新規事業を始める際は、初期費用や運転資金といった費用についても考えなければなりません。自己資金で全額を賄えない場合、融資や出資を必要とするケースもあるでしょう。また、新規事業を対象とする自治体からの助成金・補助金も存在します。

今回は新規事業にかかる費用や資金調達方法について解説しています。新規事業の費用について理解を深め、立ち上げに役立ててください。

新規事業にかかる費用とは?

新規事業にかかる費用とは?(見出し下画像)

新規事業にかかる費用には、イニシャルコストとランニングコストの2つが存在します。双方とも、多すぎても少なすぎても問題です。

多くの費用をかけてしまうと、回収するために必要な売上も増え、はじめから大きな目標を追うためプレッシャーがかかります。逆に費用が少なすぎると、節約しながらの取り組みとなり、十分なパフォーマンスを発揮できない恐れも。厳しい状況下にあっては、モチベーションが低下する可能性もあります。

それぞれ、どの程度の費用がかかるのかをしっかり把握し、適切な金額で新規事業を立ち上げ・展開しましょう。

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イニシャルコスト

立ち上げ時にかかるイニシャルコスト(初期費用)には、次の費用が挙げられます。

  • 事業所の開設費用
  • 設備導入にかかる費用
  • 人材の採用費用
  • 宣伝広告費用

ほかにも、新規事業をスムーズに立ち上げて軌道に乗せるためのコンサルティング費用、市場や顧客を分析するマーケティング費用がかかることもあるでしょう。

自社ビル内の一角を使い、既存の設備や従業員で全てまかなえるのであれば、高額な初期費用は不要です。しかし、新たに事業所を開設したり、設備を整えたりする場合は費用がかさみます。

これらの立ち上げ時にかかる費用は、事業を軌道に乗せて回収します。規模を小さく始められる事業なら、数十万円から数百万円程度で済みますが、規模が大きい場合は1,000万円以上かかるケースもあります。

もしも、失敗すると取り戻せなくなる可能性もあるので、必要以上に初期費用をかけないよう注意し、適切な金額で始めましょう。

ランニングコスト

ランニングコストは、新たに始めた事業を継続するためのコストとなり、次に挙げる費用が該当します。

  • 事業所の賃料
  • 光熱費
  • 通信費
  • 人員の給与や各種保険料などの人件費
  • 業務上発生する各種の経費

当然ながら、これら費用を上回る売上を出せなければ赤字です。初期費用を回収できないだけでなく、やがて存続の危機を迎えるでしょう。

イニシャルコストと同じく、ランニングコストについてもしっかりと検証し、想定される売上に対して適当な金額であるか考えます。

新規事業に必要な費用の調達方法

新規事業に必要な費用の調達方法(見出し下画像)

新規事業に必要な費用が自己資金だけでは不足する場合、金融機関の融資や助成金・補助金の利用、出資者からの資金調達などを考えましょう。

自己資金でまかなう

全て自己資金でまかなえるなら、負債を増やさずに済みます。しかし、新規事業を軌道に乗せて回収できる状態になるまで時間がかかると、既存事業の資金繰りに影響する可能性があるので注意しましょう。

なお、金融機関の融資を受ける場合も、自己資金0円では審査が下りないケースがほとんどです。借入によって新規事業に必要な費用を調達する場合でも、ある程度は自己資金を用意できるようにしましょう。

金融機関の融資を受ける

金融機関からの融資によって得た資金は返済義務があり、借入額には上限がありますが、資金調達方法としてポピュラーな手段です。

融資を受けるには審査があり、新規事業の事業計画や会社の業績を判断する決算書などを見て判断されます。事業内容をしっかり考え、説得力のある事業計画書を作るのが重要です。負担する金利を含め、返済計画も立てて利用しましょう。

