近年、技術の進化と共に、カスタマーケアのサービス品質が企業の競争力を左右するキーファクターとなっています。オムニチャネルの対応、AI技術の活用、24/7のサポートなど、新しい時代の顧客の要求に応える企業は多いものの、それを実際のビジネス成果、特に時価総額という指標で示している企業はどれだけ存在するのでしょうか。本記事では、2023年の最新データをもとに、世界のカスタマーケアサービス会社の時価総額ランキングTOP29を紹介します。
世界のカスタマーケアサービス会社ランキング:時価総額TOP29
下記の世界のカスタマーケアサービス会社ランキング一覧は、本メディアReinforz Insightが各社の公表情報を元に集計している時価総額ランキングです。時価総額は、各企業の株式時価に基づいて算定されており、企業の実質的な価値を示す指標となります。
このランキングを元に分析すると、以下が特徴として見えてきます。
- 国別分布:
- 日本: 10社
- インド: 3社
- 大韓民国: 3社
- マレーシア: 3社
- アメリカ: 1社
- フランス: 1社
- イギリス: 1社
- ブラジル: 2社
- ルクセンブルク: 2社
- タイ: 1社
- ドイツ: 1社
- 香港: 1社
- フィリピン: 1社
- 日本の企業が最も多く、約40%の企業が日本に所在している。
- 時価総額の範囲:
- Teleperformance SEが圧倒的に高い時価総額を持っており、13,044億円と次点のTTEC Holdings Incの1,851億円と比較しても大きく差がある。
- ランキングの下位企業は時価総額が100億円未満となっている。
- 時価総額のトップ3:
- Teleperformance SE (フランス): 13,044億円
- TTEC Holdings Inc (アメリカ): 1,851億円
- Firstsource Solutions Ltd (インド): 1,682億円
- 上位3社のうち2社が非アジア国に所在しているが、大部分のランキングはアジアの企業が占めている。
- 特定の業界やビジネス領域:
- 提供されたデータには業種や業界の情報は含まれていないため、特定の業界やビジネス領域に集中しているかは判断できません。しかし、企業名から推測すると、多くの企業がIT、コンタクトセンターやカスタマーサポートに関連している可能性があります。
このデータを基に、特定の地域や国における投資の魅力や業界の成熟度などに関する洞察を得ることができます。
以下は、ランキングトップ5にランクインしている企業です。
1位:Teleperformance SE(フランス)
世界をリードするアウトソーシング企業で、多言語とマルチチャネルのカスタマーサービスを提供しています。
グローバルな展開と業界内での先進的な技術やサービス、顧客獲得力が高いことから、非常に高い時価総額を持っています。
2位:TTEC Holdings Inc(アメリカ)
カスタマーエクスペリエンス技術とサービスの提供者であり、クラウドベースのソリューションを中心に展開しています。
デジタル変革が進む中、企業がオンラインカスタマーサービスを強化する必要が高まっており、TTECのようなカスタマーサポートの専門家は価値が高まっています。
3位:Firstsource Solutions Ltd(インド)
BPM(ビジネスプロセスマネジメント)ソリューションの提供者であり、さまざまな業界のクライアントにサービスを提供しています。
インドはアウトソーシングの大手国であり、低コストで高品質なサービスを提供する企業が多い中、Firstsourceはその中でもトップの企業の一つです。
4位:トランス・コスモス(日本)
IT・デジタルマーケティングを中心に、カスタマーサポート、Eコマースソリューション、データ分析など幅広いサービスを提供しています。
デジタル時代において、トランス・コスモスのような統合的なサービスを提供する企業は、多様なニーズに対応できるため、多くの企業からの信頼と取引を獲得しています。
5位:ベルシステム24ホールディングス(日本)
カスタマーコンタクトセンターサービスを中心に、マーケティングやITソリューションなどのサービスも展開しています。
日本国内におけるコンタクトセンター需要の増加、特にオンラインビジネスの拡大に伴うカスタマーサポートのニーズ増加により、ベルシステム24のようなサービスは高い評価を受けています。
上記の企業は、それぞれの地域や業界でのリーダーシップ、技術革新、高いサービス品質などがランキング上位の理由として挙げられます。特にデジタルトランスフォーメーションの進行と共に、これらの企業が提供するようなデジタル関連サービスの需要が増加しています。
【世界のカスタマーケアサービス会社ランキング:時価総額TOP29リスト】
※対象となるカスタマーケアサービス会社として「上場企業」かつ「カスタマーケアサービス業を展開している企業」
※対象決算期はデータ入手が可能な直近決算期を採用
※時価総額は記事執筆時点(2023年8月19日)の株価および為替レートで算出
ランキング | 企業名 | 所在国 | 決算期 (決算期) | 時価総額(億円) |
1 | Teleperformance SE | フランス | 2022/12 | 13,044 |
2 | TTEC Holdings Inc | アメリカ | 2022/12 | 1,851 |
3 | Firstsource Solutions Ltd | インド | 2023/03 | 1,682 |
4 | トランス・コスモス | 日本 | 2023/03 | 1,583 |
5 | ベルシステム24ホールディングス | 日本 | 2023/02 | 1,079 |
6 | Hinduja Global Solutions Ltd | インド | 2023/03 | 774 |
7 | プレステージ・インターナショナル | 日本 | 2023/03 | 759 |
8 | ビーウィズ | 日本 | 2023/05 | 327 |
9 | ダイレクトマーケティングミックス | 日本 | 2022/12 | 294 |
10 | Eckoh PLC | イギリス | 2023/03 | 185 |
11 | CSU Digital SA | ブラジル | 2022/12 | 159 |
12 | HYOSUNG ITX Co Ltd | 大韓民国 | 2022/12 | 143 |
