編集部
シェアオフィスの世界は、デジタルノマドから企業に至るまで、多様な顧客層に対応して進化を遂げています。この記事では、2023年の最新トレンドと専門家の予測を基に、シェアオフィスがどのように変化しているのかを探ります。
ホテルのような快適さを提供するシェアオフィスの台頭、企業によるフレックススペースへの移行、テクノロジーの活用など、シェアオフィス業界の新たな動向を紹介します。また、エネルギー危機やウクライナ戦争がこの業界に与える影響についても考察します。
この記事を通じて、シェアオフィスの未来像と、それがビジネスや働き方にどのような影響を与えるかを探ります。
ホテル風シェアオフィスの台頭
2023年のシェアオフィス業界は、ホテルのような快適さを提供する施設の増加により、大きな変化を遂げています。CBREの「グローバル・ライブ・ワーク・ショップ・レポート」によると、多くの人々が仕事環境の質、柔軟性、立地、空間デザイン、技術、サービスやアメニティ、健康・ウェルネスなどに重きを置くようになっています。この傾向は、デジタルノマドの増加によってさらに加速しており、アメリカ国内だけでもデジタルノマドの数は過去数年で三倍以上に増加しています。
冒険とリモートワークを求める人々にとって、ZokuやVirginのようなホテルスタイルのシェアオフィスは、一つの建物で必要なすべてのアメニティを提供するため非常に魅力的です。ホテル業界からの星評価システムが近い将来、シェアオフィス業界に導入される可能性もあります。Hub AustraliaのJohn Preece氏は、「本部機能を持つ施設は小さくなるが、より良いものになり、建物のブランドによって包括されるランドロードのアメニティとサービスを活用するようになる」と述べています。
給与パッケージとしてのワークスペース
地理的な制約を超えた採用が進む中、企業は従業員に対して、自宅以外で働く場合のシェアオフィス利用費用をカバーする傾向にあります。Facebook、Bank of America、Salesforce、IBM、UBSなどのFortune 500企業がこのトレンドの先駆けとなり、多くのビジネスがこの流れに乗り始めています。Hub AustraliaのJohn Preece氏は、「かつては特典とされた会社の車や携帯電話が給与パッケージの一部となったように、従業員の経験を極端に個人化することで、彼らは仕事に関するさまざまな選択肢を提供されるようになり、自分たちのワークスペースのネットワークを選び、それを給与パッケージの一部とすることが可能になる」と指摘しています。
Coworking SpainのManuel Zea Barral氏によると、柔軟なオフィスを解決策と見なす企業が増えるにつれて、オフィスの利用率は引き続き増加するでしょう。また、サプライヤーは顧客ロイヤルティを構築するために、より多くのサービスを提供するようになると予測されています。
テクノロジー主導のシェアオフィス
2023年のシェアオフィス業界は、顧客体験を重視する動向により、テクノロジーの導入が加速しています。SuperOfficeによると、2020年以降、顧客体験は価格や製品を上回る主要なブランド差別化要因となっており、約50%のビジネスが今後5年間で顧客体験を最優先事項としています。この統計はシェアオフィスにも当てはまり、86%の顧客が優れた顧客体験のためにより多くの支払いをする意思があるため、この分野への適切な投資は収入を倍増させる可能性があります。
しかし、顧客に優れたサービスを提供し、その幸福度を測定し、向上させることは、テクノロジーなしでは困難です。そのため、2023年には、シェアオフィスでのユーザー中心のテクノロジーが増えることが予測されています。これらのテクノロジーは、サービスの申し込みを行うための自己サービス型シェアオフィスアプリから、利用率や空気質を測定するゲージ、さらにはAI、VR、メタバースまで、さまざまな形を取ります。
everyworksのBastian Boss氏は、「テクノロジーは、働く世界の現在の課題に対応する手段を提供する。人々は通勤や電車を待つために多くの時間を費やし、この貴重な時間を無駄にしないように電車や駅で作業を試みる。混雑した駅でオンライン通話を受けたり、集中したりするのは簡単ではない。これが、アプリを介して簡単に利用できる駅にフレックスワークスペースを設置する理由である」と述べています。
企業のフレックススペースへの移行
JLLによると、パンデミック以降、物理的なオフィスの利用率は全体的に前例のない低水準に留まっており、週平均の出勤率は50%減少しています。一方で、シェアオフィスの利用率は従来のオフィスに比べて著しく高いです。このような低い利用率を考慮すると、企業が高額なオフィスリースを継続する意味はありません。そのため、2023年を通じて、企業によるシェアオフィスやフレックススペースへの移行が続くことが予想されます。
