2021年から2022年にかけて、投資家の間ではWeb3に関する話題は大いに盛り上がりを見せていたが、2022年末にはこの新しい分野への関心が大きく冷え込んだと、Crunchbase NewsのChris Metinko氏(※https://news.crunchbase.com/news/author/chris-metinko/)は述べている。
ベンチャーキャピタルの投資は世界的に大幅な後退が見られ、投資家がより成熟した実績ある産業に目を向けていることを考えれば、市況軟化は珍しいことではないと推測される。
しかしながら、さらなる原因として暗号資産市場の冷え込み(暗号資産冬の時代)やデジタル資産市場の不安定さを無視することはできず、最近のFTX破綻ニュースをきっかけに、さらに悪化する可能性もあるようだ。
Crunchbaseのデータによると、2022年最終四半期は、前年の同四半期と比較すると74%の資金が減少し、93億ドルからわずか24億ドルにまで急落したことから、最も厳しい時期であると言える。また、2020年の第4四半期に約10億ドルがスタートアップに提供されて以降では、四半期として過去最低を記録した。
四半期ごとのベンチャーキャピタルが支援するWeb3スタートアップへの資金
昨年は取引件数が期を追うごとに減少していき、2022年の第4四半期には、この分野への投資は、明らかな下落傾向となった。2022年のディールフローも四半期ごとに減少し、第1四半期は677件という驚異的な数字だったのに対し、第4四半期はわずか327件の資金調達の取引であったという。
Web3分野では、2021年第4四半期は1億ドル以上のラウンドが20件あったのに対し、2022年の第4四半期でラウンドを発表したのはAmber Group、Matter Labs、Uniswap、Mineplexの4社のみであった。
2021 vs. 2022
ベンチャーキャピタル(VC)が支援するWeb3のスタートアップ企業の資金調達額は、2021年の過去最高額292億ドルに対し2022年は約215億ドルと、約4分の1減少した。
年度別のベンチャーキャピタルが支援するWeb3スタートアップへの資金
取引件数は約100件減少したものの、昨年とほぼ同じ水準で推移した。しかし、FTX、NYDIG、Robinhoodが10億ドル以上を調達した2021年とは対照的に、2022年は同規模の資金調達ラウンドは見られなかった。
Crunchbaseのデータによると、2022年の最大規模の資金調達ラウンドは以下の通り。
- ConsenSys(米国 ニューヨーク州ブルックリン)
2021年11月の2億ドル調達からわずか4ヶ月で、4億5000万ドルを調達し、評価額は70億ドルに。同社はブロックチェーンソフトウェア技術企業で、イーサリアムネットワーク上で動作する分散ソフトウェアを開発し、開発者や企業によるWeb3上での構築を実現。
- Polygon Technology (インド)
イーサリアムブロックチェーンのためのプラットフォームを開発。4.5億ドルの調達を行い、評価額は130億ドル。
- Yuga Labs(米国 マイアミ)
「Bored Ape Yacht Club(BAYC)」を手掛けた企業としてよく知られているアメリカのNFT(代替不可能なトークン)制作スタジオ。4億5000万ドルの資金調達で評価額は40億ドル。
全体として、2021年にベンチャーキャピタルが支援するWeb3スタートアップに行われた2億ドル以上のラウンドは30件あったものの、昨年は25件にとどまっている。
Web3の終焉?
Web3 の資金調達の総取引件数、特に現在の下降傾向から、「Web3 の流行」は終わったと結論づけるのは簡単だが、ベンチャー企業全体を見ることも重要である。ベンチャーキャピタルの投資抑制を見ると、多くの投資家が求めているのは新しい分散型アプリケーションやデジタル資産取引所はなく、実績のある産業である。
これに対しWeb3は比較的新しく、SaaSやエンタープライズ・ソフトウェア、従来のフィンテックといった分野ほど熟知されていないことが、昨今の不確実性の時代において多くの投資家が尻込みしてしまう原因となっている。
暗号資産冬の時代とその市場の不安定さも、間違いなくその要因であり、ベンチャーキャピタルがこの分野に資金を投入していた頃、ビットコインは7万ドル近い高値を記録していたが、今や暗号通貨指数はスタートアップ史上最大の暴落をした。
今年はその行方を見守ることとなり、FTXの破綻により暗号資産セクターの良いものと悪いものを区別し、投資家に分散型とWeb3全体に対する信頼をもたらす可能性もある一方で、多くのWeb3スタートアップ企業にとって危険な始まりになるかもしれないとChris Metinko氏は述べている。