京セラ株式会社は、エネルギー自家消費型市場の拡大と災害時の電力供給の安定化を目指し、新たな蓄電システム「Enerezza® Plus」を市場に投入します。

本製品は、世界初の半固体クレイ型リチウムイオン蓄電池を内蔵し、太陽光発電システムやハイブリッド自動車(HV)、電気自動車(EV)、発電機、ポータブルバッテリーなど、多様な外部電力源からの入力をサポートするマルチ入力型ハイブリッド蓄電システムです。この革新的なシステムは、高い安全性と長寿命を実現し、非常時における電力供給の確保と脱炭素化への貢献を目指します。

はじめに:「Enerezza® Plus」の登場背景

日本国内の太陽光発電市場は、2019年11月以降、住宅用太陽光発電設備の固定価格買取制度(FIT)における10年間の買取期間満了を迎えるユーザーが増加しています。この変化は、エネルギー自家消費型の市場への転換を加速させており、同時に災害などによる停電時の太陽光発電システムの有効利用策として、夜間等でも電力を活用できる蓄電システムへの需要が高まっています。

このような市場のニーズに応える形で、京セラはマルチ入力型ハイブリッド蓄電システム「Enerezza® Plus」の開発に至りました。本製品は、災害時のレジリエンス需要への対応はもちろん、脱炭素化への貢献を目指し、積極的に展開されることになります。

「Enerezza® Plus」とは?:製品概要

「Enerezza® Plus」は、京セラが開発したマルチ入力型ハイブリッド蓄電システムで、世界初の半固体クレイ型リチウムイオン蓄電池を内蔵しています。このシステムは、太陽光パネルからの電力だけでなく、ハイブリッド自動車(HV)、電気自動車(EV)、発電機、ポータブルバッテリーなど、様々な外部電力源からの電力を統合して家庭内で利用可能にします。

特に、停電時においては、これらの外部電力を活用して家庭内の電力供給を支えることができるため、非常時の備えとして大きな安心を提供します。また、6.0kVAの高出力対応により、多くの家電製品を同時に使用することが可能です。このように、Enerezza® Plusは、安全性と利便性を兼ね備えた次世代の蓄電システムとして、新たなエネルギー管理の形を提案します。

世界初の技術:半固体クレイ型リチウムイオン蓄電池

京セラが開発した「Enerezza® Plus」に内蔵されている半固体クレイ型リチウムイオン蓄電池は、世界で初めての技術を採用しています。この技術の最大の特徴は、電極を粘土状にすることで、従来の液体電解液を使用した蓄電池に比べて高い安全性を実現している点です。

電解液が液体の場合、電池が変形した際に液漏れを起こし、火災のリスクがありました。しかし、半固体クレイ型リチウムイオン蓄電池では、電解液を電極に練り込むことで、このようなリスクを大幅に低減しています。

さらに、約2万サイクルの長寿命を実現しており、長期間にわたって安心して使用できる点も大きな魅力です。この革新的な蓄電池技術により、Enerezza® Plusは、家庭用蓄電システムの新たなスタンダードを確立しようとしています。

マルチ入力型パワーコンディショナの革新

「Enerezza® Plus」のもう一つの重要な特徴は、マルチ入力型パワーコンディショナを搭載している点です。このパワーコンディショナは、太陽光発電システムだけでなく、ハイブリッド自動車(HV)、電気自動車(EV)、発電機、ポータブルバッテリーなど、様々な外部電力源からの電力を一つのシステムで管理し、家庭内で利用できるようにする技術です。

これにより、ユーザーは複数の電力源を柔軟に組み合わせて使用することが可能になり、特に停電時などの非常時においても安定した電力供給を確保できます。また、このシステムは、エネルギーの自家消費を最大化し、電力コストの削減にも貢献します。

マルチ入力型パワーコンディショナの採用により、Enerezza® Plusは、従来の蓄電システムの概念を超えた、新しいエネルギーマネジメントの可能性を広げています。

停電時の強い味方:外部電力との連携機能

「Enerezza® Plus」は、そのマルチ入力型パワーコンディショナにより、停電時でも外部からの電力を家庭内で利用可能にする点で注目を集めています。このシステムは、太陽光発電だけでなく、ハイブリッド車や電気自動車(EV)、さらにはポータブルバッテリーや発電機からの電力も受け入れることができます。

これにより、災害や予期せぬ停電が発生した際にも、外部電力を活用して家庭内の電力供給を維持することが可能になります。特に、自動車のバッテリーを電源として利用することで、長時間の停電にも対応できるため、非常時の備えとして大きな安心感を提供します。このように、Enerezza® Plusは、日常生活だけでなく、非常時においても家庭のエネルギー安全を強化する重要な役割を担っています。

業界トップレベルの高出力対応

「Enerezza® Plus」が提供するもう一つの大きな特徴は、その高出力対応能力です。このシステムは、6.0kVAの高出力を実現しており、これにより停電時でも家庭内の多くの電気製品を同時に使用することが可能になります。

