編集部
三井住友トラスト・ホールディングスは、2024年にグループ創業100周年を迎えます。この節目の年において、同社は新たな金融サービスの展開と社会課題解決に向けた戦略を強化しています。信託の力を活かし、資金・資産・資本の好循環を促す社会インフラの構築を目指しているのです。この記事では、三井住友トラスト・ホールディングスの2024年戦略と、それを支える独自の取り組みについて詳しく解説します。
三井住友トラスト・ホールディングスの歴史と2024年の節目
三井住友トラスト・ホールディングスは、2024年4月にグループ創業100周年を迎えます。この長い歴史を持つ企業は、日本の金融業界において独特の位置を占めています。商業銀行とは異なる起源を持ち、信託業務を中心に展開してきたことが、その特徴です。信託市場は約100年前、日本の近代化と産業資金調達のニーズに応える形で誕生しました。
しかし、市場の混乱を是正するため、1922年に信託法および信託業法が制定され、三井住友トラスト・ホールディングスの前身となる企業もこの法律に基づき設立されました。この100年間で、同社は信託の力を活用して、社会課題の解決に貢献してきました。戦後復興期には、重厚長大産業への長期資金の提供や、私鉄の沿線拡大に伴う車両信託の提供など、時代ごとのニーズに応えてきました。これらの取り組みは、信託業務の可能性を広げ、社会に貢献する企業としての基盤を固めることに繋がりました。
信託の力で社会課題を解決する戦略
三井住友トラスト・ホールディングスは、信託の力を活用して社会課題の解決に取り組んでいます。 これは、同社が100年の歴史の中で培ってきた核となる戦略です。最近では、カーボンニュートラルや人生100年時代といった新たな社会課題に対応しています。例えば、エネルギー、環境、化学分野の専門家を採用し、テクノロジー・ベースド・ファイナンスチームを組成。これにより、革新的技術の社会実装を促進し、社会課題の解決に貢献しています。
また、人生100年時代における長寿命への備えとして、「おひとりさま信託」や「人生100年応援信託」を開発。これらの取り組みは、相続や資産管理などの課題解決に貢献しています。信託の力を活用することで、社会の変化に柔軟に対応し、顧客のニーズに応えるサービスを提供することが、同社の強みであり、独自色の強い戦略と言えるでしょう。
新NISAと資産運用立国への貢献
2024年1月の新NISA制度の開始に伴い、三井住友トラスト・ホールディングスは、日本の「資産運用立国」実現に向けた動きに積極的に貢献しています。この制度は、約3000兆円とも言われる日本の個人資産の活用を促し、「貯蓄から投資へ」という流れを加速させることを目的としています。三井住友信託銀行では、スマートライフデザイナーというアプリを通じたコンサルティングチャネルの多様化を進め、顧客に対してより質の高い投資情報を提供しています。
また、三井住友トラスト・アセットマネジメントや日興アセットマネジメントでは、NISAに適した商品開発を加速し、運用残高の増加を目指しています。これらの取り組みは、個人投資家が投資により積極的に関与する環境を整備し、日本の資本市場の活性化に貢献することを目指しています。
テクノロジー・ベースド・ファイナンスチームの組成
三井住友トラスト・ホールディングスは、テクノロジー・ベースド・ファイナンスチームの組成により、金融サービスのイノベーションを推進しています。このチームは、エネルギー、環境、化学などを専門とする博士号を持つ研究者らによって構成されており、技術的な知見を活用して革新的技術の社会実装を促進することを目的としています。
この取り組みは、カーボンニュートラルや人生100年時代といった現代社会が直面する課題に対する解決策を提供することを目指しています。テクノロジー・ベースド・ファイナンスチームの活動は、金融業界における新たな価値の創出と、社会課題の解決に向けた同社の独自のアプローチを象徴しています。このように、三井住友トラスト・ホールディングスは、伝統的な金融サービスの枠を超えて、技術革新を通じて新たな金融ソリューションの提供を目指しています。
「人生100年時代」への対応策
三井住友トラスト・ホールディングスは、「人生100年時代」における社会課題に対応するため、独自の金融サービスを開発しています。「おひとりさま信託」や「人生100年応援信託」などのサービスは、長寿社会における資産管理や相続問題への解決策を提供しています。 これらのサービスは、個人のライフステージやニーズに応じた柔軟な資産運用計画を可能にし、顧客が安心して長い人生を送れるようサポートしています。
特に、「おひとりさま信託」は、単身者や高齢者が直面する可能性のある問題、例えば病気や事故による判断能力の低下時に備え、資産の管理や運用を信託銀行に委ねることができるサービスです。これにより、顧客は自身の資産を安全に管理し、将来にわたって安定した生活を送ることが可能になります。
カーボンニュートラルへの取り組み
三井住友トラスト・ホールディングスは、カーボンニュートラル実現に向けた取り組みを強化しています。同社は、環境問題への対応として、持続可能な社会の実現に貢献する金融サービスの提供に注力しています。具体的には、再生可能エネルギーへの投資拡大や、環境に配慮したプロジェクトファイナンスの提供など、環境保全と経済成長の両立を目指した活動を展開しています。
