国内の金融・IT企業など10社が、2023年度内にメタバース(仮想空間)の基盤をつくることで基本合意書を締結したことを発表した。メタバース事業に参入したい企業に開放することで、企業間の相互送客につなげることが目的だ。
国内初のオープン・メタバース
メタバースとは、インターネット上にある仮想空間のこと。ユーザーがアバターを操作することで、現実と同じように他者と交流したり、仮想空間上で商品を購入したりできるというもの。
政府資料によると、メタバースの世界市場は2021年の4兆円から2030年には78兆円に拡大すると予想(※)。 メディアやエンターテインメントを始め、教育や小売りなど様々なビジネスでの活用が期待されている。
(※)総務省|令和4年版 情報通信白書|仮想空間市場など (soumu.go.jp)
https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/r04/html/nd236a00.html
メタバースは大きく『オープン・メタバース』と『クローズド・メタバース』の2種類に分けられる。クローズド・メタバースは、一つのメタバースがそれ自体で完結しており、国内のほとんどが、このクローズド・メタバースにあたる。
国内企業10社によって新たにオープン・メタバースを作ることで、個人が企業間を自由に行動できる仮想空間を目指す。
オープン・メタバースのメリット
通常、メタバースを使うにはプラットフォーム内の決済などのために、仮想通貨(暗号資産)を準備し、メタバースごとに個人情報を登録する必要がある。
オープン・メタバースでは、専用のパスポートに個人情報を一度度登録するだけで、他のメタバース間を自由に行き来できるようになる。
また、アバターを一つ用意するだけで、メタバースの世界を自由に行き来できるのも、オープン・メタバースのメリット。メタバース上の洋服店で購入したお気に入りのアイテムを着て、保険メタバースに移動して保険商品を購入することができる。
ロールプレイングゲームの世界観を持つオープン・メタバース基盤を構築
参加する10社は、JCBと3メガバンクの他、凸版印刷、富士通、三菱商事など。
各社技術やノウハウを持ち寄り、TBT LabグループのJP GAMES株式会社が開発したメタバース構築フレームワークを用いたオープン・メタバース基盤の構築に向けて基本合意書を締結した。
金融機関は本人認証や決済技術、IT企業はデータ管理などを担い、商社が海外展開を支援する。
運営を担うのはTBTLab株式会社。最高経営責任者である田畑氏は、人気ゲーム「ファイナルファンタジー15」などを手掛けたクリエイターだ。ユーザーが利用しやすいようゲームの技術も取り入れることで、ゲームを通じが利用者の交流や商品購入のきっかけを作ることができる。
基盤名は「リュウグウコク(仮)」。それ自体が独自のファンタジーな世界観を持つ。ゆるやかなオンライン異世界ロールプレイングゲームの要素を取り入れたメタバース基盤だ。
オープン・メタバースの今後
初夏を目途に、メディア発表会を予定している。今後、本構想の賛同企業を広く募り、ジャパン・メタバース経済圏を拡げていきたいとのことだ。
今回の取り組みによって、メタバースの利便性を向上し、企業の事業機会も拡がる一方、企業には、現実世界と同様にコンプライアンス(法令順守)コストがかかるとの専門家の指摘も。メタバース間の垣根を越えて調整にあたる業界団体の設立・統一されたルール作りが必須となりそうだ。
各社の役割・概要
株式会社ジェーシービー:
MMP/ID認証領域での機能・ノウハウの提供、加盟店のデジタルツイン構築
株式会社みずほフィナンシャルグループ:
MMP/決済領域での機能・ノウハウの提供、メタバースコインの提供、地域DX協業
株式会社三井住友フィナンシャルグループ:
ゲーミフィケーション推進、PWK開発支援、クリエイターエコノミー構築
株式会社三菱UFJフィナンシャル・グループ:
MMP機能構築支援(認証/決済/データ等)、Web3型メタバース金融機能提供、海外展開支援
株式会社りそなホールディングス:
未来のライフスタイル、および次世代のID認証・決済領域における共同研究
損害保険ジャパン株式会社:
メタバースを含むWeb3時代に向けたリスク分析および保険開発
凸版印刷株式会社:
メタバースプラットフォーム「MiraVerse」・アバター生成管理基盤「AVATECT」相互運用、文化コンテンツ取扱いノウハウ・表現技術の提供
富士通株式会社:
デジタルデータ権利管理などWeb3関連技術の提供
三菱商事株式会社:
メタバース基盤の海外展開、経済圏を広げるグローバルパートナー
TBT Lab株式会社:
ゲーミフィケーションの機能・ノウハウの提供、PWKおよびMMPの提供