編集部
2023年、社会人の学びとリスキリングの動向は、これまでにない速度で変化しています。特にオンライン学習プラットフォーム「Udemy Business」の受講データは、その変化を色濃く反映しています。
「リスキリング」という言葉の認知率が昨年の23％から56％へと大幅に増加し、学習への意欲も高まっている一方で、実際に学習に取り組む社会人はまだ少数派です。このギャップをどのように埋めるかが、今後のキーポイントとなりそうです。
本記事では、Udemy Businessの2023年第1四半期の検索データと受講データを基に、リスキリングに関する最新トレンドを徹底分析し、社会人の学びの現状と今後の方向性を探ります。
リスキリングの現状と社会人の意識
2023年に入り、リスキリングは社会人にとって避けては通れないテーマになっています。特にパンデミックの影響で、多くの業界でデジタル化が進み、新たなスキルが求められるようになりました。しかし、ベネッセコーポレーションが提供するUdemy Businessの調査によると、リスキリングの必要性を感じている社会人は56％にも関わらず、実際に取り組んでいるのは10％程度というデータが出ています。この数字から、学びへの意識は高まっているものの、実際に行動に移すまでには至っていない現実が浮き彫りになります。
このギャップの原因としては、時間やコスト、どのスキルを身につければいいのかの不明瞭さなどが挙げられます。また、リスキリングを始めるための具体的な第一歩が見えにくいという声も多く聞かれます。企業側も、従業員のスキルアップを支援する体制を整えることが急務となっており、個人と組織の双方にとって、学びのプロセスをいかに効率的かつ効果的に進めるかが重要な課題となっています。
Udemy Businessの役割とは
Udemy Businessは、世界中のビジネスパーソンが利用するオンライン学習プラットフォームです。日本ではベネッセコーポレーションが展開し、国内利用者向けに約10,000講座を提供しています。これらの講座は、ビジネスに必要なスキルから専門知識まで幅広くカバーしており、サブスクリプション形式でアクセス可能です。利用者は自分のペースで学習を進めることができ、必要なスキルを効率的に身につけることができます。
特に注目されているのが、AIやプログラミングなどの最新技術に関する講座です。例えば、ChatGPTに関する講座は、全業種にわたって受講者が急増しており、デジタルトランスフォーメーション(DX)の波に乗り遅れないためのリスキリングツールとしての役割を果たしています。また、Udemy Businessは企業が従業員の学習をサポートするためのデータ提供も行っており、組織全体のスキルアップを促進するための施策立案にも貢献しています。
このように、Udemy Businessは個人のスキルアップだけでなく、企業の人材育成戦略にも深く関わるサービスとして、リスキリングの現場で重要な役割を担っています。
2023年第1四半期の受講データ分析
Udemyの最新データによると、2023年第1四半期に最も受講数が増加したのは「データサイエンス」と「プログラミング」のカテゴリーでした。これは、デジタルトランスフォーメーションが進む中で、データを解析し、価値を生み出す能力が高く評価されていることを示しています。また、プログラミングスキルは、自動化やアプリ開発など、多岐にわたる業務に応用可能であるため、多くのビジネスパーソンが学習を進めていると考えられます。
一方で、ソフトスキルに関する講座も注目を集めています。コミュニケーション能力やリーダーシップ、タイムマネジメントといったスキルは、リモートワークが普及する中でさらに重要性を増しており、これらの講座の受講者数も増加傾向にあります。これらのデータは、技術的なスキルだけでなく、人間関係を円滑にし、チームを効果的に運営する能力も同時に重要視されている現代のビジネス環境を反映しています。
社会人の学びの意識調査とその結果
最近の調査によると、社会人の学びに対する意識は年々高まっています。特に若年層を中心に、キャリアアップやキャリアチェンジを見据えたスキル習得への意欲が強いことが分かります。しかし、意欲と実際の行動の間には依然として大きな隔たりがあり、多忙を理由に学習を後回しにしているビジネスパーソンも少なくありません。
