「新規事業を始めたいけど、資金が不足している…」

「融資ではない形で新規事業の資金を調達したい!」

このようなお悩みを抱えている経営者・担当者の方は少なくないでしょう。仮に融資に成功したとしても、将来の返済負担で経営がひっ迫してしまうことも。

そこでぜひ活用してもらいたいのが、公的機関・大手企業が実施している新規事業支援です。新規事業支援を活用することで、新規事業に必要な資金を調達できます。

本記事では新規事業支援について、概要やメリット、支援の種類などを詳しく解説します。新規事業の資金調達でお困りの方はぜひ最後までご覧ください。

新規事業支援とは

新規事業支援とは、国や地方自治体、公的機関、大手企業が実施している新規事業に対する支援制度です。新規事業を始めたい企業・事業主に対して、資金の給付を行ったり、各種設備の導入支援などを実施します。

近年はIT・DX関連の支援、またバイオテクノロジー・環境テクノロジーなどに対する新規事業支援が多く見られます。特定の事業内容に限定せず、幅広い業種に対して支援を行う機関も多いため、自社が取り組む新規事業の内容に合わせて最適な支援元を選びましょう。

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新規事業支援を活用するメリット

新規事業支援を活用するメリットとして、下記の4点が挙げられます。

・資金を返済する必要がない
・自社の収入として扱える
・規模の大きい新規事業をスタートできる
・新規事業の内容を評価してもらえる

資金を返済する必要がない

新規事業支援で給付された資金は返済の必要がありません。融資に比べて資金ショートのリスクが低く、やはり安定した状態で新規事業に投資できるのは大きな魅力でしょう。

金融機関からの融資だと、融資金額に加えて利子分の金額を返済しなければなりません。新規事業が軌道に乗れば返済も問題なく行えますが、収支のバランスが取れないままだと返済の負担が大きく、新規事業から撤退しなければならないケースも。

しかし、新規事業支援として資金面での援助が受けられれば、返済リスクや資金ショートの不安を払拭できるため、安心して事業の展開に注力できます。

自社の収入として扱える

新規事業支援で給付された資金は、自社の収入として扱えることが多いです。何らかの補助金・給付金を活用するとしても、用途が限定されていないケースが多く、会社の資金と同じく自由に利用できます。

経費として認められるものにしか資金を投下できない、という状況では、新規事業にかかるコストの全てが賄えるとは限りません。ある程度の柔軟さが担保されている新規事業支援を活用すれば、新規事業を成功へ導きやすくなるでしょう。

規模の大きい新規事業をスタートできる

規模の大きい新規事業をスタートできる点も、新規事業支援の強みです。

これまで資金的に実施できなかった規模の新規事業でも、新規事業支援で資金を確保できればチャレンジしやすくなります。事業規模ごとに応募区分が分かれている新規事業支援もあるので、実施したい新規事業の規模に合わせて利用する支援内容を選択しましょう。

新規事業の内容を評価してもらえる

新規事業の内容を客観的に評価してもらえる点も新規事業支援のメリットです。新規事業支援を申請・利用する際は、支援を実施する公的機関や企業が事業内容を審査し、支援対象としてふさわしいか否かをチェックします。

支援したい新規事業として採択されれば、新規事業の内容やスケーラビリティに魅力があったと言えます。言い換えれば、第三者から客観的な視点で新規事業の内容を評価してもらいたい際に、新規事業支援に申し込むのもおすすめです。

新規事業支援を受ける方法

次に新規事業支援を受ける方法について確認していきましょう。新規事業支援を受ける方法は、大きく下記の3つです。

・新規事業助成金を活用する
・企業の新規事業支援を活用する
・公的機関から新規事業支援を受ける

新規事業助成金を活用する

新規事業支援を受ける方法として、経済産業省や中小企業庁、地方自治体が提供している新規事業助成金の利用が挙げられます。

国・地方自治体としても、新規創業や開業を支援したいと言うのが本音。新規事業を行う企業に対し、新規事業助成金を通じて積極的に支援し、競争力の強化を目指しているのです。新規事業助成金の代表的な種類には、下記の4つが挙げられます。

・創業助成金
・小規模事業者持続化補助金
・ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金
・IT導入補助金

それぞれ詳しく見ていきましょう。

<創業助成金>

創業助成金は、東京都中小企業振興公社が提供している新規事業支援。創業助成金の受給者は、東京都内で創業を予定している事業者の方、また創業から5年未満の中小企業者が対象です。創業助成金の概要は下記のとおり。

