編集部
2021年に入ってから、保険業界ではAIによる引受業務の意思決定を自動化・高度化する動きが顕在化してきました。実現されれば引受業務や顧客への提供価値そのものが大きく変わります。
本稿では、近い未来の引受業務の在り方を研究機関の調査結果やDataRobotの知見を基に考察します。特に、AI技術の進化とそれに伴う損害保険業界の変革に焦点を当てて解説します。
AI技術の進化と保険業界
近年、AI技術の進化は目覚ましく、多くの産業でその恩恵を受けています。特に保険業界では、AIの活用が進む中、新しいビジネスモデルやサービスの提供が期待されています。
AI技術の進化により、保険業界では顧客のニーズに合わせたカスタマイズされた保険商品の提供や、リスク評価の精度向上が可能となりました。また、ビッグデータの解析を活用して、顧客の生活習慣や健康状態をリアルタイムで把握し、それに基づいた保険料の設定が行われるようになっています。
引受業務の自動化とその影響
引受業務は、保険会社が保険契約を結ぶ際のリスク評価を行う業務です。従来、この業務は人の手によって行われていましたが、AI技術の導入により、自動化が進められています。
AIを活用することで、引受業務の精度が向上し、より迅速な対応が可能となりました。また、AIは大量のデータを高速に処理する能力を持っているため、従来の方法では考慮しきれなかった多様なリスク要因を評価することができます。これにより、保険料の設定や保険商品の提供がより適切に行われるようになりました。
損害保険会社のAI活用事例
損害保険会社におけるAIの活用は、業界全体の効率化やサービス向上に大きく寄与しています。具体的な事例として、自動車保険の分野では、AIを活用した事故予測や運転者の行動分析が行われています。これにより、事故のリスクを低減するためのアドバイスを顧客に提供するサービスが実現しています。
また、住宅保険の分野では、ドローンを活用しての家屋の点検や、AIによる画像解析を用いた損害評価が行われています。これにより、より正確かつ迅速な損害評価が可能となり、顧客への迅速な保険金の支払いが実現しています。
保険業務の変革: セールスからクレームまで
保険業務は、セールスからクレーム処理まで、多岐にわたる業務が存在します。これらの業務の中で、AIの活用が進められているのは、特にセールスとクレームの2つの分野です。
セールスの分野では、AIを活用したチャットボットが導入され、24時間365日の顧客対応が可能となっています。また、顧客の購入履歴や行動データを基に、最適な保険商品を提案するAIアドバイザーも登場しています。
一方、クレームの分野では、AIを活用した自動請求システムが導入され、顧客のクレーム申請を迅速に処理することが可能となっています。また、AIによるテキスト解析を活用して、クレームの内容を自動で判定し、適切な対応を行うシステムも開発されています。
未来のアンダーライティングのトレンド
アンダーライティングは、保険の引受業務の中核をなす部分であり、これまで多くの経験と知識を持つ専門家によって行われてきました。しかし、近年のAI技術の進化により、アンダーライティングの方法も大きく変わりつつあります。
ビッグデータの解析や機械学習を活用することで、より正確なリスク評価が可能となり、従来の方法では見落とされていたリスク要因も把握することができるようになりました。また、リアルタイムでのデータ収集と解析により、瞬時にリスクを評価し、適切な保険料を設定することが可能となっています。
データサイエンス型アンダーライターの役割
データサイエンス型アンダーライターは、従来のアンダーライティングの知識とデータサイエンスの技術を組み合わせた新しい職種として注目されています。この職種の専門家は、大量のデータを解析し、その結果を基にリスク評価や保険料の設定を行います。
データサイエンス型アンダーライターは、AI技術や機械学習の知識を持ち、これを活用して保険業務を効率化する役割を果たします。また、データの収集や解析を行うことで、新しいリスク要因を発見し、それに対応する新しい保険商品の開発にも貢献しています。
ビジネス型アンダーライターの重要性
ビジネス型アンダーライターは、アンダーライティングの専門知識とビジネス戦略の組み合わせを持つ新しい職種として、保険業界での重要性が増しています。彼らは、顧客のニーズや市場の動向を把握し、それを基に新しい保険商品の開発や既存商品の改善を行います。
また、ビジネス型アンダーライターは、データ解析の結果をビジネス戦略に落とし込む役割も果たします。これにより、保険会社は市場の変化に迅速に対応し、競争力を維持することができます。
コンサルタント型アンダーライターの可能性
コンサルタント型アンダーライターは、アンダーライティングの専門知識を持ちながら、顧客とのコンサルティングを行う新しい職種として注目されています。彼らは、顧客のビジネス環境やリスクを深く理解し、最適な保険ソリューションを提案します。
この職種の専門家は、顧客との関係構築や信頼の確立に重点を置き、長期的なパートナーシップを築くことを目指します。また、顧客のビジネス戦略や将来のリスクを考慮した保険商品の提案を行い、顧客のビジネスの成長をサポートします。
リスクの多様化とAIの対応
近年、社会の変化や技術の進化に伴い、保険業界が対応しなければならないリスクも多様化しています。例えば、サイバーセキュリティの問題や気候変動による自然災害の増加など、新しいリスクが増え続けています。
このような多様なリスクに対応するため、AI技術の活用が不可欠となってきました。AIは、大量のデータを高速に解析する能力を持ち、これまでの方法では捉えきれなかった微細なリスク要因を検出することができます。これにより、より正確なリスク評価や適切な保険商品の提供が可能となっています。
保険業界の未来: AIとの共生
保険業界の未来は、AI技術との共生によって大きく変わることが予想されます。AIの進化により、保険商品のカスタマイズやリスク評価の精度向上、そして顧客対応の効率化など、多岐にわたる業務が変革されるでしょう。
また、AI技術の進化により、新しいビジネスモデルやサービスの提供も期待されています。例えば、IoTデバイスを活用したリアルタイムのリスク評価や、AIを活用した保険料の動的な設定など、これまでの常識を覆すようなサービスが実現される可能性があります。
まとめ
保険業界は、AI技術の進化とともに大きな変革を迎えています。従来の業務方法から、データ解析を活用した新しいアプローチへとシフトしており、これにより顧客へのサービス提供やリスク評価の精度が大きく向上しています。
特に、アンダーライティングの分野では、データサイエンス型やビジネス型、コンサルタント型といった新しい職種が登場し、保険業界の未来を形成しています。また、社会の変化や技術の進化に伴う新しいリスクにも迅速に対応するための取り組みが進められています。
保険業界の未来は、AI技術との共生によってさらに明るく、革新的なものとなることが期待されます。