小売店各社が、メタバースへのショップ開設を急速に進めている。
2022年年末商戦に向けて、アメリカではサーフ系ブランド「パシフィック・サンウェア」(PacSun パックサン)で、メタバース向けのコレクションのデザイン作成を進めるようデザイナーたちに通達が出された。
ホリデーシーズンに、自分のアバターには自分と同じファッションをさせたいミレニアム世代・Z世代の顧客向けに、各ブランドがデジタルファッションを提供する日もそう遠くないようだ。
メタバースという次なる時代の波に乗る
昨今、メタバースの市場が大幅に拡大しており、特に年末商戦ではリアルな商品を、バーチャルが追い上げているというデータが存在する。
これまでは、現実のリアルな店舗をバーチャル上に再現するだけのブランドがほとんどだった。しかし、今年2022年は様々なブランドが、ホリデーシーズン用にバーチャルショップを一新している。
パックサンでは、顧客の85%がZ世代だ。彼らは自分と同じファッションをアバターにもさせたいという願望が強いと指摘し、ゲームサイト「ロブロックス」で購入できるデジタル版の商品は5ドル未満と、リアルな商品よりも手頃な価格で購入できるよう提供されている。
Amazonなどの小売店でも、キツネのバーチャルマスクなどのホリデー商品が、ゲームサイト「ロブロックス」へ誘導する導線として無料配布されている。
別の小売店では、公式サイト上に、実際に購入可能なホリデー商品を展開したバーチャル版ホリデースペースを開設している。顧客は、華やかなホリデー気分に浸りながら、お好みの商品を選んで購入することができる。
また米アパレルブランドのアメリカン・イーグルでは、「アメリカンイーグル・ホリデー・ヴィレッジ」をロブロックス上に展開。イルミネーションで装飾された空間で、アバターたちはホットコーヒーを飲んだり、氷の彫刻を作ったり、ショッピングを楽しんだりすることができる。
これらのバーチャルショップを運営しているのが、オブセス(OBSESS)だ。オブセスは2016年ニューヨーク市で設立された新興企業で、現在は、ディオールやFENDIなどのハイブランドから、コーチやクロックスなど日本でもおなじみのブランドが、同社の提供する体験型eコマースプラットフォームで、バーチャルショップを運営している。
前述のアメリカン・イーグルでは、同ブランドのセーターやパーカーの無料提供を始めてから、試着した人が3500万人に上るなど、グッチに次いで2番目となるエンゲージメントを獲得している。
デジタルファッションが販売される未来はすぐそこに
アメリカン・イーグルやエアリーの親会社アメリカン・イーグル・アウトフィッターズの最高マーケティング責任者(CMO)クレイグ・ブロマーズは、「デジタルファッションを販売できる日も遠くない」と述べ、今後もメタバースの市場は急速に拡大していくとみられる。
友人と一緒に見て回ったり、割引クーポンがもらえるゲームに挑戦したりできるバーチャルサイトのほうが、通常のウェブサイトに比べるとより長い滞在時間になるという結果もあり、バーチャルサイトを展開しているブランドでは購入率25%増、平均注文金額20%増という数字につながっている。
アバターに自分と同じファッションをと考えるミレニアム世代・Z世代は、他の世代よりバーチャル体験を身近に感じており、その市場はこれからますます拡大するとみられている。