受給要件「TOKYO創業ステーションの事業計画書策定支援修了者」「東京都制度融資(創業)利用者」「都内の公的創業支援施設入居者」等
助成対象期間交付決定日から6か月以上2年以下
助成限度額100万円~300万円
助成率助成対象と認められる経費の2/3以内
助成対象経費賃借料、広告費、器具備品購入費、産業財産権出願・導入費、専門家指導費、従業員人件費

要件を満たしていれば、基本的に事業内容については問われません。東京都内で創業を予定されている方は、ぜひ創業助成金を活用してみてください。

<小規模事業者持続化補助金>

小規模事業者持続化補助金は、日本商工会議所が提供する新規事業支援です。地域の商工会・商工会議所の助言等を受けて経営計画を作成し、その計画に沿って販路開拓等を行う際にかかる費用の2/3を補助してもらえます。

支援対象者は「小規模事業者」です。日本商工会議所は、小規模事業者を下記のように定義しています。

業種人数(常勤)
商業・サービス業(宿泊・娯楽業除く)5人以下
サービス業のうち宿泊業・娯楽業20人以下
製造業その他20人以下

「商業・サービス業」「宿泊業・娯楽業」「製造業その他」の内容に関しては、下記のとおりに商工会議所が定義しています。

区分内容
商業・サービス業・他者から仕入れた商品を販売する(=他者が生産したモノに付加価値をつけることなく、そのまま販売する)事業
・在庫性・代替性のない価値(=個人の技能をその場で提供する等の流通性がない価値)を提供する事業
※自身で生産、捕獲・採取した農水産物を販売するのは「商業・サービス業」ではなく「製造業その他」に分類
宿泊業・娯楽業・宿泊を提供する事業(また、その場所で飲食・催事等のサービスを併せて提供する事業も含む)<日本標準産業分類:中分類75(宿泊業)>
・映画、演劇その他の興行および娯楽を提供する事業、ならびにこれに附帯するサービスを提供する事業<日本標準産業分類:中分類80(娯楽業)>
製造業・自者で流通性のあるモノ(ソフトウェアのような無形の商品や無形の価値を含む)を生産する事業 
・他者が生産したモノに加工を施したりするなどして、更なる価値を付与する事業(在庫性のある商品を製造する事業)
その他「商業・サービス業」、「宿泊業・娯楽業」、「製造業」の定義に当てはめることが難しい事業(建設業、運送業等)や、区分が異なる複数の事業を営んでいるなど判断が難しい事業

(引用元:https://r1.jizokukahojokin.info/index.php/%E6%8C%81%E7%B6%9A%E5%8C%96%E8%A3%9C%E5%8A%A9%E9%87%91%E3%81%A8%E3%81%AF/

小規模事業者の要件に該当する場合は、お近くの商工会・商工会議所に相談して補助金の申請ができます。業種による受給制限がないため、かなり広く門扉が開かれている点も小規模事業者持続化補助金のメリットといえるでしょう。

<ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金>

ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金は、中小企業庁と独立行政法人中小企業基盤整備機構が実施している新規事業支援です。中小企業・小規模事業者等が取り組む革新的なサービス開発や試作品開発、生産プロセスの改善に向けた設備投資などを支援します。

補助金の対象となるのは下記の企業・事業者です。

・資本金又は従業員数(常勤)が下表の数字以下となる会社又は個人であること。

業種資本金常勤従業員数
製造業、建設業、運輸業、旅行業3億円 300人
卸売業1億円100人
サービス業(ソフトウェア業、情報処理サービス業、旅館業を除く)5,000万円100人
小売業5,000万円50人
ゴム製品製造業(自動車又は航空機用タイヤ及びチューブ製造業並びに工業用ベルト製造業を除く)3億円900人
ソフトウェア業又は情報処理サービス業3億円300人
旅館業5,000万円200人
その他の業種(上記以外)3億円300人

また、ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金は支援対象によって「通常枠」「回復型賃上げ・雇用拡大枠」「デジタル枠」「グリーン枠」「グローバル展開型」の5つに分かれています。各種類の概要・補助金額・補助率・対象経費は下記の通りです。

(通常枠)

項目要件
概要革新的な製品・サービス開発又は生産プロセス・サービス提供方法の改善に必要な設備・システム投資等を支援
補助金額従業員数 5人以下 :100万円~750万円 6人~20人:100万円~1,000万円 21人以上 :100万円~1,250万円
補助率小規模企業者・小規模事業者:1/2再生事業者:2/3
設備投資単価50万円(税抜き)以上の設備投資が必要
補助対象経費機械装置・システム構築費、技術導入費、専門家経費、運搬費、クラウドサービス利用費、原材料費、外注費、知的財産権等関連経費

