新規事業開発は、限られた予算のなかで目標達成を求められます。なかには予算不足のためにコストの安い代替案への切り替えを検討せざるをえないケースもあるでしょう。そんな時、開発の大きな手助けになるのが、支援金や補助金の存在です。
この記事では、新規事業開発で使える支援金・補助金を5つ紹介します。また、支援金・補助金を利用するメリット・デメリットについても解説します。ぜひ最後までご覧ください。
新規事業開発で使える支援金・補助金5選
新規事業開発で使える支援金・補助金は、おもに以下の5つです。
- 小規模事業者持続化補助金
- ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金
- 事業再構築補助金
- 事業承継・引継ぎ補助金
- IT導入補助金
それぞれ順番に解説します。
小規模事業者持続化補助金
小規模事業者持続化補助金とは、小規模事業者が自社の持続的な経営に向けた、業務改善計画を支援する制度です。販路拡大や従業員への待遇改善などに加え、新規事業開発も取り組みに含まれます。公募の期間が設定されており、締め切りの期限までに必要書類を揃えて申請します。
取り組み別の補助率と上限金額は、以下の表のとおりです。
補助率 | 補助上限 | |
通常枠 | 2/3 | 50万円 |
賃金引き上げ枠 | 2/3 (赤字業者は3/4) | 200万円 |
卒業枠 | 2/3 | 200万円 |
後継者支援枠 | 2/3 | 200万円 |
創業枠 | 2/3 | 200万円 |
インボイス枠 | 2/3 | 100万円 |
小規模事業者持続化補助金の対象者は、以下の4つの要件を全て満たした者とされています。
- 商工会地域の小規模事業者等
- 資本金又は出資金が5億円以上の法人に直接又は間接に100%の株式を保有されていないこと(法人のみ)
- 確定している(申告済みの)直近過去3年分の「各年」又は「各事業年度」の課税所得の年平均額が15億円を超えていないこと
- 以下①②の事業において、本補助金の受付締切日の前10か月以内に、先行する受付締切回で採択を受けて(※)、補助事業を実施した(している)者でないこと(共同申請の参画事業者の場合も含みます)。
- ①「令和元年度補正予算 小規模事業者持続化補助金<一般型>」
- ②「令和2年度第3次補正予算 小規模事業者持続化補助金<低感染リスク型ビジネス枠>」
このうち「小規模事業者」の定義とは、以下の表の要件を満たす
- 個人事業主
- 法人
- 特定非営利法人
となっています。
常時使用する従業員の数 | |
商業・サービス業(宿泊業・娯楽業除く) | 5人以下 |
宿泊業・娯楽業 | 20人以下 |
製造業・その他 | 20人以下 |
申請方法
小規模事業者持続化補助金の申請方法は「電子申請」もしくは「郵送」です。
申請前の準備として「応募時提出資料・様式集」に記載のある必要書類を用意し、以下を地域の商工会・商工会議所窓口に提出の上、「事業支援計画書」の作成・交付を受ける必要があります。
- 「経営計画書」および「補助事業計画書」の写し
- 希望する枠や加点等に関する書類など
申請後、有識者の審査を経ておおむね2〜3ヶ月程度ですべての申請者の結果が通知されます。なお審査結果は事務局のホームページでも確認できます。
ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金
ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金(ものづくり補助金)とは、インボイス制度や賃上げといった制度変更に対して、中小企業や小規模事業者を支援する制度です。
申請の対象者は、以下3つの要件を満たす3〜5年の事業計画を作成・実施する中小企業や小規模事業者です。
- 付加価値額の年率3%以上向上
- 給与支給総額の年率1.5%以上向上
- 事業場内最低賃金を地域別最低賃金30円以上向上
引用:ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金|経済産業省
補助金の上限額は、応募枠によって異なります。詳細は下記の表をご覧ください。
一般型・グローバル展開型 | 中小企業1/2、小規模事業者等2/3 |
ビジネスモデル構築型 | 大企業1/2、大企業以外2/3 |
その他の特別型 | 公募要領をご確認ください |
参考:ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金|経済産業省
申請方法
ものづくり補助金の申請方法は「電子申請」のみです。公募期間中にシステムで申請書類を提出し、審査を経て採択先が決定されます。交付決定の通知後は新規事業開発に取り組み、終了後に事業の成果を報告します。
また、事業が終了してから5年間は、毎年の成果報告をすることが要件のひとつです。
事業再構築補助金
企業の業態の転換、新分野開拓などを支援する制度が「事業再構築補助金」です。申請条件として、下記3点をすべて満たす事業者であることが求められます。
- 2020年4月以降の連続する6か月間のうち、任意の3か月の合計売上高が、コロナ以前(2019年又は2020年1〜3月)の同3か月の合計売上高と比較して10%以上減少していること。※
- 事業計画を認定経営革新等支援機関や金融機関と策定し、一体となって事業再構築に取り組む。
