ソフトバンクはデジタル技術によってビジネスモデルの変革を図る「DX(デジタルトランスフォーメーション)」を取り入れた新規事業を数多く展開しています。

事業分野は通信分野だけにとどまらず、人材不足に悩む医療業界や、SDGsで問題視されている環境問題にも力を発揮。ITを活用したデジタル技術の普及により、様々な事業が変化しつつあります。

本記事では、ソフトバンクが提供する5つのDX新規事業を徹底解説。DX化を用いた新規事業を検討の方は、ぜひ参考にしてみてください。

ソフトバンクが取り組むDX新規事業を5つ解説

ソフトバンクはデジタルデータを活用したDX化に着目し、環境や健康問題に切り込む新規事業を数多く展開しています。

  • 来店数予測と気象情報で需要を先読みする「サキミル」
  • 医療向け「PayCAS POS for クリニック」の提供
  • 飲酒運転予防が期待される「スマートフリート」
  • AIに必要なメタ情報を作成する「TASUKI Annotation」
  • CO2吸収量測定システム「e-kakashi」でNCCCに参画

ソフトバンクが展開する5つの新規事業を参照しながら、DX化の活用方法を具体的に解説します。

来店数予測と気象情報で需要を先読みする「サキミル」

「サキミル」小売り・飲食業界向けの需要予測サービスです。AIによって客数を事前に予測することで、最適な人員配置による業務効率化が期待できます。

  • 地域の気象
  • 蓄積された客数データ
  • 曜日ごとの来客率

独自のAIアルゴリズムで客数を予測し、事前に行われた検証では約93%の的中率をはじき出しました。サービス拡充に伴い、在庫管理やシフト作成といった外部システムとの連携も予定されています。

また近年SDGsによる「持続可能な消費と生産の確保」が課題に挙げられ、飲食店での食品廃棄が社会問題に。必要な生産数だけを確保し、環境問題になっているフードロス削減にも貢献します。

医療向け「PayCAS POS for クリニック」の提供

「PayCAS POS for クリニック(ペイキャス)」医療業界の会計業務で効果を発揮するサービスです。「レセコン」と呼ばれる医療報酬明細書を作成するシステムと連動し、クリニックや病院の決済処理に掛かる負担を軽減します。

キャッシュレス決済のニーズが高まり、電子決済やカードでの支払い方法も増加。レセコンと連動していない決済方法が選択された場合、診療報酬(条件によって金額控除がかかる仕組み)を手動で入力しなければいけません。

「PayCAS POS for クリニック」を導入することで各種システムと連動し、請求金額の処理がすべて自動化。金額の集計作業も内部で計算され、会計業務にかかる負担が軽減されます。

飲酒運転予防が期待される「スマートフリート」

「スマートフリート」は社用車の管理や、運転者の酒気確認がおこなえる管理サービスです。スマホアプリと連動させることで、車両の運航情報や稼働率を監視しながら一括管理できます。

2022年に警視庁から改正道路交通法が施行され、一部の事業所で安全運転管理者の選任が必要に。

  • 乗車定員が11人以上の自動車1台
  • その他の自動車が5台

上記のどちらかに該当する場合、酒気帯びの確認と1年間の記録保存が義務付けられました。

またBluetoothで連動できるアルコール検知器を使用することで、高精度の酒気確認が可能に。スマートフリート専用クラウドに測定結果が送信されるため、1年間の酒気記録もサーバーに自動保存されます。

AIに必要なメタ情報を作成する「TASUKI Annotation」

「TASUKI Annotation(タスキ アノテーション)」AIに必要な学習データを自動で収集・加工してくれるサービスです。作業工数が重くのしかかる学習フェーズが自動化されるため、AIエンジニアの負担軽減が期待できます。

DX化によって加速するAI需要に対し、AIエンジニア人材は圧倒的に足りていません。教師データ(AIが学習するための見本データ)を与えてAIを育てる工程を自動化し、AIに情報を与えるAIの開発に成功。

専門のスタッフによるチャットサポートはもちろんのこと、汎用データを直接購入することも可能。AIの導入作業そのものを自動化し、不足部分も補完できる体制が整ったサービスといえるでしょう。

