メタバースやNFT、ブロックチェーンなどのWeb3関連領域が現在、非常に注目を集めています。産業構造がガラッと変わる様相を示す中、いわゆるWeb2企業として盤石な地位を獲得したGAFAMと呼ばれるビックテック企業。
これらの巨大企業がWeb3時代に向けて打ち出す戦略は、ビジネスパーソンなら誰しもが押さえておくべき内容でしょう。
本記事では、GAFAMの一つであるマイクロソフトのメタバース戦略について、開発が進むツールや、メタバースに参入する理由を徹底解説します。
時代の潮流を作った巨大企業のメタバース戦略を理解することで、自社ビジネス創出のヒントになるのではないでしょうか。本記事を通して、マイクロソフトが構想するメタバース戦略を把握し、メタバース活用の参考にしましょう。
マイクロソフトの会社概要
商号(会社名) | Microsoft Corporation |
設立 | 1975年 |
代表取締役 | Satya Nadella(サティア・ナデラ) |
事業内容 | Productivity and Business ProcessesIntelligent CloudMore Personal Computingの3セグメントで事業展開 |
資本金 | 1,410億ドル |
従業員数(全世界) | 221,000人 |
売上高 | 1,680億ドル |
マイクロソフトは1975年に設立されたソフトウェア会社で、「Windows」シリーズや「Microsoft Office」を開発・提供しています。マイクロソフトのおもな事業内容は、下記のとおりです。
Productivity and Business Processes | Microsoft Officeや世界最大級のビジネス特化型SNSの「LinkedIn」、業務用アプリケーションの「Dynamics」などの様々なソフトウェアやプラットフォームの提供 |
Intelligent Cloud | クラウドサービスである「Azure(アジュール)」や、Windows Server、Visual Studio、GitHubなどのサーバー関連ソフトウェアの提供 |
More Personal Computing | WindowsやSurfaceなどのPC関連デバイスやXboxの販売など、個人向けの商品・サービスを提供 |
マイクロソフトはPC機器に限らず、様々なソフトウェアやサーバー関連製品、各種プラットフォームなどを多数提供しています。
マイクロソフトにおける3大メタバース戦略
インターネットサービスを世界に普及させたマイクロソフトが掲げるメタバース戦略は、大きく分けて3つあります。
- Mesh for Microsoft Teams
- MRデバイス「HoloLens」
- 産業用メタバース
これらのサービス・商品・分野に注力することで、メタバース市場への参入を推し進めている状況です。
なお、マイクロソフトと同じ海外企業、あるいは日本企業のメタバース事業について知りたい方は「日本と海外のメタバース企業一覧|参入の価値は十分あり?将来性も解説」をご覧ください。
Mesh for Microsoft Teams
「Mesh for Microsoft Teams」は、マイクロソフトが2021年11月に発表したバーチャルミーティングサービスです。同サービスは、ヘッドセットが必須なわけではなく、パソコンやスマホからでもアクセスできます。
マイクロソフトは、特別なデバイスが不要である同サービスを、メタバースの入口として打ち出しました。コロナウイルスの蔓延により急速に変化したオフィス環境に適応し、オンラインでのつながりをよりリアルで没入感のある形で再現する狙いがあります。
アバターは用途に応じて使い分けられる
「Mesh for Microsoft Teams」の特徴として一点目に挙げられるのは、アバターを用途に応じて使い分けられる点です。同サービスで使用するアバターは、以下の項目を柔軟に組み合わせて作成できます。
- 体のパーツ
- 髪の色
- 衣類
- メガネなどの小物
加えて、複数のアバターを作成できる点も大きな特徴です。
複数のアバターを作成できるため、参加する会議やスペース、その都度の使用用途に応じて使い分けられます。リアルな世界で装いを変えられる以上に、ネット空間上で自由に自分を着飾れるのが、アバター最大の魅力です。
用途に応じて使い分けられるアバターの存在は、リアル世界以上の自由さがあり、サービスを使いこなすポイントになるでしょう。
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没入感の強いビデオ会議ができる