(回復型賃上げ・雇用拡大枠)

項目要件
概要業況が厳しいながら賃上げ・雇用拡大に取り組む事業者が行う、革新的な製品・サービス開発又は生産プロセス・サービス提供方法の改善に必要な設備・システム投資等を支援
補助金額従業員数 5人以下 :100万円~750万円 6人~20人:100万円~1,000万円 21人以上 :100万円~1,250万円
補助率2/3
設備投資単価50万円(税抜き)以上の設備投資が必要
補助対象経費機械装置・システム構築費、技術導入費、専門家経費、運搬費、クラウドサービス利用費、原材料費、外注費、知的財産権等関連経費

(デジタル枠)

項目要件
概要DX(デジタルトランスフォーメーション)に資する革新的な製品・サービス開発又はデジタル技術を活用した生産プロセス・サービス提供方法の改善による生産性向上に必要な設備・システム投資等を支援
補助金額従業員数 55人以下 :100万円~750万円 6人~20人:100万円~1,000万円 21人以上 :100万円~1,250万円
補助率2/3
設備投資単価50万円(税抜き)以上の設備投資が必要
補助対象経費機械装置・システム構築費、技術導入費、専門家経費、運搬費、クラウドサービス利用費、原材料費、外注費、知的財産権等関連経費

(グリーン枠)

項目要件
概要温室効果ガスの排出削減に資する革新的な製品・サービス開発又は炭素生産性向上を伴う生産プロセス・サービス提供方法の改善による生産性向上に必要な設備・システム投資等を支援
補助金額従業員数 5人以下 :100万円~1,000万円 6人~20人:100万円~1,500万円 21人以上 :100万円~2,000万円
補助率2/3
設備投資単価50万円(税抜き)以上の設備投資が必要
補助対象経費機械装置・システム構築費、技術導入費、専門家経費、運搬費、クラウドサービス利用費、原材料費、外注費、知的財産権等関連経費

(グローバル展開型)

項目要件
概要海外事業の拡大・強化等を目的とした「革新的な製品・サービス開発」又は「生産プロセス・サービス提供方法の改善」に必要な設備・システム投資等を支援(①海外直接投資、②海外市場開拓、③インバウンド市場開拓、④海外事業者との共同事業のいずれかに合致するもの)
補助金額1,000万円~3,000万円
補助率1/2(小規模企業者・小規模事業者は2/3)
設備投資単価50万円(税抜き)以上の設備投資が必要
補助対象経費機械装置・システム構築費、技術導入費、専門家経費、運搬費、クラウドサービス利用費、原材料費、外注費、知的財産権等関連経費、海外旅費

(引用元:https://portal.monodukuri-hojo.jp/common/bunsho/ippan/13th/reiwakoubo_20221025.pdf)

ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金は、他の支援制度と比較して補助金額が高く設定されています。大規模な新規事業を始めたい際に最適と言えますね。対象となる事業ごとに要件が異なるので、利用時は新規事業の内容を把握した上で申請しましょう。

<IT導入補助金>

IT導入補助金は、独立行政法人中小企業基盤整備機構が実施しているITツールの導入を対象とした事業支援です。具体的には、下記の3つの枠に分類されます。

枠の種類概要
通常枠(A・B型)ITツールの導入を広く補助
セキュリティ対策推進枠サイバー攻撃対策などを目的としたサービス利用料を補助
デジタル化基盤導入枠(デジタル化基盤導入類型)会計ソフト・受発注ソフト・決済ソフト・ECソフトの経費の一部を補助

また、IT導入補助金の対象者は下記の通りです。

業種・組織形態資本金(資本の額又は出資の総額)従業員数(常勤)
製造業、建設業、運輸業3億円300人
卸売業1億円100人
サービス業(ソフトウエア業、情報処理サービス業、旅館業を除く)5,000万円100人
小売業5,000万円50人
ゴム製品製造業(自動車又は航空機用タイヤ及びチューブ製造業並びに工業用ベルト製造業を除く)3億円900人
ソフトウエア業又は情報処理サービス業3億円300人
旅館業5,000万円200人
その他の業種(上記以外)3億円300人

