日本IBMによるレポート発表
このレポートは、メタバースの市場分析や役割、メタバース・サービス提供者に向けた提言をまとめたものである。主にB2B (B to B=Business to Business)、およびB2B2C(B2B2C=Business to Business to Consumer)領域において、取り組みの方向性を示している。
IBM Institute for Business Value(IBV)が行った調査から、メタバース・サービスを検討・実施事業者やその協力会社、ユーザーとなる企業を対象とする。
また2022年9月、全国15歳以上の男女を対象に、国内の個人消費者のWebアンケート調査を実施。B2C(B to C=Business to Customer)領域の個人に対して、メタバースの受け入れやすさ、顧客自身の中で明確化されていないニーズなどの分析・探求結果を紹介している。
メタバースの構成要素にVR、AR、MRを定義するとともに、メタバースの役割を次の3つの視点から考察している。
ユーザーの課題とニーズに応えるメタバースの役割
- 「コミュニケーション」と「コミュニティー」の向上
対面・文字・音声・ビデオ通話という4つのコミュニケーションにおいて、伝えたいことがうまく表現できないことや、扱える情報が限られていることを問題視している。アバターの感情表現・AR/MR・人間の五感などによる情報の補完という3つの手法でコミュニケーションの向上に努める。
- サービス体験者の実態とサービス提供者のエコシステム拡大
アンケートの結果から、「コンテンツ」と「機器」のどちらが満足度を左右するのかがわかる。
「イベント」「ショッピング」「ゲーム」など満足度が高い上位3つと「コミュニケーション」では、どちらも内容を重視する割合が高い。
また、「教育/訓練」「広告」「観光」「医療/治療」という B2B2Cを中心としたカテゴリーでは、機器の性能や操作性を重視する傾向がある。満足度が低いB2B2Cであっても、コンテンツや機器の向上によって、B2Cに匹敵する満足度を生み出す可能性があると示している。
- 将来に対する個人の期待とB2B 領域での進化
アンケート調査結果から、魅力度ランキング上位のメタバース・サービスが確認できる。
同レポートは、こちらからダウンロード可能となっている。
情報付加機能のメタバース・サービスが魅力的と認識されているようだ。AR/MR に着目したメタバース・サービスにより、「現実世界の生活をより便利かつ快適にすること」に対する需要が高い。それに対して、没入感/パラレルワールドなどのVR技術の機能は、情報付加機能より魅力的だと思われていないことがわかる。
この結果に関して日本IBMでは、2023年は企業のメタバース利用検討が急速に広がり、「エンタープライズ・メタバース元年」になると見込んでいる。そこで、メタバースに取り組むサービス提供者への4つの提言を紹介している。
メタバースのサービス提供者へ4つの提言
- メタバースに限定しない総合的な技術力とエコシステム形成が必須
ITとビジネスの「総合力」を獲得するために、総合的技術ケイパビリティの育成や、幅広いエコシステムの形成が避けられない。
- 「企業の課題解決ありき」の実績が大事
課題解決の実績を持ち、課題解決を行うための1つの選択肢としてメタバースを熟知するパートナーの選定をしなくてはならない。メタバースありきではなく、課題解決ありきの実績が重要となる。
- アジャイル経営の定着、顧客のデジタル組織強化、意識変革が緊急課題
顧客のデジタル組織強化や経営層の意識変革を後押しし、「アジャイル(俊敏な)経営」を定着させ、事業環境の変化へ柔軟な対応・迅速な事業を設立させることが必須となる。
- 課題の解決とサステナビリティー実現の前提は不可欠
メタバースを含めたDXの取り組みを企業と進める上で、コストパフォーマンスだけにこだわらない。さらに、中長期的な視点から、社会課題の解決やサステナビリティーの実現に重点を置いて進めなくてはならない。
日本IBMのメタバース関連の取り組み
日本IBMでは、メタバースへの取り組みを一部紹介している。
- 「コミュニケーション」と「コミュニティー」の観点から見るメタバースの価値
・部門懇親会の実証
・新入社員の入社式をメタバース上で実施
- メタバース体験者の感想とB2B2Cエコシステム拡大
・医療機関の建物を3Dモデルとして再現、病院の様子を体験できる仕組み
・病院外を再現した仮想空間で家族や友人と交流できる仕組み
- 未来への期待とB2Bメタバースの革新
ARやMRを利用した業務効率化、VRを利用したビジネスプロセスのデジタルツイン化などを組み合わせ、ビジネスプロセスや事業モデルの改革を促すことを視野に入れている。
会社概要
- 会社名: 日本IBM(アイ・ビー・エム)株式会社
- 所在地: 東京都中央区日本橋箱崎町19-21
- 会社解説:世界170カ国以上でビジネスを展開。ビジネスコンサルティング、ITシステム導入・運用管理、アウトソーシングなどにおいて、企業変革を実現する支援を行う。
- 設立: 1937年6月17日
- 事業概要: 情報システムに関わるサービス、ソフトウェア、ハードウェア、ファイナンシングの提供。
- URL: http://www.ibm.com/jp/ja/