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銀行や信用金庫

創業して間もない会社やこれから起業する事業主・法人などは、銀行から融資を受けるのは難しいでしょう。しかし、既に経営実績のある会社なら、新規事業に必要な資金を銀行や信用金庫から融資してもらうのも難しくありません

さて、銀行と信用金庫、どちらも金融機関として同様のサービスを提供していますが、何が違うのでしょうか。両者の違いは経営体制や方針、融資対象となる相手の判断基準にあります。

銀行は株式会社であり、利益を重視した経営をしています。そのため、融資してくれる相手は一定以上の規模、資金力や業績のある事業者です。審査が厳しく、中小企業や小規模事業者が事業資金の融資を受けるのは難しいでしょう。

それに対して、信用金庫は地域社会に根ざした金融サービスを重視し、地元企業や個人が会員となって出資した組織です。そのため、融資対象は地域内の会員が原則となりますが、場合によっては会員以外の融資を認めることもあります。

また、信用金庫は従業員数や資本金が一定以下の事業者を融資対象としているのも特徴です。

  • 従業員300人以下の個人事業者
  • 従業員300人以下かつ資本金9億円以下の法人事業者

信用金庫の融資対象はこのどちらかとなるため、大企業は対象外となります。既に付き合いのある信用金庫があるなら、中小企業や小規模事業者も融資を受けやすいでしょう。

日本政策金融公庫

日本政策金融公庫は、資金調達が難しい小規模事業者や中小企業などを支援する融資制度を展開しており、銀行や信用金庫の審査が下りなかった場合でも利用できる可能性が高い金融機関です。

ただし、融資制度を利用するには、各制度の要件にあてはまる事業者でなければなりません。資金の使い道も、該当する新規事業に限定されるので注意しましょう。

新規事業のための資金調達として利用するなら、新事業活動促進資金や企業活力強化資金などがあります。

新事業活動促進資金は新事業であるとの認定を受ける必要があり、企業活力強化資金は指定された事業での設備投資によって、業務の拡大や効率化を図るものと認められる必要があります。

助成金や補助金を活用する

国や自治体が新規事業を後押しする助成金・補助金を出している場合があります。助成金や補助金として受け取ったお金は返済不要となるので、要件にあてはまるなら活用しましょう。

注意したいのは、補助金も助成金もすぐに受け取れるものではなく、申請から給付までに時間がかかります。給付までにかかる時間はまちまちですが、数週間から数か月、場合によっては1年近くかかることもあるようです。

今すぐ必要な資金を集める方法ではなく、かかった費用が後日補填されるものと理解しておきましょう。

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助成金と補助金の違い

助成金と補助金は、国や自治体が要件を満たす申請者に資金援助してくれる点が共通していますが、異なる部分もあります。

助成金は期間内に申請し、支給できる枠が埋まっていなければ受け取れます。一方、補助金はコンペ形式となっており、審査に通過しなければ受けとれません。

人気の高い補助金は申請する企業が多く、競争率も上がります。新規事業の魅力を訴求する事業計画書を作り、綿密な収支予想を出す必要があるでしょう。

助成金の例:市場開拓助成事業(東京都)

東京都中小企業振興公社による助成事業「市場開拓助成事業」では、商品の販路開拓のために展示会へ出展する際の費用を助成してくれます。

助成率1/2・300万円までを限度額とし、展示会への出展料はもちろん、出店時に発生する運送費用や宣伝広告費用などが対象です。また、展示会はオンライン形式のものも対象となっています。

新規事業によって新しい商品やサービスを提供する場合、顧客に認知してもらう活動も必要です。特定分野の事業を展開する企業が集まるイベントに出展すれば、事業内容に興味を持った人が多く訪れ、見込み客の目に留まる可能性が高まるでしょう。

補助金の例:ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金

中小企業庁と独立行政法人中小企業基盤整備機構が実施する補助金事業「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金」は、新規事業に使える補助金の代表格です。