例えば、冷蔵庫、照明、そして必要に応じて医療機器など、複数の電気製品を停電中でも稼働させることができるため、災害時の生活支援に大きく貢献します。また、この高出力対応は、日常生活においても、太陽光発電システムや外部電力源からの電力を最大限に活用し、家庭内でのエネルギー自立を支援します。

業界トップレベルの出力性能を持つ「Enerezza® Plus」は、エネルギーの有効活用と非常時の安全確保の両面で、新しい価値を提供しています。

災害時におけるレジリエンスと安心

「Enerezza® Plus」は、災害時におけるレジリエンス(回復力)の向上と、家庭での安心感を提供することを目的としています。日本は地震や台風などの自然災害が頻繁に発生する国であり、そのたびに電力供給が不安定になることがあります。

特に、近年では気候変動の影響により、これまで経験したことのないような大規模な災害が発生するリスクが高まっています。このような状況の中、「Enerezza® Plus」は、外部電力源からの電力を活用し、停電時でも家庭内で電力を供給できるようにすることで、災害時の生活を支えます。

また、高出力対応能力により、生活に必要な様々な電気製品を稼働させることが可能であり、災害時における家庭の自立性と安全性を高めることに貢献します。

脱炭素化への貢献

「Enerezza® Plus」は、脱炭素化社会への移行を支援する製品としても注目されています。再生可能エネルギーの利用拡大は、地球温暖化対策の重要な柱の一つですが、太陽光発電や風力発電などの再生可能エネルギーは、発電量が天候に左右されるという課題があります。

この問題を解決する鍵の一つが蓄電技術であり、「Enerezza® Plus」は、その最先端を行く製品です。マルチ入力型パワーコンディショナを通じて、太陽光発電などの再生可能エネルギーから得た電力を効率的に蓄電し、必要に応じて使用することができます。

これにより、再生可能エネルギーの利用効率が向上し、化石燃料に依存することなく、より多くのエネルギーを供給することが可能になります。また、家庭でのエネルギー自立を促進することで、エネルギーの地産地消を実現し、脱炭素化社会への移行を加速させます。

製品スペックの詳細

「Enerezza® Plus」は、その高度な技術と機能性により、家庭用蓄電システムの新たな基準を設定しています。このシステムは、5.5kWh、11.0kWh、16.5kWhの3種類の蓄電池ユニットから構成され、ユーザーのニーズに応じて容量を選択することが可能です。

また、-20℃から+40℃の使用温度環境に対応し、50/60Hzの定格出力周波数を持っています。外形寸法は、蓄電池ユニットがW485×H562×D280mm、パワーコンディショナがW650×H717×D240mm、リモコンがW170×H151×D24mmとなっており、各ユニットの質量は蓄電池ユニットが64kg、パワーコンディショナが57kg、リモコンが375gです。

通信方式はLTE™カテゴリー1を採用し、蓄電池ユニットは屋内外共用、パワーコンディショナは屋外壁掛け、リモコンは屋内での使用が可能です。これらのスペックにより、「Enerezza® Plus」は、高い柔軟性と利便性を実現しており、さまざまな家庭環境に適応することができます。

導入事例とユーザーの声

「Enerezza® Plus」の導入事例は、その実用性と効果を物語っています。例えば、太陽光発電を導入している家庭では、日中に発電した電力を蓄電し、夜間や曇天時に使用することで、一日中安定した電力供給を享受しています。

また、災害時に外部電力源として自動車のバッテリーを利用した事例では、長時間の停電にも対応でき、家庭内での生活を支えることができました。ユーザーからは、「停電時でも安心して生活できるようになった」「電力コストの削減に貢献してくれている」などの声が寄せられています。

これらの事例とユーザーの声は、「Enerezza® Plus」が提供する価値と、蓄電システムに対する期待の高まりを示しています。

今後の展望と市場への影響

「Enerezza® Plus」の市場投入は、蓄電システムと再生可能エネルギー利用の未来に大きな影響を与えると期待されています。このシステムは、エネルギー自家消費の促進、災害時の電力供給の安定化、そして脱炭素化社会への移行という、現代社会が直面する三つの大きな課題に対して有効な解決策を提供します。

特に、再生可能エネルギーの普及が進む中で、その不安定な発電量を補完し、より安定したエネルギー供給システムの構築を可能にする点が高く評価されています。また、エネルギーの地産地消を実現し、エネルギーコストの削減にも貢献することから、個人ユーザーだけでなく、ビジネスの現場においてもその導入が進むことが予想されます。

さらに、蓄電技術の進化は、電気自動車(EV)の普及やスマートグリッドの発展にも影響を与え、エネルギー産業全体の変革を加速させる可能性を秘めています。このように、「Enerezza® Plus」は、今後のエネルギー市場における重要なキープレイヤーとなることが期待されており、その動向は多くの関心を集めています。

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