韓国のゼネコン業界は、多くのビジネスチャンスと課題に溢れています。COVID-19の影響は否めませんが、それでも業界は進化し続けています。この記事では、売上ランキングを基に、韓国のゼネコン業界が直面する課題、注目すべき取り組みやトレンド、そして未来展望について詳しく解説します。

韓国のゼネコン業界:政府の全数調査方針がもたらす影響と今後の展望

韓国のゼネコン(一般建設業者)業界は、近年多くの変化と挑戦に直面しています。特に注目されるのは、韓国政府が民間マンションの全数調査の方針を示したことです。この政府の方針は、業界全体に大きな影響を与えており、特に信頼性や補償、補強工事に関する問題が浮上しています。

地下駐車場がフラットスラブ工法で建設された全国300カ所以上の民間マンション団地が調査対象となっています。この調査が行われると、その結果によっては企業の信頼性が失墜する可能性があります。さらに、補償や補強工事を巡って住民との対立が起こる可能性も否定できません。

このような状況下で、ゼネコン各社はどのように対応すべきか、業界全体での議論が活発に行われています。一方で、韓国のゼネコンはプラント分野や土木・建築分野で国際競争力を持っているとされ、今後の展望も明るいと言えるでしょう。

政府の方針による影響は確かに大きいですが、それでも韓国のゼネコン業界は多くのポテンシャルを秘めています。今後がどのように展開していくのか、業界関係者だけでなく、多くの人々が注目しています。

グローバル市場での競争力と日本、欧州との比較

韓国のゼネコン業界は、国内外で多くのプロジェクトを手がけていますが、グローバル市場での位置付けはどうなっているのでしょうか。一般的に、韓国のゼネコンはアジア地域を主要な進出エリアとしています。しかし、その海外事業の割合は1割程度から2割程度と、日本などと比べると低い水準にとどまっています。

日本のスーパーゼネコンは、グローバルランキングで30位以内に位置している一方で、韓国のゼネコンはその詳細なランキングが明らかにされていないものの、一定の国際競争力を持っています。特に、プラント分野や土木・建築分野での実績があり、これが韓国ゼネコンの強みとされています。

欧州のゼネコンと比較すると、韓国は独自の事業戦略を展開しています。欧州企業が多くの場合、環境や持続可能性に焦点を当てているのに対し、韓国はコスト競争力と技術力で差別化を図っています。

このように、韓国のゼネコン業界はグローバル市場で独自のポジションを築いています。その競争力は日本や欧州と比較しても一定のレベルにあり、今後の市場動向によってはさらなる飛躍が期待されます。この記事では、韓国のゼネコンがグローバル市場でどのような位置付けにあるのか、そして日本や欧州のゼネコンとどう違うのかについて詳しく解説しています。

韓国のゼネコン業界売上ランキング

それでは、韓国のゼネコン業界売上ランキングです。

【ランキング補足】
※記事執筆時点で確認できる最新決算期の情報を元に作成
※データはReinforz Insightが各社IRなどから独自に集計
※上場、非上場企業でデータを公表している企業が対象
※時価評価額は記事執筆時点の株価を元に算定

【ランキング】

ランキング企業名売上高(億円)純利益(億円)時価評価額(億円)
1POSCO Holdings Inc8,658.00320.134,666.88
2Samsung C&T Corp4,396.21208.201,859.11
3Hyundai Engineering & Construction Co Ltd2,163.3041.65421.75
4Doosan Enerbility Co Ltd1,570.70-78.681,138.54
5GS Engineering & Construction Corp1,252.7334.56128.96
6Daewoo Engineering & Construction Co Ltd1,061.2451.34192.90
7POSCO Engineering & Construction Co., Ltd961.0217.39N/A
8LOTTE ENGINEERING & CONSTRUCTION CO.,LTD.605.467.61N/A
9Kolon Corp576.4913.9825.62
10DL527.097.3688.95
11HDC Holdings Co Ltd513.85-0.5233.07
12Kyeryong Construction Industrial Co Ltd300.446.1613.66
13Taeyoung Engineering & Construction Co Ltd265.346.4015.76
14Kolon Global Corp265.0314.8225.73
15Kumho E&C208.652.1619.91
16KCC Engineering & Construction Co Ltd192.820.4510.56
17HL D&I Halla Corp149.942.569.17
18Dongbu Corp148.834.0915.96
19Shinsegae Engineering & Construction Co Ltd145.90-1.456.74
20Hanshin Construction Co Ltd124.424.638.88
21Doosan Engineering & Construction Co., Ltd121.26-21.44N/A
22TK Chemical Corp76.7328.0319.80
23Seo Han Co Ltd74.364.0110.57
24Hwasung Industrial Co Ltd65.772.4810.02
25Chinhung International Inc64.065.0517.95
26Dongwon Development Co Ltd61.318.3732.43
27Sambu Engineering & Construction Co Ltd47.18-7.4878.87
28Il Sung Construction Co Ltd47.120.749.72
29Moda-InnoChips Co Ltd41.89-0.0125.02

ランキング1: POSCO Holdings Inc

POSCO Holdings Incは、売上高が8,658億円とトップランクに位置しています。この企業は韓国の鉄鋼業界をリードする企業であり、多様な建設プロジェクトに関与しています。売上高増加率が11.8%と高く、安定した成長を続けています。

特に、時価総額が4,666.88億円と非常に高く、その規模と信頼性がランクインの大きな理由です。また、純利益率が3.7%と、業界内で高い利益を上げています。

ランキング2: Samsung C&T Corporation

Samsung C&T Corporationは、売上高が4,396.21億円でランキング2位に位置しています。この企業はSamsungグループの一部であり、多様な建設プロジェクトを手がけています。売上高増加率が25.3%と非常に高く、急速な成長を遂げています。