CO2吸収量測定システム「e-kakashi」でNCCCに参画

「e-kakashi(イーカカシ)」農作業に必要な環境データを収集・分析するサービスです。農作物の品質を安定させ、収穫量の上昇に貢献します。

  • 気温や日照量などの「環境データ」
  • 堆肥や水やりを始めとする「作業記録」
  • 茎数や葉数といった「生長記録」

経験値や作業者の勘所をデータ化することで、数値にあわせて科学的に栽培作業を徹底サポート。後継者や専門技術の継承に一役買っています。

また近年、SDGsによるカーボンクレジット(CO2削減or吸収量を信用取引に利用する制度)に社会が注目。「e-kakashi」によって森林や農地のCO2吸収量が数値化できることを利用し、カーボンクレジット市場の活性化を目的とした「NCCC」に参画も果たしました。

ソフトバンクが注力する5つの事業分野

幅広い分野で活躍するソフトバンクですが、とくに注力している事業分野が5つ存在しています。

  • モビリティ(自動車)
  • ロケーション(位置情報)
  • ヘルスケア(健康)
  • エネルギー(資源)
  • セキュリティ(防犯)

最先端のテクノロジーと累積データを利用したDX化を組み合わせ、多種多様な新規事業で結果を残しています。また既存事業で獲得した顧客に対し、各種サービスを連動させている点も特徴です。

本記事ではソフトバンクが展開する5つの事業分野について、事例を参考にしながら詳しく解説します。

モビリティ

「モビリティ」は自動送迎や運転アシストを中心にした事業分野です。遠隔監視による運航情報や交通情報にも力を入れており、交通状況に沿った移動手段の最適化に貢献しています。

  • 観光バス
  • 送迎車両
  • 貨物車両

渋滞を回避しながら目的地に自動ガイドし、オペレーションの負担軽減に貢献。通信速度の高速化により、リアルタイム管理も可能となりました。

また交通課題として挙げられる高齢者の移動手段確保にも注力。利用者の事前予約によって運航スケジュールを決定できる「デマンド交通」を積極的に採用し、交通手段のDX化に貢献しています。

地方自治体での需要も高まり、外出が難しい高齢者への行政サービス支援にも着手。マイナンバーカードの作成補助や、来庁しなければ行えない手続きの外出サポートに活用されるシーンも増えています。

ソフトバンクのモビリティ事業サービス

ロケーション

「ロケーション」は衛星から取得した位置情報を活用した事業分野です。通信速度の向上によって多くの情報が受信し、リアルタイムでも精確な位置情報が取得可能になりました。

コロナによるテレワークを余儀なくされ、リモートワークを中心とした作業形態に切り替える企業も増加。比例するようにコワーキングスペースの利用者も増え、空き物件を有効活用したサービスの需要も増しています。

AIを活用したタクシー配車サービス「DiDi」や、宿泊施設とホテル利用者を対象としたマッチングアプリ「Tabist」など、位置情報と稼働状況を連動させたサービスを展開しています。

ソフトバンクのロケーション事業サービス

ヘルスケア

「ヘルスケア」は健康状態のデジタル化に注力した事業分野です。コロナ禍による医療業界の負荷を軽減するべく、事務作業のDX化を中心に事業を展開しています。

  • 医師
  • 看護師
  • 薬剤師

専門知識を持つ医療従事者に24時間体制で相談できる「HELPO」など、予約や受診に掛かる負担を軽減するサポートを提供。受付業務や会計業務の負荷を軽減し、医療従事者と診察者から高い評価を得ています。

煩雑な処理をデジタル化することで、人材不足で悩む医療業界の工数削減に貢献。保険控除や医療報酬などを考慮した自動処理など、今後もDX化の加速が予測されます。

ソフトバンクのヘルスケア事業サービス

エネルギー

「エネルギー事業」は環境に考慮したクリーンエネルギーの供給を目的とする事業分野です。

スマホサービスと提携可能な「おうち電気」など、既存事業を活かした戦略も特徴といえるでしょう。

近年SDGsによって再生可能エネルギーが注目され、資源不足が社会全体で深刻な課題に。ソフトバンクでは太陽光や風力などの自然エネルギーを変換し、CO2を排出しないエネルギー作りにも注力しています。