「Mesh for Microsoft Teams」の特徴として2点目に挙げられるのは、没入感の強いビデオ会議ができる点です。
没入感のある3D空間に集まってコミュニケーションを取れるため、建築業や電気工学などの3D物理モデルを使って設計に関する仕事をする人はメリットが大きいでしょう。
没入感の強いビデオ会議は、特定の職業に限らずあらゆる業界における通常の会議にも効果的です。具体的には、Officeアプリケーションとの統合によって、PowerPointのプレゼンテーションを表示したり、オンライン上で文書を共同執筆したりできます。
「人感」「リアリティ」を出せなかった今までのビデオ会議において、メタバースを活用して没入感を演出するのは、仕事全体の高効率化につながるでしょう。
ドロップインスペースで雑談もできる
「Mesh for Microsoft Teams」の特徴として3点目に挙げられるのが、ドロップインスペースで雑談もできる点です。同サービスには、職場の人間関係を構築するためのスペースである「ドロップインスペース」が常に存在します。
オフラインによる業務であれば、給湯室や喫煙スペース、廊下などで「ちょっとした雑談」ができました。
一方、仕事をオンラインで行うようになると、やりとりはどうしても事務的になりがちです。また、ちょっとした雑談の機会もなくなり、閉塞感や人間関係の構築しづらさを感じた人も多いでしょう。
Mesh for Microsoft Teamsを利用することで、リモートワークなどでは難しい、会議後や移動中の雑談も気軽にできます。その結果、新たなアイデアやビジネスチャンスが創出されるのではないでしょうか。
使い方はアプリをダウンロードするだけ!
「Mesh for Microsoft Teams」は、専用アプリをPCやスマホにダウンロードするだけで簡単に使用できます。なお、同サービスの提供開始は2022年中ですが、記事執筆時点ではプレビュー版で体験できます。
ここではプレビュー版の使い方を簡単に紹介しますが、プレビュー版では後述する「HoloLens 2」が必要なのでその点は予めご了承ください。
- 「Microsoft Mesh APP(Preview)」をHoloLens2にインストール
- 利用規約や使用情報の収集に同意
- ユーザーを招待する「Space」を作成してユーザーを招待
- 招待された他のユーザーが「Space」に接続
プレビュー版の使用手順は上記のとおりですが、詳細な使用手順を確認したい方は公式の利用マニュアル(Get started with the Mesh app on your HoloLens 2)をご覧ください。
MRデバイス「HoloLens」
マイクロソフトにおけるメタバース戦略として2つ目に挙げられるのが、MRデバイス「HoloLens」です。MRとは「Mixed Reality」の略称で、現実世界を3D空間としてデジタル化し、その3D空間に架空の物を配置して自由に操作できる技術です。
マイクロソフトが提案するMRデバイスは、AR(Augmented Reality:拡張現実)とVR(Virtual Reality:仮想現実)の両方を含みます。そのため、Oculus(Meta) Questなどの「VR」ヘッドセットとは一線を画す点が大きな特徴です。
2019年に発売された「Hololens 2」は、MRデバイスとして最先端の技術を盛り込んでいるものの、販売価格は3,500ドルとかなり高額でした。次世代モデルの販売は早くても2023年と言われ、性能はもちろんですが、価格に対する企業努力にも期待したいところです。
なお、AppleやGoogleなどもARグラス開発に力を入れており、同分野における製品開発競争は、今後さらに熾烈さを増すことでしょう。
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産業用メタバース
マイクロソフトにおけるメタバース戦略として3つ目に挙げられるのが、「産業用メタバース」です。
マイクロソフトはメタバースを活用することで、物理的な資産をデジタルに拡張し、バーチャルで複数の関係者と同時に活用する「インダストリアルメタバース」の利用を開始しています。
たとえば、川崎重工業株式会社と連携して取り組むプロジェクトでは、ロボットによる製造プロセスの自動化や効率化に向けた、各部門を横断した連携体制の構築を目指しています。
プロジェクトを通じ、AI活用による故障発生時の迅速な問題解決や、未然のトラブル防止、遠隔地にいる専門家のアドバイス等を複数拠点で瞬時に得られるようになりました。
産業用メタバースが発展することで、設計から開発に至る全ての工程を仮想空間上で実行できる環境を実現し、人口減少や産業構造の急速な変化等にも対応できると期待されます。