IWGのKarin Poel – van der Lans氏は、「2023年、さらに多くの企業が市場の不確実性のためにフレックスオフィススペースに移行するだろう。フレックスは、長期的なコミットメントなしに市場の動向に合わせて移動する機会を企業に提供する」と述べています。また、Aticco WorkspacesのNaiara Chaler氏は、「コロナウイルスの後、シェアオフィスは従来のオフィスの代替として成長しており、フレキシブルモデルが提供する柔軟性と付加価値を提供している。2023年はフレキシブルワークスペースが将来の労働のための最も興味深いオフィスモデルとして確立される年になるだろう」と予測しています。
エネルギー危機とウクライナ戦争の影響
ウクライナ戦争が長引く中、その影響は世界経済にも波及しています。経済協力開発機構（OECD）によると、ロシアのウクライナ侵攻は2023年末までに世界経済に2.8兆ドルの損失をもたらすと予測されています。ロシアへの制裁は輸出と投資の減少を招き、ヨーロッパ諸国の経済成長を鈍化させ、世界市場の不安定化に寄与しています。また、戦争は石油価格の高騰を引き起こし、交通や食品など石油に依存するすべてのもののコスト上昇をもたらし、世界中の経済に悪影響を及ぼしています。
高いエネルギー価格は、マネージャーのワークスペース選択に大きな影響を与え、シェアオフィスに有利に働いています。ますます多くの企業がフレキシブルなワークスペースを選択するにつれ、業界の成長は止まらないと見られています。Statistaによると、世界中のシェアオフィスの数は2022年の18,700から2024年末までに41,975に増加すると予測されています。
Offices UnlimitedのMarie Kantorová氏は、「チェコ共和国の不動産市場は減速している。ウクライナ戦争はチェコ経済に大きな影響を与えており、企業は慎重になり、今後数ヶ月で何が起こるかを見守っている。高いエネルギー価格は、企業のマネージャーが適切なオフィススペースを選択する方法に根本的な影響を与えている。この状況は共有オフィスやシェアオフィスの選択肢に有利であり、柔軟性を求めるクライアントが増えている」と述べています。
持続可能性を共有するコワーキングスペース
環境保護への関心は多くの人々にとって増大しており、2023年にはさらに勢いを増すと予想されています。FedEx、Walmart、Amazonなどの大手ブランドは、化石燃料を使用する車を避けるために電気自動車、ドローン、カーゴバイクへの切り替えを進めています。ファストファッションブランドのZaraは廃棄物を減らすために需要計画アプローチを導入し、Ikeaは2030年までに完全に循環型になることを誓約しています。McDonald’sやStarbucksもこのトレンドに参加しています。
SAPの研究によると、75%の企業が持続可能性と長期的な収益性の間に強いまたは中程度の正の関係を見出しています。そのため、職場をより環境に優しいものにすることは、地球にとっても、企業の収益にとっても良いことです。顧客は環境に優しいイニシアチブに関与し、影響を与えたいと考えており、同じ価値観を共有する個人と一緒になることは、競合他社に対する強力な選択理由となります。
StartDockのThom Wernke氏は、「今年4月12日にはオランダで『地球超過日』があり、それは憂慮すべきことだ。シェアオフィスや顧客から、これに対して何かをする必要があるという声がますます高まっている。各国にはGRI、WELL、Bコープ（レンタルコワーキングコンセプト用）やBREEAM、LEED（建物所有者用）などのインパクト証明書を取得している1〜2の先駆者がいる。私たちもビジネス運営をより持続可能にするために取り組んでおり、例えばMove to Impactと協力してBコープ証明書を取得し、CO2フットプリントを減らすために全力を尽くしている」と述べています。
自宅近くのコワーキングスペース
パンデミックの影響で、働き方に大きな変化が生じました。CBREの研究によると、45.5%の人々が通勤時間として15〜30分を理想とし、38.3%の人々がすでにこの近さを享受しています。在宅勤務の利点を経験した後、多くの人々は長時間の通勤に戻ることを望んでいません。2023年もこの傾向は変わらず、徒歩や自転車で行ける距離にあるシェアオフィスを選ぶ人が増えるでしょう。これは健康と環境にも有利です。
Deco GroupのChristine Andrews氏は、「北米では、小売、レストラン、ビジネス、エンターテイメント、住宅がワークスペースを取り囲む複合開発の一部としてのコワーキングが増えるだろう。この傾向は、主要都市圏外の中規模都市や郊外でより顕著になる」と述べています。また、SocialWorkplacesのJean-Yves Huwart氏は、「小さな町や地方地域では、リモートワーキングの課題に対処するために新しいモデルや革新が必要になるだろう」と指摘しています。
予約プラットフォームを通じた顧客獲得
今後2年間で、総労働力の48%がモバイルまたはハイブリッド方式で働くことになります。これらの人々は生産的に働くためのワークスペースを必要としますが、どのようにして適切なハブを見つけるのでしょうか？答えは、Airbnbのような体験を提供する予約プラットフォームを通じてです。2023年は、Coworker、Connected Hubs、Desana、Upflex、Croissantなどの予約プラットフォームとシェアオフィスの提携が増える年になるでしょう。これにより、企業の従業員は世界中の任意のシェアオフィスで作業することが可能になります。