個人契約だけでなく、商業施設向けの法人契約も可能。環境問題への取り組みを企業ステートメントとして掲げている企業も多く、クリーンエネルギーに需要が生まれ始めています。

またソフトバンクの通信事業サービスと連動させることで、他社には出せないメリットが生まれる点も強みです。既存事業の展開力を活かし、新規事業の主軸を構築した事例といえるでしょう。

ソフトバンクのエネルギー事業サービス

セキュリティ

「セキュリティ」はDX化によって増加した機密データの保護を目的とした事業分野です。機密情報が紙面保存から電子保存に移り変わり、デジタル情報の重要性も増加傾向に。

デジタルデータをシステムに連動させることで業務効率化が図れる反面、サイバー攻撃による犯罪行為も巧妙化。ハッキングやウイルス攻撃をいち早く検知し、未然に防ぐセキュリティ事業への関心が高まっています。

  • ウイルスの侵入を防ぐ「入口対策」
  • 侵入を許してしまった場合に攻撃させない「出口対策」

上記の観点からサイバー攻撃への対策を練り、企業のPC端末や社内ネットワークを外部から保護します。DX化によってデジタル化が進む中、比例するように注目が集まっている事業分野といえるでしょう。

ソフトバンクのセキュリティ事業サービス

ソフトバンクの新規事業が持つ強み

ソフトバンクの新規事業には2つの強みが存在します。

  • 既存サービスによる顧客接点が深い
  • グループ会社や投資先との協働

いくつかの事業事例からも分かるとおり、既存事業を活用して新規事業の立ち上げの安定化に繋げています。また大手企業の資金力とネットワークにより、先進的な技術を積極的に取り入れている点も特徴です。

企業が持つ影響力を活用した「強者の戦略」を実施しており、事業拡大のお手本といえるでしょう。そこで本記事では、ソフトバンクが持つ強みについて具体的に解説します。

既存サービスによる顧客接点が深い

既存の通信サービス利用者を筆頭に、盤石ともいえる国内有数のユーザー基盤を確立。ブランド利用者との顧客接点が深いため、既存事業と提携させたサービス戦略が強みといえます。

  • ソフトバンク
  • ワイモバイル
  • ラインモ

格安SIMを利用しているユーザーも多く、既存事業での地盤形成が新規事業の安定につながっています。無理して事業拡充を図るのではなく、基盤を固めながら徐々に規模を広げています。

また大手企業との取引実績による権威性も高く、新規事業の立ち上げ初期から広範囲のユーザーや企業と接触できる点もポイントです。

グループ会社や投資先との協働

事業拡大で得た資金を元手に、ユニコーン企業(上場してない優秀なベンチャー企業)などに投資。他社から最先端テクノロジーやビジネス手法を吸収することで、スピーディーな新規事業立ち上げが可能に。

新規事業で多種多様なニーズに答えようとした結果、機能が煩雑化して使いにくくなることも珍しくありません。ソフトバンクは他社の知識やノウハウを吸収することで、土台のしっかりしたビジネスを作り上げています。

自社の研究開発にコストを掛けず、他社と協業してオープンイノベーションを図ることも選択肢の一つといえるでしょう。

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大手企業の新規事業にもDX化の波がきている

ソフトバンクの新規事業はDX化に関連した分野が多く、社会全体でもデジタル化の波が押し寄せていることが分かります。

  • ITを駆使したDX化によって新規事業を続々と展開
  • 幅広い事業分野でデジタル化が普及している
  • 顧客接点と資金力を活かした強者の戦略で市場を拡大

蓄積したデータを既存システムと連動させることで、業務の自動化に成功している事例も数多く存在します。斬新で未知のアイデアばかりが新規事業になるわけではなく、ちょっとした工夫がビジネスの種になることも珍しくありません。

加速するDX化に戸惑いを隠せない事業もある反面、時代の変化に対応してビジネスチャンスを掴む可能性も充分考えられます。ソフトバンクで発足した新規事業の事例から学び、起業のきっかけにして頂ければ幸いです。

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