世界経済のバックボーンとも称されるERP(Enterprise Resource Planning)ソフトウェア。近年、技術の進展やビジネスニーズの変化に伴い、ERP業界のランドスケープは急速に変動しています。クラウドコンピューティングの普及、AIの統合、IoTの活用…これらの技術革新がERPソフトウェアを中心としたビジネスの最前線でどのような影響をもたらしているのでしょうか。2023年の最新時点で、世界のERPソフトウェア企業の中で、どの企業がトップを走っているのか、そしてその背後にある要因は何なのか。本記事では、時価総額ベースでのランキングを中心に、世界のERPソフトウェア市場の最新トレンドを紐解いていきます。

世界のソフトウェア(ERP)会社ランキング:時価総額TOP68

下記の世界のソフトウェア(ERP)会社ランキング一覧は、本メディアReinforz Insightが各社の公表情報を元に集計している時価総額ランキングです。時価総額は、各企業の株式時価に基づいて算定されており、企業の実質的な価値を示す指標となります。

このランキングを元に分析すると、以下が特徴として見えてきます。

  • 国別の分布:
    • アメリカはランキングの上位に位置し、MicrosoftとOracleを筆頭に3社がランキング内に入っています。特にMicrosoftは他の企業と比較して非常に大きな時価総額を持っています。
    • 日本は最も多くの企業をランキングに持つ国で、多くの中小企業が含まれています。
    • 中国やインドもランキングに多数の企業を持っていますが、時価総額の面では大手が少ないようです。

  • 時価総額の格差:
    • Microsoftの時価総額は非常に突出しており、2位のOracleの約8倍以上となっています。
    • ランキング上位から中位までの企業と、下位の企業との間で、時価総額に大きな差があります。

  • 地域的な特徴:
    • アジアの国々(特に日本、中国、インド)はランキングの中盤から下位にかけて多くの企業を持っています。これは、大手企業に比べて時価総額が小さい中小企業が多いことを示しているか、地域の市場規模や経済の成熟度に関連する可能性があります。
    • ヨーロッパの企業は少ないが、SAP SEのようにランキング上位に位置する企業も存在します。

  • 業界の特徴:
    • 提供されたデータの名称から、多くの企業がIT関連、特にソフトウェアや情報サービス業界に属していると思われます。これは、デジタル変革やテクノロジーの進化が企業価値を高めていることを示している可能性があります。

この分析を通じて、各国や地域の経済動向、テクノロジー産業の成熟度や市場規模など、さまざまな要因が時価総額のランキングに影響を与えていることが伺えます。

以下は、ランキングトップ5にランクインしている企業です。

1位:Microsoft Corp(アメリカ)

世界最大のソフトウェア企業であり、Windows OSやOfficeソフト、Azureクラウドプラットフォームなど、多岐にわたる製品とサービスを提供。テクノロジー業界のリーダーとして、企業や個人ユーザー向けの多様なソリューションを持つ。

長年にわたるブランドの確立と、ビジネスおよび個人向けの幅広い製品とサービスの提供により、絶大な市場支配力を持つ。クラウドコンピューティングやAIの分野での急成長により、収益をさらに増加させている。

2位:Oracle Corp(アメリカ)

世界をリードするエンタープライズソフトウェアの開発企業。データベース管理システムやクラウドサービス、ERP、CRMといった多岐にわたるビジネスソリューションを提供。

ビジネスの核心部分に関連するソフトウェアとサービスを提供することで、多くの大企業や公共機関からの安定した収益を得ている。クラウド移行のトレンドに適応し、これをビジネスの成長の機会として捉えている。

3位:SAP SE(ドイツ)

グローバルなエンタープライズリソースプランニング(ERP)ソフトウェアのリーダー。ビジネスプロセスの効率化や最適化を目指すソリューションを提供。

世界中の多くの企業がSAPのソフトウェアを利用しており、特に大企業の間での採用率が高い。クラウド、IoT、AIなどの新技術の採用を進め、継続的にビジネスの進化・拡大を図っている。

4位:オービック(日本)

日本を中心としたERPや会計ソフトの提供企業。中小企業向けのビジネスソフトウェアで高いシェアを持つ。

日本国内において、オービックのソフトウェアは中小企業を中心に広く普及している。安定した顧客ベースと高い信頼性により、持続的な収益を上げている。

5位:Sage Group (The) PLC(イギリス)

