Audiの車内メタバースholorideがサービス開始、CARIADが考えるデジタル体験に注目

自動車業界にとってCES（コンシューマー・エレクトロニクス・ショー） 2023の一番の話題となったのは、SDV（Software Defined Vehicle「ソフトウェア定義型自動車」）である。最も注目すべきは、「AFEELA（アフィーラ）」の発表ではあるが、さらにもう一つ、「CARIAD（カリアド）」の発表に着目していきたい。

CES 2023、車内のデジタル体験についての発表

CARIADは、フォルクスワーゲングループの100%子会社であり、ソフトウェア開発を行っている。従業員は4,000人を超える大企業である。CES 2023では、CARIAD が考えるSDVとはどのようなものか、有益な内容が多い講演会を行った。

現在、3講演がYouTubeで公開されている。その中で車内でのゲーム・デジタルUXに関する内容についての解説がある。

イノベーション＆コラボレーション部門の最重要人物である、シュテフェン・ヴァルツ氏の登壇した講演で、CARIADの車内デジタル体験についての考え、車内ゲームやデジタル体験が重要な理由、またサービスを開始したばかりのholoride（ホロライド）はどのようなことができるのかを説明している。

車内ゲーム体験に着目した理由

ゲームについてどのように捉えるかは、世代によってもかなり異なる。

Z世代（ジェネレーションZ）やα世代（ジェネレーションα）にとって、ゲームで得られる体験はリアルでインタラクティブな娯楽である。映画や音楽以上に夢中になることができる最新のデジタル体験だ。

Z世代とα世代はゲームにかなりの時間を費やしており、Z世代に関しては10人中9人が習慣としてゲームをしている。そして、これまで車の同乗者だったこの世代が、今後は車のオーナーやユーザーになることから車内ゲーム体験に着目したというわけなのである。

また、地域によってもゲームの考え方には違いがある。

「すでに中国では、アウディやポルシェで遊べる車内のカジュアルゲームをリリースしています。非常にカジュアルなゲームです。アンドロイドをベースにしたもので、中国でもお客様に喜ばれています。中国においてゲームをすることは、ナンセンスなアクティビティではありません。車の中で過ごす時間を有意義にするためのものです」

フォルクスワーゲンは販売台数の半分以上を中国市場で販売している。そのため、中国市場の動向を重視していることは言うまでもない。

車内メタバースに「holoride」の登場

2019年のCESで、Audi（アウディ）がディズニーと共同で、車内VR体験版のプラットフォームを発表した。このデモ製品の開発にはholorideが関わっていた。4年経過し、ついにholorideのサービスが開始したのである。まずはドイツから、次いで北米・中国にもサービスを広げていくようだ。

holorideのサービスは、車内でVRゴーグルを装着することで、クルマが走るときの加減速・横G・メタバースを連動させ、一体感のあるインタラクティブ体験を与える。メタバースが車の動きに連動するので、他には真似できないリアルな一体感を体験できるというものだ。

シュテフェン・ヴァルツ氏は、次のように説明している。

「乗客は、インタラクティブな体験、ゲーム、教育コンテンツを経験することができます。ゴーグルにレンダリングされたものが、走行、加速、ブレーキ、ハンドルの動きと位置が同期しているのです」

メタバースのほかには、CARIADが注目している車内デジタル体験についても示唆している。BYOD（Bring Your Own Device：自分のデバイスを持ち込む）を検討し、位置情報ゲームや音声を使ったゲームに注目している。音声でナビゲート・ゲーム・クイズといった何かを発見できるインタラクティブなオーディオ体験にも興味を示している。

「車載のデバイスを使ったゲーム、エアコンやアンビエントライトを利用してゲーム体験を拡張し、車内を特別な空間として使うこともできます。また車内でのカジュアルゲームについては、まもなく導入する予定です」

これらは、単なるスマホゲームだけでなく、移動していることや周辺機器など、車内の特性を利用したデジタル体験を示している。

シュテフェン・ヴァルツ氏は、そういったアイデアを持った、サードパーティーのゲーム開発者に対して歓迎の意を込めてこう言っている。

「質の高いコンテンツを持っていて、車内や移動中にしかできないユニークな体験を生み出すことに本当に興味があるのなら、また、良質なコンテンツのカタログをお持ちの方は、ぜひ私に会いに来てください」