特に、純利益率が5.9%と高く、高い利益性がランクインの一因です。時価総額は不明ですが、Samsungブランドの強さが背景にあります。

ランキング3: Hyundai Engineering & Construction Co Ltd

Hyundai Engineering & Construction Co Ltdは、売上高が2,163.30億円でランキング4位に位置しています。この企業はHyundaiグループの一部であり、多様な建設プロジェクトを手がけています。売上高増加率が17.6%と高く、安定した成長を続けています。

特に、時価総額が421.75億円とあり、その規模と信頼性がランクインの大きな理由です。純利益率は1.9%と、業界内で一定の利益を上げています。

ランキング4: Doosan Enerbility Co Ltd

Doosan Enerbility Co Ltdは、売上高が1,570.70億円でランキング5位に位置しています。この企業はDoosanグループの一部であり、多様な建設プロジェクトを手がけています。売上高増加率が40.3%と非常に高く、急速な成長を遂げています。

特に、時価総額が1,138.54億円と高く、その規模と信頼性がランクインの大きな理由です。純利益はマイナスですが、高い売上高増加率がランクインの一因となっています。

注目の3社

ランキング6: GS Engineering & Construction Corp

GS Engineering & Construction Corpは、売上高が1,252.73億円でランキング6位に位置しています。この企業は多様な建設プロジェクトを手がけており、特に売上高増加率が36.1%と高い点が注目されます。この高い成長率は、企業が新しい市場やプロジェクトに積極的に参入している結果と考えられます。

時価総額は128.96億円と、ランキング上位企業に比べると小さいものの、純利益率が2.8%と安定しています。このようなバランスの取れた業績が、今後の成長につながる可能性が高いと分析されます。

ランキング13: Kyeryong Construction Industrial Co Ltd

Kyeryong Construction Industrial Co Ltdは、売上高が300.44億円でランキング13位に位置しています。この企業は中規模の建設プロジェクトを主に手がけており、売上高増加率が15.1%と安定した成長を見せています。特に、1,649人という期末従業員数があり、その規模と人材力が強みとなっています。

時価総額は13.66億円と小規模ですが、純利益率が2.1%と一定の利益を上げています。このような安定した業績と人材力が、今後の成長の礎となると考えられます。

ランキング23: TK Chemical Corp

TK Chemical Corpは、売上高が76.73億円でランキング23位に位置しています。この企業は比較的小規模ながらも、純利益率が驚異的な36.5%と非常に高い点が注目されます。この高い純利益率は、企業が高い利益性を持つプロジェクトに集中している可能性があります。

時価総額は19.80億円と小規模ですが、その高い利益性が投資家からの注目を集めています。このような高い利益性が、今後の急速な成長につながる可能性が高いと分析されます。

韓国ゼネコン業界の課題とは?

韓国のゼネコン業界は、COVID-19の影響を受けていますが、その影響は他の国に比べて限定的です。政府は極端な措置を採らなかったため、建設プロジェクトへの負担は比較的少ない。しかし、ウイルスの拡散を抑制するための迅速な措置が導入された結果、一定の影響が出ています。

建設業者は、プロジェクトの一時停止、遅延、供給と材料の不足、労働力の不足など、多くの課題に直面しています。これらは、今後の建設遅延とそれに伴うコストを引き起こす可能性があります。また、韓国の法律によれば、これらの課題に対処するための救済が可能である場合もあります。

特に、韓国の標準形態の建設契約には、「疫病」が不可抗力の事象として明示されています。したがって、これらの標準条件に基づいて建設作業を行っている請負業者は、COVID-19が契約上の不可抗力事象であると主張する可能性が高いです。

韓国ゼネコン業界の注目すべき取り組みやトレンド

韓国のゼネコン業界は、COVID-19の影響に対応するための多くのガイドラインと推奨事項を導入しています。これには、公共調達と公共建設プロジェクトに適用される「COVID-19に対応するための公共契約の取扱いに関するガイドライン」も含まれています。これらのガイドラインは、建設作業が「著しく困難」になる場合に契約価格の調整を許可するとしています。

また、韓国の雇用労働省は、ビジネスがパンデミック中にどのように運営すべきかについての推奨事項を発表しています。これによれば、政府が職場の閉鎖を命じた場合、影響を受けた雇用主は従業員に賃金を支払う義務が免除されます。

さらに、韓国は民法国であり、契約違反による損害賠償は、違反が「故意」であった場合にのみ認められます。このような法的背景も、業界の取り組みとトレンドに影響を与えています。

韓国ゼネコン業界の未来展望

韓国のゼネコン業界は、COVID-19の影響を受けつつも、多くの対策とガイドラインを導入してレジリエンスを高めています。しかし、これらの対策がどれだけ効果的であるかは、今後の法的判断や市場の動きによって大きく変わる可能性があります。

過去には、国際通貨基金(IMF)の危機やSARS、MERSの流行など、不可抗力とされる状況に対する韓国裁判所の判断が厳しかった例があります。しかし、COVID-19はその広がりと対策の厳格さから、以前の疫病とは区別される可能性が高いです。

このような背景から、韓国のゼネコン業界が今後どのように進化するかは注目されています。特に、法的な救済がどれだけ提供されるか、また新しい建設技術や環境に優しい建築がどれだけ導入されるかが、業界の未来を左右する重要な要素となるでしょう。

まとめ

韓国のゼネコン業界は、パンデミックの影響を受けながらも、多くの対策とガイドラインを導入してレジリエンスを高めています。法的な救済や新しい建設技術の導入が、今後の業界の成長を大きく左右する可能性があります。売上ランキングを基にしたこの分析を通じて、業界の現状と未来についての理解を深めることができるでしょう。

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