イギリスを拠点とする会計・人事給与ソフトウェアの提供企業。小・中企業を主なターゲットとしている。

世界的にも小・中企業向けの会計ソフトウェアで高いシェアを持っている。クラウドサービスの提供や新しい市場への展開を通じて、成長を継続している。

これらの企業は、それぞれの分野での技術革新や高度なソリューション、およびグローバルな規模での営業活動を通じて、高い時価総額を維持しています。

【世界のソフトウェア(ERP)会社ランキング:時価総額TOP68リスト】

※対象となるソフトウェア(ERP)会社として「上場企業」かつ「ソフトウェア(ERP)業を展開している企業」
※対象決算期はデータ入手が可能な直近決算期を採用
※時価総額は記事執筆時点(2023年8月9日)の株価および為替レートで算出

ランキング企業名所在国決算期 (決算期)時価総額(億円)
1Microsoft Corpアメリカ2023/063,645,062
2Oracle Corpアメリカ2023/05440,034
3SAP SEドイツ2022/12204,497
4オービック日本2023/0323,177
5Sage Group (The) PLCイギリス2022/0914,619
6Inspur Electronic Information Industry Co Ltd中国2022/1213,216
7日本オラクル日本2023/0512,797
8Yonyou Network Technology Co Ltd中国2022/1212,172
9大塚商会日本2022/1211,242
10Kingdee International Software Group Co Ltd中国2022/128,025
11Totvs SAブラジル2022/124,426
12Shanghai Weaver Network Co Ltd中国2022/123,624
13Hand Enterprise Solutions Co Ltd中国2022/122,022
14Zensar Technologies Ltdインド2023/031,828
15Digiwin Software Co Ltd中国2022/121,411
16インフォコム日本2023/031,388
17ベース日本2022/12998
18Forth Corp PCLタイ2022/12951
19Douzone Bizon Co Ltd大韓民国2022/12768
20Principal Capital PCLタイ2022/12631
21内田洋行日本2022/07575
22Black Box Ltdインド2023/03563
23American Software Incアメリカ2023/04508
24JFEシステムズ日本2023/03454
25Aurionpro Solutions Ltdインド2023/03452
26ビジネスエンジニアリング日本2023/03365
27電算システムホールディングス日本2022/12354
28オロ日本2022/12303
29Rimini Street Incアメリカ2022/12282
30Upland Software Incアメリカ2022/12161
31Keyrusフランス2022/12158
32勤次郎日本2022/12143
33Kellton Tech Solutions Ltdインド2023/03129
34Allied Digital Services Ltdインド2023/03129
35Kronologi Asia Bhdマレーシア2023/01129
36Samart Telcoms PCLタイ2022/1297
37ASM Technologies Ltdインド2023/0397
38Datasolution Inc大韓民国2022/1290
39SMRT Holdings Bhdマレーシア2021/1288
40クレオ日本2023/0382
41Ctac NVオランダ2022/1276
42キーウェアソリューションズ日本2023/0361
43Cuscapi Bhdマレーシア2022/0654
44IFCA MSC Bhdマレーシア2022/1252
45システムインテグレータ日本2023/0247
46Inspirisys Solution Ltdインド2023/0346
47コンピューターマネージメント日本2023/0330
48アイ・ピー・エス日本2022/0626
49SL Innovation Capital Bhdマレーシア2022/1226
50Comanche International PCLタイ2022/1226
51MPS Infotecnics Ltdインド2023/0325
52ビーブレイクシステムズ日本2022/0622
53Goodcen Co Ltd大韓民国2022/1222
54EVD Bhdマレーシア2022/1220
55TechNVision Ventures Ltdインド2023/0318
56テスク日本2023/0313
57TFP Solutions Bhdマレーシア2022/0612
58MMAG Holdings Bhdマレーシア2022/0311
59Lambo Group Bhdマレーシア2022/0910
60Adroit Infotech Ltdインド2023/036
61B2B Software Technologies Ltdインド2023/035
62Response Informatics Ltdインド2023/035
63ERP Soft Systems Ltdインド2023/034
64Asdion Bhdマレーシア2022/093
65ObjectOne Information Systems Ltdインド2023/033
66Reditusポルトガル2021/121
67Baron Infotech Ltdインド2023/030
68Mangalya Soft Tech Ltdインド2023/030

