九州の熊本県において、半導体産業の新たなクラスターが形成されつつある。台湾のTSMCが半導体工場の建設を進める中、日本の大手半導体関連企業も新たな投資を行っている。
この動きは、九州が半導体産業の新たな中心地としての地位を確立する可能性を示している。
TSMCの九州工場、2024年完成予定
九州の熊本県菊陽町に、台湾半導体製造(TSMC)の新工場が建設中である。このプロジェクトは約1兆円とされ、2022年春から建設が進行中である。2024年の終わりに開業を予定しており、その規模と進捗は業界内外から注目を集めている。
TSMCは世界最大の受託半導体製造企業として知られ、その動向は半導体産業全体に影響を与える。工場の建設が進む中、台湾からのスタッフやその家族が続々と到着。様々な工具や設備の配送が行われている。この新工場の完成により、九州地方の半導体産業の地位がさらに高まることが期待されている。
日本の大手半導体関連企業も動き出す
TSMCの九州進出を受け、日本の大手半導体関連企業も新たな投資を進めている。その中でも、産業機械メーカーの荏原が熊本県南関町に新工場の建設を開始している。この工場は、荏原が世界第二位の市場シェアを持つウェハーポリッシング用の設備の生産を拡大するためのもので、2024年の終わりに完成予定である。
また、日本のトップ半導体設備メーカーである東京エレクトロンも、菊陽町に隣接する甲佐市に新しい開発施設の建設を進めている。この施設は、回路パターニングに使用されるコーティングおよび開発設備を取り扱う予定で、2025年の夏に完成するとされている。
国際的な半導体企業、熊本に注目
熊本県は、TSMCの進出を皮切りに、国際的な半導体企業からの注目を集めている。ASML、世界をリードするリソグラフィ機器メーカーは、技術サポートセンターを熊本に移転し、より広いスペースを確保している。
このセンターのスタッフは、短期派遣を含め、約10人から最大60人まで増加する見込みである。また、オランダの同社は、設備の取り付けや保守のための部品の増加に対応する新しい倉庫を来夏にも県内に開設する予定である。さらに、米国のLam Research、世界第三位の半導体ツールメーカーも、サービスセンターを拡大するため、熊本内での移転を行っている。
九州の半導体産業、人材育成への取り組みも
九州の半導体産業の成長は、設備やサービスだけでなく、人材の供給も不可欠である。半導体産業の供給業者であるScreen Holdingsは、熊本オフィス内に5億円のエンジニアトレーニングセンターを開設した。同センターでは、毎週最大30人のエンジニアの育成を目指している。
九州経済産業局の長である並村公秀は、「日本国内外での協力の構造を築く必要がある」と述べている。このような取り組みを通じて、九州の半導体産業は、技術の革新と人材の育成の両面で、さらなる発展を目指している。
九州の半導体産業、新たなる「絹の道」の形成か
九州が、半導体産業の新たなる中心地としての地位を築きつつある。かつての「絹の道」のように、この地がアジアの半導体産業の交差点となる可能性が高まっている。TSMCの進出は、その先駆けとなるであろう。
九州の地理的な位置は、アジアの中心に位置するため、物流の要所としての役割を果たすことができる。また、熊本県を中心に、多くの半導体関連企業が集まりつつある。これは、かつての「絹の道」が異なる文化や商品を結びつけたように、九州が半導体産業の新たなる「絹の道」としての役割を果たす兆しを見せている。
しかし、この「絹の道」を維持し、さらに発展させるためには、単に企業が集まるだけではなく、技術の革新や人材の育成など、多角的な取り組みが必要である。九州が真の半導体産業の中心地としての地位を確立するためには、これからの取り組みが鍵となるであろう。