この調査結果は、学びの機会を提供するUdemy Businessの利用動向とも一致しています。受講者の中には、自己啓発を目的とした個人が多い一方で、企業が従業員のスキル向上を目的としてプラットフォームを利用するケースも増えています。このような背景から、Udemy Businessは個人の自主性を尊重しつつも、組織としての学習支援の仕組みを提供することで、社会人の学びの意識と行動のギャップを埋める役割を果たしていると言えるでしょう。
業種別受講トレンドの比較
Udemyのデータ分析によると、ITと金融業界の受講者が特に活発に学習を進めていることが明らかになりました。IT業界では、クラウドコンピューティング、サイバーセキュリティ、データ分析などの技術的なスキルが、金融業界では、ブロックチェーンやフィンテック関連の講座が人気を集めています。これらの業界では、技術革新が急速に進むため、常に最新の知識を習得することが競争力を維持する上で不可欠です。
一方、製造業や小売業では、デジタルマーケティングやEコマース関連の講座が注目されています。これは、消費者行動のデジタル化に伴い、これらの業界でもオンラインでの販売やマーケティングのスキルが求められているためです。さらに、パンデミックの影響でリモートワークが普及したことから、どの業界においてもコミュニケーションスキルやプロジェクト管理の講座の需要が高まっています。
企業規模別の学びの傾向
企業規模によっても、Udemyでの学習傾向には顕著な違いが見られます。大企業では、従業員のスキルセットを広げるために、リーダーシップや戦略的思考といったソフトスキルの講座が好まれています。これは、大企業が組織全体のイノベーションを促進し、変化に対応する能力を高めるためには、従業員一人ひとりの思考力や問題解決能力が重要であると認識しているためです。
中小企業やスタートアップでは、限られたリソースの中で最大の成果を出すために、具体的な技術やツールの操作スキルを身につける講座が選ばれがちです。特に、デジタルツールの活用、ソーシャルメディアマーケティング、ウェブ解析など、即戦力となるスキルが重宝されています。また、これらの企業では、柔軟な思考と迅速な行動が求められるため、アジャイル開発やリーンスタートアップの手法に関する講座も人気です。
人気講座とその背景
Udemyでの人気講座は、市場の需要と密接に関連しています。2023年に入り、特に人気を集めているのはプログラミング言語のPython、データ分析、AI技術に関する講座です。これらの講座が支持される背景には、データ駆動型の意思決定がビジネスの標準となりつつあることがあります。Pythonはその汎用性の高さから、データサイエンスやウェブ開発など多岐にわたる分野で利用されており、これを学ぶことは幅広いキャリアオプションを開くことにつながります。
また、AI技術に関する講座は、自動化や効率化を推進するツールとしてのAIの実用性が高まっていることを反映しています。企業はAIを活用して業務プロセスを最適化し、競争優位性を高めようとしており、従業員もこの波に乗り遅れないようにスキルを習得しているのです。
リスキリングが必要とされるスキルセット
リスキリングの必要性が叫ばれる中、どのスキルセットが特に重要視されているのでしょうか。Udemyのデータによると、テクノロジー関連のスキルは引き続き高い需要があります。プログラミング、クラウドコンピューティング、サイバーセキュリティなどがその例です。これらのスキルは、デジタル化が進むあらゆる業界で基礎となるものであり、リスキリングの対象として最優先されるべき領域と言えるでしょう。
しかし、テクニカルスキルだけでなく、ソフトスキルも同様に重要です。コミュニケーション、チームワーク、クリティカルシンキングなどは、テクノロジーが進化しても変わらず求められるスキルです。これらのスキルは、テクノロジーによってもたらされる変化に柔軟に対応し、新しい状況で効果的に働くために不可欠なものとなっています。
学習意欲のある層と学習意欲なし層の分析