また、技術革新を支援するためのファンドの設立や、カーボンオフセットプロジェクトへの参加も積極的に行っており、企業の環境負荷低減に貢献しています。これらの取り組みは、同社が金融業界において環境問題への意識を高め、持続可能な社会の実現に向けたリーダーシップを発揮していることを示しています。
次世代金融教育と社会貢献
三井住友トラスト・ホールディングスは、次世代を担う若者たちへの金融教育に力を入れています。この取り組みは、金融の知識と理解を深めることで、若者たちが将来的に賢明な金融判断を下せるよう支援することを目的としています。具体的には、確定拠出年金導入企業の新入社員向け教育や、高校生を対象とした出張授業、教員向けの講演会など、様々な形式で金融教育プログラムを提供しています。
これらの教育活動を通じて、同社は金融リテラシーの向上と、将来の健全な金融市場の発展に貢献しています。また、これらの取り組みは、社会全体の金融知識の向上にも繋がり、より良い経済環境の構築に寄与しています。
プライベートアセット市場の拡大戦略
三井住友トラスト・ホールディングスは、プライベートアセット市場の拡大に向けた戦略を積極的に推進しています。 この取り組みは、日本のプライベートアセット市場のポテンシャルを最大限に引き出すことを目指しています。現在、日本のプライベートアセット市場はグローバルシェアの約3％とされており、同社はこの市場の拡大余地が大きいと見ています。
特に、インフレ対策としてのプライベートアセットへの投資の重要性が高まっている中、同社はプライベートアセットの「民主化」を実現することを目標に掲げています。これを実現するために、プライベートアセットを小口化し、個人投資家が参入しやすい環境を整備しています。このような取り組みにより、同社はプライベートアセット市場の活性化と、個人投資家の投資機会の拡大に貢献しています。
ROE10%以上の早期達成へ
三井住友トラスト・ホールディングスは、2030年度までにROE（自己資本利益率）10％以上の達成を目標としています。この目標は、同社が中期経営計画で掲げる成長戦略の一環であり、資産運用立国構想の追い風を受けて、その取り組みを加速させることで、ROE目標の前倒し達成を目指しています。
また、同社は連結配当性向40％という目標も既に達成しており、今後も持続的な成長を通じて安定的な増配を目指す姿勢を示しています。これらの目標達成に向けた取り組みは、同社が財務健全性と収益性の向上に努め、株主価値の最大化を図っていることを示しています。
株式分割で投資しやすい環境を整備
2024年1月1日付で、三井住友トラスト・ホールディングスは株式分割（2分割）を実施しました。この分割により、同社株式の投資単位当たりの金額が引き下げられ、個人投資家がより投資しやすい環境が整備されました。
株式分割は、より多くの投資家に同社の株式を手に取ってもらうことを目的としており、投資家層の拡大と株式市場での流動性向上に寄与することが期待されています。この取り組みは、同社が投資家に対してアクセスしやすい環境を提供し、長期的な株主価値の向上を図るための戦略の一環です。
次の100年に向けたブランドスローガンと未来への展望
三井住友トラスト・ホールディングスは、グループ創業100周年を迎えるに当たり、「託された未来をひらく」というブランドスローガンを策定しました。 このスローガンは、顧客や社会から信じて託されることに誇りを持ち、未来への願いに応える存在であり続けたいという同社の強い意志を表しています。創業以来、信託の力で社会課題の解決に挑戦してきた精神は、100年経った今も変わらず受け継がれています。
次の100年においても、社会課題に立ち向かい、新たな価値の創出に果敢に挑戦していく姿勢を示しています。このスローガンは、同社がこれからも社会の期待に応え、持続可能な未来への貢献を目指していくことを強く宣言しています。
まとめ：三井住友トラスト・ホールディングスの未来への展望
三井住友トラスト・ホールディングスは、2024年にグループ創業100周年を迎える節目に、新たな金融サービスの展開と社会課題解決への挑戦を通じて、持続可能な未来への貢献を目指しています。同社は、信託の力を活用した独自のサービス提供により、人生100年時代の資産管理やカーボンニュートラル実現への取り組み、さらには次世代への金融教育といった幅広い分野で社会的価値の創出を図っています。
これらの取り組みは、同社が直面する社会課題に対して、革新的かつ実践的な解決策を提供することにより、金融業界内でのリーダーシップを確立し、長期的な企業価値の向上を目指していることを示しています。また、株式分割による投資しやすい環境の整備や、ROE10%以上の早期達成を目指すなど、財務戦略においても積極的な姿勢を見せています。
「託された未来をひらく」というブランドスローガンのもと、次の100年に向けて、三井住友トラスト・ホールディングスは社会課題の解決と新たな価値の創出に果敢に挑戦し続けることで、持続可能な社会の実現に貢献していくことでしょう。