マイクロソフトがメタバースに参入する3つの理由
マイクロソフトは、独自のソフトウェアである「Mesh for Microsoft Teams」を起点に、メタバース市場への参入を推し進めています。マイクロソフトがメタバースに参入する理由は、大きく3つ挙げられます。
- メタバースで仕事をする人が増えると想定している
- メタバースの基盤になる技術を持っている
- 自社開発のVR/ARデバイスが使える
次から次へと新技術が生まれる変化が激しい現代の中で、マイクロソフトがメタバース市場に見出す勝機を見ていきましょう。
メタバースで仕事をする人が増えると想定している
マイクロソフトがメタバースに参入する理由の1つ目が、「メタバースで仕事をする人が増えると想定している」からです。直近の2年間ほどで、必ずしも通勤してオフィスで働く必要はなくなり、リモートワークが急速に普及しました。
オンラインで会議する機会も急増し、働く場所を選ぶことが一般的となれば、メタバースを活用し、リアルで没入感のある環境で仕事をする人が増えても不思議ではありません。
既存のTeamsの月間アクティブユーザー数は約2億5,000万人以上とされており、2022年中にMesh for Microsoft Teamsのサービス運用がスタートすると、さらなるユーザー獲得が期待されます。
働き方の変化が追い風となり、メタバース空間の需要増加はもはや必然の流れといえそうです。
メタバースの基盤になる技術を持っている
マイクロソフトがメタバースに参入する理由の2つ目が、「メタバースの基盤になる技術を持っている」からです。マイクロソフトは、クラウドサービスである「Azure」をはじめとした、IoTやAI、データ分析システムなどのさまざまな基盤技術を開発しています。
そのほかにも、「Mesh for Microsoft Teams」や「HoloLens2」といった具体的なサービスも開発しています。メタバースサービスの提供にあたって、基盤技術から具体的なプラットフォームまでを社内で一貫して構築できるのは、他社にはない大きな強みとなるでしょう。
メタバースの基盤になる技術を産業用メタバースへの事業展開にも活かし、マイクロソフトは、対個人・対企業の双方に向けたサービス展開を視野に入れた技術開発を進めています。
自社開発のVR/ARデバイスが使える
マイクロソフトがメタバースに参入する理由の3つ目が、「自社開発のVR/ARデバイスが使える」からです。マイクロソフトはMRデバイスの「HoloLens」を2016年から開発・販売し、ARハードウェアの分野で大きくリードしています。
また、「HoloLens」に加え、XR一体型ハードで業界をけん引しつつあるQualcommと、ARチップの共同開発を行う予定です。この共同開発により、HoloLensの最新バージョン開発が期待されます。
現行のHoloLens 2は生産コストを下げるのが難しく、広く世間一般に普及するにはかなりハードルが高い状況です。
しかし、VR/ARデバイスそのものと、同デバイスを使用できるメタバース空間・サービスの双方を自社開発しているマイクロソフトは、メタバース市場の覇権を争うにあたって強力な武器となるでしょう。
なお、メタバースの始め方を詳しく知りたい方は「【具体例つき】メタバースとは?メリット・デメリットもわかりやすく解説」をご覧ください。
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マイクロソフトのメタバース戦略は幅広い!
圧倒的な開発力と技術力を武器に、幅広い事業展開を進めるマイクロソフト。コロナ禍で働き方が変化したことも追い風となり、Mesh for Microsoft Teamsを起点にメタバースが急速に普及する可能性を秘めています。
Mesh for Microsoft TeamsはXRデバイスなしでも、スマホやPCで手軽に没入感のあるオンライン会議などが可能です。その分、ユーザーの利用ハードルを下げられ、サービス利用者数の増加が期待できます。
自社でメタバース関連事業を創出する際も、利用者が「手軽に始められる」サービス設計は、非常に重要なポイントになるでしょう。
産業用メタバースにも力を入れ、対個人、対企業の双方に向けたメタバース事業を打ち出しており、HoloLensのさらなる開発も期待されます。
マイクロソフトならではの幅広いメタバース戦略で実現される未来の働き方から着想を得て、自社独自のメタバース戦略を検討してみましょう。
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