Udemyのデータによると、学習意欲が高い層は主に若手から中堅のビジネスパーソンであり、キャリアアップや新しい職への転職を見据えています。彼らは特に、テクノロジー関連のスキルやグローバルビジネスに関する知識を積極的に学んでいます。一方で、学習意欲が低いとされる層は、既に確立されたキャリアを持つ中高年層に多く見られます。彼らは現在の職務に満足しているか、新しいスキルを学ぶことに対するハードルを感じていることが考えられます。
このような層別の学習意欲の違いは、企業が従業員のスキル開発に対してどのような支援をすべきかを考える上で重要な指標となります。若手層にはキャリアパスを提供し、学習の機会を積極的に与えることが重要です。一方で、学習意欲が低い層には、学習の必要性を理解させ、モチベーションを高めるためのアプローチが求められます。
リスキリングの障壁と企業の課題
リスキリングの取り組みにおいては、多くの障壁が存在します。個人レベルでは、時間の制約や学習コスト、学習へのモチベーションの維持が挑戦となります。企業レベルでは、従業員のスキル開発をどのように組織戦略に組み込むかが課題です。特に中小企業では、リソースの限られた中で効果的な人材育成を行うことが難しいとされています。
また、技術の進化に伴い、どのスキルが将来的に必要となるかを予測することも一つの障壁です。企業は、従業員が学ぶべきスキルを適切に選定し、学習の機会を提供することで、これらの障壁を乗り越える必要があります。Udemyのようなプラットフォームは、多様な講座を提供することで、個人と企業のリスキリングの障壁を低減する手助けをしています。
Udemyと他のオンライン学習プラットフォームの比較
オンライン学習市場は、Udemyをはじめとする多数のプラットフォームで構成されています。Udemyの特徴は、講座の多様性とアクセスの容易さにあります。一方で、CourseraやedXなど他のプラットフォームは、大学や専門機関と提携した講座を提供しており、より学術的なアプローチを取っています。LinkedIn Learningは、ビジネススキルに特化しており、プロフェッショナルなネットワーキングの場としても機能しています。
これらのプラットフォーム間での最大の違いは、提供する講座の種類と学習者のニーズに対するアプローチです。Udemyは個人が自由に講座を作成し提供できるため、最新のトレンドやニッチなトピックをカバーしています。一方で、CourseraやedXは伝統的な教育機関と連携しているため、より体系的なカリキュラムを提供しています。
このように、各プラットフォームは異なる強みを持っており、ビジネスパーソンは自身の学習目的やキャリアプランに合わせて適切なプラットフォームを選択することが重要です。Udemyはその手軽さと多様性で多くの学習者に選ばれていますが、他のプラットフォームも特定のニーズに合わせた深い学びを提供しており、学習者にとっては豊かな選択肢があると言えるでしょう。
2023年の学習トレンド総括
オンライン学習は、2023年もビジネスパーソンの間で重要な自己投資の手段として位置づけられています。Udemyをはじめとするプラットフォームは、技術革新の波に乗り遅れないためのリスキリングや、キャリアアップを目指すためのスキルアップの場として利用されています。特にプログラミング、データ分析、AI技術といった分野の講座が人気を集めており、これらは今後のビジネスシーンにおいても中核をなすスキルとなるでしょう。
また、ソフトスキルの重要性も再認識されており、コミュニケーションやリーダーシップといった人間力を高める講座も注目されています。これらのスキルは、テクノロジーの進化とともに、より複雑になるビジネス環境での成功に不可欠です。
Udemyだけでなく、CourseraやedX、LinkedIn Learningといった他のプラットフォームも、それぞれの特色を活かし、多様な学習ニーズに応えています。これらのプラットフォームを賢く選択し活用することで、ビジネスパーソンは自らのキャリアをより一層充実させることが可能です。2023年の学習トレンドは、個々の学習意欲と市場のニーズが高度にマッチした形で進化を遂げており、これからもその動向に注目が集まります。