13 | KTcs corp | 大韓民国 | 2022/12 | 130 |
14 | Scicom MSC Bhd | マレーシア | 2022/06 | 125 |
15 | Altisource Portfolio Solutions SA | ルクセンブルク | 2022/12 | 118 |
16 | ジャパンワランティサポート | 日本 | 2022/09 | 111 |
17 | ktis Corp | 大韓民国 | 2022/12 | 99 |
18 | アクリート | 日本 | 2022/12 | 77 |
19 | UTS Marketing Solutions Holdings Ltd | マレーシア | 2022/12 | 58 |
20 | ギグワークス | 日本 | 2022/10 | 54 |
21 | One to One Contacts PCL | タイ | 2022/12 | 39 |
22 | インバウンドテック | 日本 | 2023/03 | 33 |
23 | 11 88 0 Solutions AG | ドイツ | 2021/12 | 28 |
24 | ETS Group Ltd | 香港 | 2022/12 | 22 |
25 | ATMA Participacoes SA | ブラジル | 2022/12 | 14 |
26 | EasyCall Communications Philippines Inc | フィリピン | 2022/12 | 10 |
27 | Excel Realty N Infra Ltd | インド | 2023/03 | 8 |
28 | Advance Information Marketing Bhd | マレーシア | 2022/12 | 6 |
29 | Atento S.A | ルクセンブルク | 2021/12 | 0 |
出典:各社プレスリリースなど
世界のカスタマーケアサービス会社ランキングの有用性
世界のカスタマーケアサービス会社ランキングの有用性についての考察を以下に示します。
有用性
- 市場の透明性: ランキングは企業や投資家にとって、業界の主要プレイヤーとその規模を一目で理解するための有用な指標となります。
- 投資判断の参考: 投資家やアナリストはランキングを利用して、投資先として注目すべき企業や業界のトレンドを探る手助けとすることができます。
- 業界のトレンド理解: カスタマーケアサービスの市場規模や成長のトレンド、各企業の動向などを知ることができます。
- 競合分析: 企業はランキングを参考にして自社の位置付けや競合との比較を行い、戦略的な意思決定を下す材料とすることができます。
- 業界の信用性向上: 一定の基準に基づいてランキングされることで、業界全体の信用性や透明性が向上します。これにより、新規顧客や投資家の信頼を獲得しやすくなります。
- B2Bの取引参考: 企業間取引において、ランキングが高い企業を選ぶことでリスクを低減する判断材料として利用されることがあります。
但し、以下のような制約や考慮点も存在します
- ランキングの基準: ランキングは、どのような基準や方法で計算されているのかをしっかりと確認する必要があります。例えば、時価総額だけでなく、収益性や顧客満足度なども考慮されるべきです。
- 時点性: 市場は常に変動しているため、ランキングはあくまで一時点の情報として捉える必要があります。
- 地域的な偏り: 世界のランキングであっても、特定の地域や国の企業が強いという偏りがある場合があります。これにより、地域的な市場の特性やニーズが疎外されるリスクがあります。
- 量的な指標に偏重: ランキングは多くの場合、量的な指標に基づいていますが、質的な評価や独自の強み、企業文化などは反映されにくいという問題があります。
総じて、世界のカスタマーケアサービス会社ランキングは多くの有用性を持っていますが、その背景や制約を正しく理解し、適切なコンテキストで利用することが重要です。
世界のカスタマーケアサービス会社ランキング:変化を与える要素
世界のカスタマーケアサービス会社ランキングに変化を与える要素は、以下の通りです。
技術革新
- AIと自動化: 人工知能やRPA(ロボットプロセス自動化)の導入が進むことで、効率化やコスト削減が実現し、業績が向上する可能性があります。
- クラウド技術: クラウドベースのカスタマーサポートプラットフォームやCRMが導入されることで、柔軟性とスケーラビリティが向上し、新規顧客の獲得や既存顧客のリテンションが向上する可能性があります。
顧客の期待の変化
- 現代の顧客は24/7のサポートやオムニチャネルの対応、即時の問い合わせ対応など、より高いサービスレベルを求めています。これに応えることができる企業はランキングで高い位置を維持・向上できる可能性があります。
グローバル展開
- 新しい市場への進出や地域ごとのサービス最適化に成功する企業は、売上や顧客基盤を拡大することができるでしょう。
M&A(合併・買収)
- 業界内での合併や買収は、市場シェアの拡大や新技術・サービスの取得を通じて、企業のポジショニングを大きく変えることができます。
レギュレーションとコンプライアンス
- 個人情報保護の強化やデータ使用に関する規制が厳しくなる中、これを遵守し、信頼性を高めることができる企業は、競合に対する優位性を持つことができます。
業界の競争
- 新規参入企業や、異なる業界からの競合が増えると、既存企業の市場シェアやランキングに影響を与える可能性があります。
経済状況
- 世界経済の景気変動や特定の地域における経済危機は、カスタマーケアサービスの需要や企業の収益に影響を及ぼす可能性があります。
人材の確保と育成
- 優秀な人材を確保し、継続的な育成を行うことで、高品質なサービスの提供や新しいイノベーションを生み出す原動力となります。
これらの要因は、業界の動向や各企業の戦略によって異なる影響を及ぼすため、定期的に市場や競合環境の分析を行うことが重要です。
まとめ
2023年のカスタマーケアサービス会社ランキングを見ると、多様な国々からの企業が名を連ねており、グローバルにその影響力を示しています。技術革新や顧客の期待の変化、そして経済的・社会的な要因がランキングの変動に影響を与えていることが読み取れます。今後もこの業界は急速な変化を続けるであろうため、ランキングだけでなく、背後にある各企業の戦略や取り組みにも注目していくことが、真の競争力を理解する鍵となるでしょう。