※小規模事業者の場合は、下記の従業員数が要件として適用されます。

業種従業員数(常勤)
商業・サービス業(宿泊業・娯楽業除く)5人以下
サービス業のうち宿泊業・娯楽業20人以下
製造業その他20人以下

(引用元:https://www.it-hojo.jp/overview/

IT導入補助金の具体的な対象経費は下記の3種類。

・ソフトウェア購入費
・クラウド利用料
・導入関連費

※デジタル化基盤導入枠(デジタル化基盤導入類型)は上記に加えハードウェア購入費も対象になります。

また、IT導入補助金の各枠ごとの金額は下記の通りです。

枠種別補助金額補助率
通常枠(A型類)30万円~150万円未満1/2以内
通常枠(B型類)150万円~450万円以下1/2以内
セキュリティ対策推進枠5万円~100万円以下1/2以内
デジタル化基盤導入枠5万円~50万円以下3/4以内

※デジタル化基盤導入枠では、補助率が2/3以内の場合、補助金額が「50万円超~350万円」となります。

ITツールの導入や、近年注目が集まるセキュリティ対策などを実施したい際に活用できるIT導入補助金。要件を満たせば事業所の所在は問われないため、地方で新規事業を始める方でも安心して利用できます。

企業の新規事業支援を活用する

民間企業が実施する新規事業支援を活用するのもおすすめです。大手企業やコンサルタント会社が主導して、新規事業を立ち上げるスタートアップや、他企業の新規事業を支援するプログラムを用意していることも。

企業が実施する新規事業支援は、資金面だけではなく、人的リソースやノウハウといった「実際に不足しがちな要素」をカバーしてもらえることが多いです。経験豊富な大手企業からバックアップを得られれば、新規事業の成功確率を高められます。

企業が取り組む新規事業支援の事例として、ソニーの「Sony Startup Acceleration Program」が挙げられます。Sony Startup Acceleration Programでは、事業創出・組織開発・人材育成の領域においてサポートを受けられるのです。

ソニーの専任アクセラレーターがアイデア創出から事業拡大まで一貫して支援してくれるので、初めて新規事業を立ち上げる方も安心して取り組めるでしょう。

公的機関から新規事業支援を受ける

公的機関から新規事業支援を受けるのも一つの方法です。新規事業の創出・運営をサポートする公的機関は日本国内に多く存在しますが、その中でも有名なのが日本政策金融公庫です。

日本政策金融公庫は、株式会社日本政策金融公庫法に基づいて設立された財務省所管の特殊会社。通常の銀行と同様に融資やローンサービスを提供していますが、公的機関であるため、利益追従ではなく企業や市場の発展に寄与することが目的です。

日本政策金融公庫は、新規事業支援として「新事業育成支援」を実施しています。新しい事業を行う上で必要な設備資金や長期運転資金の融資を受けられるのです。新事業育成支援を受けるためには、下記の要件を満たす必要があります。

・新たな事業を事業化させておおむね7年以内の方

・次のいずれかに当てはまる方

イ:公庫の成長新事業育成審査会から事業の新規性・成長性の認定を受けた方
ロ:独立行政法人中小企業基盤整備機構が出資する投資事業有限責任組合から出資を受けた方
ハ:他企業に利用されていない知的財産権や科学技術・イノベーション創出の活性化に関する法律に定める指定補助金などの交付を受けて開発した技術を利用して新事業を行う方、J-startupプログラムに選定された方など

・日本政策金融公庫 中小企業事業が継続的に経営課題に対する経営指導を行うことにより、円滑な事業の遂行が可能と認められる方

融資の限度額は7億2,000万円、利率の上限は3%と一般の銀行よりも低金利で融資が受けられます。返済期間に関しては下記のとおりです。

設備資金20年以内(据置期間5年以内)
運転資金7年以内(据置期間2年以内)

また、日本政策金融公庫から融資を受けた後は、公庫が経営課題について細かくアドバイスを行ってくれます。資金繰りから事業の成長性に至るまで、多角的な面からアドバイスを受けられるため、初めて新規事業に取り組む方にとっては非常に心強い存在と言えるでしょう。

新規事業支援を活用して事業を円滑にスタート!

新規事業支援を活用すれば、新規事業に必要な資金を無理なく調達できるでしょう。これまで資金不足が理由となって新規事業を実施できなかった企業にとって、新規事業支援は有用な選択肢となります。

また、本記事で紹介したように、新規事業支援は公的機関が実施するものから企業が実施するものまで様々な種類があります。新規事業の内容に合わせて最適な新規事業支援を選択・活用しましょう。

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