- 補助事業終了後3〜5年で付加価値額の年率平均3.0%(一部5.0%)以上増加、従業員一人当たり付加価値額の年率平均3.0%(一部5.0%)以上増加の達成。
※上記を満たさない場合には、次の項目を満たすことでも申請可能。
2020年4月以降の連続する6か月間のうち、任意の3か月の合計付加価値額が、コロナ以前の同3か月の合計付加価値額と比較して15%以上減少していること。
事業再構築補助金は他の補助金に比べて、従業員数によって補助額の変動幅が大きいことが特徴です。ここでは通常枠の場合の補助額を、下の表で解説します。
従業員数20人以下 | 100万円~2,000万円 |
従業員数21~50人 | 100万円~4,000万円 |
従業員数51人~100人 | 100万円~6,000万円 |
従業員数101人以上 | 100万円~8,000万円 |
なお補助率は以下のとおりです。
- 中小企業……2/3(6,000万円超は1/2)
- 中堅企業……1/2(4,000万円超は1/3)
申請方法
事業再構築補助金の申請方法は「電子申請」のみです。すべての申請者が「賃上げ計画の誓約書」の提出が必要となり、そのほか応募する枠によって必要書類が異なります。
公募期間の応募締め切りまでに必要書類を提出し、採択の決定後に結果が通知されます。採択されれば補助金の交付申請手続きに進みます。
事業承継・引継ぎ補助金
「事業承継・引継ぎ補助金」は、事業の継承に起因する事業の再編や統合を支援する制度です。令和4年度の予算では、下記3つの事業を対象としています。
- 経営革新事業
- 専門家活用事業
- 廃業・再チャレンジ事業
新規事業開発でも、事業継承の起因となった事象によって、仕分けされる累計が異なります。
たとえば創業支援型の場合、以下2点をいずれも満たす必要があります。
- 事業承継対象期間内における法人(中小企業者)設立、又は個人事業主としての開業
- 創業にあたって、廃業を予定している者等から、株式譲渡、事業譲渡等により、有機的一体としての経営資源(設備、従業員、顧客等)の引き継ぎを受けること
※ 廃業に伴い店舗や設備のみを引き継ぐ等、個別の経営資源のみを引き継ぐ場合は対象外
事業承継・引継ぎ補助金の支援対象となる要件は、以下のとおりほかの制度と比べても細かく規定されています。
- 補助対象者は、日本国内に拠点もしくは居住地を置き、日本国内で事業を営む者であること。
- 補助対象者は、地域経済に貢献している中小企業者等であること。 地域の雇用の維持、創出や地域の強みである技術、特産品で地域を支える等、地域経済に貢献している中小企業者等であること。
- 補助対象者又はその法人の役員が、暴力団等の反社会的勢力でないこと。反社会勢力との関係を有しないこと。また、反社会的勢力から出資等の資金提供を受けている場合も対象外とする。
- 補助対象者は、法令順守上の問題を抱えている中小企業者等でないこと。
- 補助対象者は、事務局から質問及び追加資料等の依頼があった場合は適切に対応すること。
- 補助対象者は、事務局が必要と認めるときは、事務局が補助金の交付申請ほか各種事務局による承認及び結果通知に係る事項につき修正を加えて通知することに同意すること。
- 補助対象者は、補助金の返還等の事由が発生した際、申請その他本補助金の交付にあたり負担した各種費用について、いかなる事由においても事務局が負担しないことをについて同意すること。
- 補助対象者は、経済産業省から補助金指定停止措置又は指名停止措置が講じられていないこと。
- 補助対象事業に係る全ての情報について、事務局から国に報告された後、統計的な処理等をされて匿名性を確保しつつ公表される場合があることについて同意すること。
- 事務局が求める補助事業に係る調査やアンケート等に協力できること。
また対象となる「中小企業者等」とは、中小企業基本法第2条が定める以下の事業者を指します。
業種分野 | 資本金の額又は出資の総額 | 常勤従業員数 |
製造業その他(※1) | 3億円以下 | 300人以下 |
卸売業 | 1億円以下 | 100人以下 |
小売業 | 5,000万円以下 | 50人以下 |
サービス業(※2) | 5,000万円以下 | 100人以下 |
※1 ゴム製品製造業(一部を除く)は資本金3億円以下又は従業員900人以下
※2 ソフトウエア業・情報処理サービス業は資本金3億円以下又は従業員300人以下、旅館業は資本金5千万円以下又は従業員200人以下
申請方法
事業承継・引継ぎ補助金の申請方法は、原則「電子申請」のみです。申請の流れは大まかに以下のとおりです。
- 支援対象の「経営革新等に係る取組」について検討する
- 申請用アカウントを取得する(取得までの目安は1週間程度)
- 「認定経営革新等支援機関」から補助金に係る確認書を取得する
- 交付申請の必要書類を準備する
- オンライン申請フォームから手続きする
特徴は、申請前に「認定経営革新等支援機関」に対して届出をし、補助対象事業者の要件を満たすことを確認しなければならない点です。要件の規定をしっかりと確認し、不備なく申請できる状態を整えておきましょう。
IT導入補助金
IT導入補助金とは、中小企業・小規模事業者等が課題解決のためのITツール導入を支援する制度です。新規事業開発で新しいツールを導入する際に対象になる可能性があります。
