長期的な需要成長に期待

ブルームバーグNEF(BNEF)の最新リサーチリポート「カーボンオフセット長期見通し」では、脱炭素化目標達成のために発行されるカーボンクレジットの総額が、およそ15年後には1兆ドルに達する可能性があると述べている。しかし、ボランタリーのカーボン市場(二酸化炭素排出量1トン相当の認証付き排出権を取引するもの)については、まだ問題が多そうである。基準の厳正化や炭素除去への関心の高まりにより、市場の信頼性が上がることで価格も上昇し、結果的に需要増加につながると述べている。

同リポートの分析結果では、昨年のオフセット市場はメディアや投資家からの批判を受け伸び悩んだと評した。昨年の企業のオフセット購入量はわずか1億5500万トンと、前年比マイナス4%であったが、その要因は低品質のクレジットを購入することによる風評被害のリスクを意識したことだ。環境への悪影響が懸念されるプロジェクトからオフセットを購入した企業が「上辺だけだ」と非難される例もある。

BNEFの本リポートの筆頭執筆者カイル・ハリソン(サステナビリティ分析の部門長)は、現在のオフセット市場は品質の低さから墓穴を掘っているとし、買い手は透明性や明確な品質定義などを求めているため、このままでは2022年と同水準が続くと指摘している。

BNEFの考える三つのシナリオ

BNEFでは2050年までのカーボンオフセットの需要供給および価格を、以下の3パターンのシナリオごとにモデル化した。各シナリオによって価格が異なるが、いずれにおいても需要は増加が見込まれ、その増加率はそれぞれ異なる。

  • ボランタリー市場シナリオ:企業が狙うネットゼロ目標達成のため市場は常に供給過剰となる。2030年のオフセット価格は1トン=12ドル、2050年にはその3倍に上昇、企業は環境価値が疑わしくも購入せざるをえなくなる。このシナリオでの2030年市場規模は年間150億ドルと予想、現在想定している市場規模20億ドルからの増加が見込まれる。
  • 炭素除去シナリオ:発行されるオフセットは、大気からの炭素除去を達成した企業のみが考慮され、森林減少の防止やクリーンエネルギーに関するプロジェクトは除外。これにより需給バランスはさらに逼迫される。このシナリオではDAC(ダイレクト・エア・キャプチャー:炭素を直接除去する技術)の投資にコストがかかるため、市場は一時的に供給不足が予想される。カーボンオフセット価格は1トン=250ドル超を想定、年間市場規模は約1兆ドルに達する可能性がある。
  • 市場を2つに区分する分岐シナリオ:1つは規模が小さく流動性の低い高品質オフセット市場、もう1つは残りの低品質のオフセットを取引する市場に分けるシナリオで、これにより企業や投資家は投資先のオフセット選定に基準を持ちやすくなる。高品質オフセットの価格は、2039年に1トン=38ドルでピーク達成後、2050年には1トン=32ドルまで下落すると予想、一方で低品質オフセットの価格は2050年では1トン=22ドルと予想される。

BNEFは、毎月オフセット需給の実績データと、年に1度のオフセットの長期見通しを更新し発表している。

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