Connected HubsのStephen Carolan氏は、「2023年には、アイルランド全域のハブを一元化するConnected Hubsのようなイニシアチブが増えるだろう。これらのリソースは、個々のハブが共有アイデンティティの下でまとまり、リモートワーキング、起業家、地元ビジネス、ハブが提供するコミュニティに経済的機会を最大化する手段を提供する」と述べています。また、The Melting PotのClaire Carpenter氏は、「これらのプラットフォームは、従業員を簡単にさまざまなコワーキングハブに導くために存在している。これが既存のコワーキングハブコミュニティやビジネスモデルにどのような影響を与えるかを見るのが興味深い」と指摘しています。
コワーキング人口の細分化
2023年には、コワーキングスペースの利用者層がより細分化されることが予想されます。大きく分けて二つのグループが存在します。一つはスタートアップや大企業ブランドで、もう一つはデジタルノマド、起業家、個人事業主、旅行者、リモートワーカー、ブートストラップスタートアップなどです。大手運営者は前者のグループを引き続きサービス提供し、小規模な運営者は後者のグループに焦点を当てることになります。
Christine Andrews氏は、「コワーキングの人口層がさらに細分化されることを予測しています。Industrious、Spaces、WeWork、IQ Officesなどの大手運営者は、資本力のあるスタートアップや大企業ブランドを効果的にサービス提供し続けるでしょう。これらの企業は、ハイブリッドワークモデルに移行するにあたり、従来の本社体験を再現しようとしています」と述べています。これに対し、デジタルノマドや個人事業主などのグループは、より小規模な運営者によってサービス提供されることになります。
デジタルノマドの多様化
デジタルノマドのコミュニティは、ますます多様化し、包括的になっています。これにより、コワーキングスペースはさまざまなニーズに対応するために適応する必要があります。デジタルノマドは、単にリモートワークをするだけでなく、異なる文化や地域を体験することにも価値を見出しています。このトレンドは、コワーキングスペースが提供するサービスやアメニティに新たな要求を生み出しています。
Coworker.comの報告によると、デジタルノマドコミュニティの多様化に伴い、コワーキングスペースはより幅広い範囲のニーズに対応するための適応が必要になります。例えば、静かな作業スペース、高速インターネット、コミュニティイベント、地元文化へのアクセスなどが求められるようになります。デジタルノマドの増加は、コワーキングスペースの地理的な拡大を促進し、都市部だけでなく郊外やリゾート地域にも新たなスペースが開設される可能性があります。
企業のリモートワーク戦略とコワーキングスペース
リモートワークの普及に伴い、多くの企業がリモートワーク戦略を再考しています。特に、従業員が自宅以外で働くことを選択する場合、コワーキングスペースは重要な役割を果たしています。企業は、従業員がより柔軟に働けるように、コワーキングスペースへのアクセスを提供することで、生産性と従業員満足度の向上を図っています。
この動向は、従業員がオフィスと自宅の中間に位置する「第三の場所」としてコワーキングスペースを利用することを促進しています。これにより、従業員は通勤時間を節約し、よりバランスの取れたワークライフを実現できます。また、企業はオフィススペースのコストを削減し、より柔軟な働き方をサポートすることができます。
このトレンドは、特に大都市圏外の地域で顕著になっており、企業は従業員が住む地域に近いコワーキングスペースを提供することで、より効率的な働き方を実現しています。このように、コワーキングスペースは企業のリモートワーク戦略の重要な一部となっています。
コワーキングスペースの未来予測
コワーキングスペースの未来は、多くの変化と革新を伴うものと予測されています。2023年以降も、テクノロジーの進化、ワークスタイルの変化、経済的な要因がコワーキングスペースの成長と発展を促進するでしょう。特に、AIやVRなどの新しいテクノロジーの導入は、コワーキングスペースの利用体験を一層豊かにします。
また、経済的な不確実性やエネルギー危機などの外部要因は、コワーキングスペースの需要をさらに高める可能性があります。企業はコスト削減と柔軟性の向上を求めており、コワーキングスペースはこれらのニーズに応える理想的な解決策となります。さらに、持続可能性への関心の高まりは、環境に配慮したコワーキングスペースの設計と運営を促進します。
このように、コワーキングスペースは今後も進化し続け、ビジネスと働き方の未来に大きな影響を与えることが予想されます。テクノロジーの進歩、経済的な要因、持続可能性への取り組みが、コワーキングスペースの成長と発展を支える主要な要素となるでしょう。