世界のソフトウェア(ERP)会社ランキングの有用性

世界のソフトウェア(ERP)会社ランキングには、いくつかの有用性や利点が存在します。以下に、その主な点を詳しく考察します。

  • 市場認識の向上:ランキングを見ることで、どのERPソフトウェア会社が市場で優勢であるかを瞬時に理解することができます。これは、投資家や企業の意思決定者にとって価値のある情報となります。

  • 競合分析:企業が自らの位置を確認し、主要な競合他社や新興企業を特定するためにランキングを利用できます。この情報を基に、戦略の調整や新しい提携の機会を模索することができます。

  • 投資判断の一助:投資家はランキングを参照して、どの企業が成長しているか、または将来的な成長の可能性が高いかを判断する材料として利用することができます。

  • 技術トレンドの特定:ランキング上位の企業がどのような技術やサービスを提供しているかを調査することで、現在の市場での主要な技術トレンドや需要を把握することができます。

  • 消費者の選択の参考:企業がERPソフトウェアの導入を検討している場合、ランキングは信頼性や実績のあるソフトウェアベンダーを選定する際の参考情報として利用できます。

  • ブランド価値の強化:ランキング上位に位置することで、企業はそのブランド価値を強化し、顧客やパートナー企業からの信頼を増大させることができます。

  • 市場動向の把握:企業の上昇や下降の動き、新規参入企業の登場など、ランキングの変動を追うことで、市場の動向や変化を敏感に捉えることができます。

一方で、ランキングの情報はあくまで一つの指標であり、企業の実質的な技術力やサービスの質、顧客満足度など、多くの要因が総合的に評価されるべきであることを理解することが重要です。

世界のソフトウェア(ERP)会社ランキング:変化を与える要素

世界のソフトウェア(ERP)会社ランキングに変化を与える要素は、以下の通りです。

技術の革新

クラウドコンピューティング、AI、IoTなどの技術革新はERP市場に革命をもたらしています。これらの技術を積極的に取り入れ、新しいソリューションを開発する企業はランキングで上位に位置する可能性が高まります。

顧客のニーズ変動

企業のビジネスモデルや業界の変化、グローバル経済の動向などにより、顧客のERPに対するニーズが変わることがあります。これに迅速に対応する企業は市場での地位を強化できます。

M&A(合併・買収)活動

大手ERP企業が他の企業を買収することで、市場シェアを拡大しランキングを向上させることができます。また、新しい技術や顧客基盤を取得することで、競争力を強化することも可能です。

市場への新規参入

特に新興市場や特定の地域市場において、新しいプレイヤーが登場することでランキングに変動が生じることがあります。

製品の品質とパフォーマンス

高品質で使いやすく、柔軟性のあるERPソフトウェアは顧客からの評価が高まります。これが直接ランキングの向上に繋がることがあります。

サポートとカスタマーサービス

製品だけでなく、アフターサポートやカスタマーサービスの質もランキングに影響します。顧客からの信頼を勝ち取ることが重要です。

価格戦略

適切な価格設定やライセンスモデルが顧客の選択に影響することがあります。高すぎると顧客を失い、安すぎると収益性が低下する可能性があるため、バランスが求められます。

法規制や政策の変更

特定の国や地域での法規制や政策の変更は、ERPソフトウェア市場に影響を及ぼすことがあります。これにより一部の企業が利益を得たり、市場から撤退することも考えられます。

マーケティングとブランディング活動

効果的なマーケティング戦略やブランディング活動により、一定の顧客層を獲得し、市場での地位を強化することができます。

これらの要素は、ERPソフトウェア市場のランキングに大きな影響を与える要因となります。企業はこれらの動向を常に監視し、適切な戦略を立てることで競争力を維持・向上させる必要があります。

まとめ

2023年のERPソフトウェア市場は、多様な技術の進化と共に、新たなチャレンジとチャンスに満ちています。本記事で取り上げたランキングTOP68の中には、多岐にわたる企業の姿が見受けられます。大手から新興企業まで、それぞれが独自の戦略と技術で市場に挑んでいます。しかし、市場のトップを走る企業も、変動の激しいこの業界での地位を維持するためには、常に最新の技術や顧客のニーズに適応し続ける必要があります。今後もERP市場は、世界経済の中で中心的な役割を果たし続けるでしょう。そして、その中心でどのような動きが生じるのかを監視することで、我々はビジネスの未来の方向性を予測する手助けとすることができます。

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