可欠です。新しい技術やソリューションの開発は、競合他社との差別化を生み出すため、ランキングに影響を及ぼす可能性があります。
グローバルな展開
国際的な市場での活動やパートナーシップの展開は、企業の影響力や認知度を増加させる要因となります。
これらの要素は、情報セキュリティ会社のランキングに影響を及ぼす要因として考慮すべきものですが、ランキング自体のメソドロジーや評価基準によっても変動が生じることがあります。そのため、ランキングを評価する際は、その背景や基準も理解することが重要です。
まとめ
情報セキュリティ業界は、技術革新や市場の変動、さらには各企業の戦略やマーケティング活動によって、絶えず変化しています。今回のランキングも、その変動の一部を映し出していると言えるでしょう。
しかし、ランキングだけでなく、各企業が持つ技術やソリューション、そしてその背後にあるビジョンやコミットメントを深く理解することで、真のセキュリティの価値を探求する手助けとなることを願っています。時代の変化とともに進化する情報セキュリティの世界。今後もこの業界の動向に注目していきたいと思います。