支援対象の例は、以下のとおりです。
- ソフトウェア
- クラウドサービス
- ITツールと併用するレジやタブレット
補助率と補助額は、下の表をご覧ください。
補助率 | 補助額 | |
通常枠 | 1/2 | 30〜450万円 |
デジタル化基盤導入枠 | 3/4、2/3 | 5〜350万円 |
申請方法
IT導入補助金の申請方法と流れは、以下のとおりです。
- 「ITツール」と「IT導入支援事業者」の選定
- 申請用アカウント取得
- 交付申請
- 交付決定後、ITツールの契約・支払い
- 実績報告
- 支援金の交付手続き
- ITツール導入の結果報告
IT導入支援事業者とは、企業の経営課題をITツールで解決するための相談先のことです。交付申請用の書類も共同で作る必要があり、二人三脚のパートナーの位置付けになります。
新規事業開発で支援金・補助金を利用するメリット3選
新規事業開発で支援金・補助金を利用するメリットは、以下の3つです。
- 資金繰りに余裕ができる
- 事業計画の精度が高まる
- 対外的な信頼度が高まる
それぞれ順番に解説します。
資金繰りに余裕ができる
企業が新規事業に乗り出す場合は、限られた予算で有力な事業開発を求められます。しかし計画が進むにつれて当初の想定より予算がかかるケースが多いのが現状です。支援金・補助金により資金繰りに余裕ができるのがメリットのひとつといえます。
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事業計画の精度が高まる
支援金・補助金の申請により、事業計画の精度が高まる可能性があります。採択されるためには国や自治体の審査をクリアできる事業計画を用意する必要があり、結果的に事業計画の精度向上につながると考えられるからです。
また申請先とのやり取りのなかで、事業の弱点や見通しが甘い点の指摘を受ける場合もあります。事業のブラッシュアップにおいては、参考になる意見となるでしょう。
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対外的な信頼度が高まる
対外的な視点からも支援金・補助金の利用はメリットがあります。助成金の受給経歴は、国や自治体の審査をクリアした実績として、事業の信頼性を高める効果があるためです。
たとえば、銀行から融資を取り付ける際は事業の信頼性が重要になるため、受給実績のアピールは有効といえるでしょう。融資の取り付けに成功することは、事業拡大の強力な後押しになります。
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新規事業開発で支援金・補助金を利用する際のデメリットと注意点5選
新規事業開発で支援金・補助金を利用する際のデメリットと注意点は、以下の5つです。
- 必ず支援が受けられる保証はない
- 先着順で募集が締め切られる可能性もある
- 支援金は後払いの場合が多い
それぞれ順番に解説します。
必ず支援が受けられる保証はない
支援の枠は限られており、人気の助成金であれば倍率は高まります。そのため助成金ありきで事業計画を立てるのは危険です。
あくまでも支援金・補助金はサポートの位置付けとして捉えておくのが良いでしょう。
先着順で募集が締め切られる可能性もある
支援金・助成金は、それぞれ要件や必要書類が異なり、なかには先着順で募集を締め切る支援制度もあります。そのため募集要項を把握して、公募期間の開始とともに不備なく申請できる準備を整えておく管理体制が重要です。
支援金は後払いの場合が多い
支援金・補助金は事業計画の提出と実績の審査を経て支給されるため、事業に対して基本的に後払い形式です。つまり、まずは事業計画を完遂できる予算計画と、資金が必要だといえるでしょう。
助成金の受け取りまでに資金がショートしないよう、注意しなければなりません。
新規事業開発の支援を受けるならコンサルがおすすめ
新規事業を開発したいけれど、何から始めたら良いかわからない企業や開発担当者は、新規事業開発コンサルを受けるのがおすすめです。コンサルを受けると、以下の項目についてトータルでサポートを受けられます。
- アイデア出し・テーマ選定
- 市場調査
- ビジネスモデルの検討
- 事業計画書の作成
- 事業の立ち上げ
- 組織強化
なかには「コンサルを依頼するほど予算に余裕がない」と考える方もいるかもしれません。
しかし、コストカットについても適切なアドバイスがもらえるとともに、社内のリソースを有効活用できるため、結果的に人件費が抑えられる可能性もあります。また、事業計画のプロとともに計画することで事業の失敗パターンを防げる効果も期待できます。
まずは無料相談で、ビジネスモデルや事業の方向性をチェックしてもらうと良いでしょう。
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まとめ
新規事業開発には、さまざまな支援制度が用意されています。
金銭的な支援以外にもメリットがあるため、積極的に活用してみましょう。
また事業の方向性に悩む方は、新規事業開発のコンサルを依頼するのもおすすめです。
事業にあった支援制度を利用して、新規制度をさらに後押ししてみませんか。
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