この補助金制度では、新商品の開発や生産ラインの新設、新サービスの立ち上げなどに必要な資金に使え、対象となる事業は一般型とグローバル型の2種類が存在します。

一般型は次の3つの枠で構成されています。

  • 回復型賃上げ・雇用拡大枠
  • デジタル枠
  • グリーン枠

新規事業の費用として利用するなら、デジタル枠、グリーン枠が相当するでしょう。いずれも補助率は2/3以内となり、従業員数で上限金額が変化します。

従業員規模デジタル枠の補助上限金額グリーン枠の補助上限金額
5人以下750万円以内1,000万円以内
6人~20人1,000万円以内1,500万円以内
21人以上1,250万円以内2,000万円以内

新規事業によってDXに役立つ商品やサービスを提供するなら、デジタル枠が該当するでしょう。グリーン枠は温室効果ガスの排出削減に役立つ、革新的な商品・サービスの開発する新規事業なら補助対象です。

グローバル展開型は、海外展開や海外の顧客に向けた新規事業であるなら対象となります。下限1,000万円・上限3,000万円と、かなり大きな金額が補助されるので、国外にも提供する商品・サービスを提供したり、外国人観光客をターゲットにしたインバウンド市場を開拓したりするなら利用したい補助金です。

補助金の例:JAPANブランド育成支援等事業費補助金

中小企業庁による「JAPANブランド育成支援等事業費補助金」は、海外展開や海外市場も視野に入れた全国展開への取り組みに対して利用できる補助金です。新規事業が海外市場を見据えたものであるならば、対象となるでしょう。

補助率2/3・上限500万円となっており、新規事業でかかる商品・サービスの開発費用はもちろん、海外展開に必要なマーケティング費用やコンサル費用、展示会出展にかかる費用などに使えます。

出資者から調達する

新規事業の将来性を見込んだ投資家やベンチャーキャピタルなどに出資してもらう方法です。

出資金は基本的に返還しなくてよいものですが、出資者は何らかのリターン(見返り)を求めてくるのが一般的です。リターンの内容は、新規事業に関する権利や権限、成功時の利益分配などが考えられるでしょう。出資の申し出があった場合は、相手の求めるリターン内容が適切であるかを検証し、判断を下しましょう。

また、魅力ある事業内容でなければ出資してもらえません。出資者を求めるならば事業計画書を作り込み、新規事業の魅力をアピールできるようにしましょう。

クラウドファンディング

最近はインターネットを活用して、個人から出資者を募るクラウドファンディングも一般的になっています。新商品の開発費用や新店舗のオープン資金などを、数千円から数万円といった個人が出資しやすい金額で集めて何らかのリターンを渡します。

リターンは自社製品やサービスを渡したり、出資者として施設内に名前が表示される権利を与えられたりといったものが考えられるでしょう。

クラウドファンディングでの資金調達を成功させるには、共感されるストーリーを持たせて新規事業の魅力を訴求します。

ただし、クラウドファンディングでは1人あたりの出資額が小さく、出資者の数が多くなるため、資金を集めた後の事業に失敗すると大幅なイメージダウンに繋がります。集めた資金を目的外の用途で使ってしまうと、批判対象にもなるでしょう。

期待を裏切られたと感じる出資者が多ければ、インターネット上での炎上に発展するケースもあり、事業を続ける上での大きな問題となります。

クラウドファンディングによって資金を集める際は、出資者たちの気持ちを裏切らない結果を出すことが重要です。

適切な金額と費用の調達方法を活用して新規事業を始めよう

新規事業ではイニシャルコストとランニングコストの、2つの費用が必要です。どちらも多すぎても少なすぎても、新規事業に影響します。必要な金額を把握し、適切な費用をかけて新規事業を展開しましょう。

新規事業に必要となる費用が自己資金で不足するなら、金融機関からの融資や助成金・補助金、出資者からの調達などを考えます。どの調達方法が適しているか考え、新規事業をスタートさせましょう。

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