カナダのプライバシーコミッショナー事務所(Office of the Privacy Commissioner of Canada:OPC)は、AIチャットボット「ChatGPT」を開発したOpenAI社に対して調査を開始した。複数の海外報道機関が報じている。

OPCによるChatGPTの要請と欧米での懸念の高まり

OPCは、この調査は「同意なしに個人情報を収集・利用・開示したとされる苦情」を受けて開始されたと述べている。各国政府やAI研究コミュニティの一部が、AI技術開発と展開を規制する動きに影響を受けていると考えられる。

欧米では、高度な言語能力を持つChatGPTの急速な普及に対する懸念が高まっている。イタリア当局は、米OpenAIの対話型AI「ChatGPT」を一時的に利用禁止とし、米国の非営利団体もOpenAIの最新技術「GPT-4」の商業利用を差し止めるよう要請。

ロイターによると、フランスとアイルランドのプライバシー規制当局がイタリアの関係者に連絡を取り、禁止の根拠について詳細を知ろうとしているとのこと。また、ドイツもデータセキュリティ上の懸念からChatGPTへのアクセスを遮断する可能性があると報じられている。また米AIデジタル政策センター(CAIDP)は、GPT-4がFTCのAI利用指針を満たしていないと主張し、調査と商用サービスの展開差し止めを要請している。

欧米のみならず、中国の規制当局は、アリババ集団など国内の主要IT企業に対し、ChatGPTのサービス提供を停止するよう指示。これは、ChatGPTが習近平指導部に批判的な回答を行う可能性を懸念しているため。騰訊控股(テンセント)やアント・グループは、自社プラットフォームでChatGPTを使えなくするよう要求されている。

イーロン・マスクを始めとするAI分野の指導者らによる3月の公開書簡では、GPT-4よりも強力なシステムの開発を含む先進的なAIの導入を6ヶ月間停止するよう呼びかけた。一部では、OpenAIの次世代ChatGPT(GPT-5)は、今年末にリリースされると噂されている。

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昨年、カナダ政府は、AIシステムの規制を含む幅広いプライバシー法案であるBill C-27を提案。この法案が可決されれば、AIシステムの設計、開発、利用、提供に関する規制枠組みが導入されることになる。この法案は、AIのトレーニングプロセスに関する透明性を促進するだけでなく、有害な影響やバイアスのある出力・回答のリスクを軽減するための措置も施行を要求している。

ChatGPTへの懸念、対策の重要性

ChatGPTを巡る最近の動きは、AI技術の急速な発展とそれに伴う規制や倫理的懸念が国際的な議論の対象となっていることを示唆している。イタリアや米国での規制や懸念は、主にデータ収集の透明性や個人情報保護、偏見のない情報提供に焦点が当てられており、これらの問題に対処することは、AI技術の持続可能な発展と広範な利用のために重要だ。

一方、中国当局の動きは、主に政治的な理由からAI技術の規制が行われており、言論の自由や情報の流通に影響を与えるだろう。このような規制が厳しくなることで、中国のネット空間は世界から切り離される動きが加速する懸念がある。

新たな技術が普及するにつれ、それに伴う倫理的、法的、社会的問題が浮上し、議論が活発化するのは一般的だ。例えば、過去にインターネットが普及した際には、プライバシーや著作権、オンラインでの犯罪や詐欺などの問題が大きな関心事となった。また、ソーシャルメディアの登場によって、フェイクニュースの拡散や個人情報の取り扱い、オンラインでのいじめや差別などの問題が浮上した。

このような状況を考慮すると、ChatGPTに代表されるAI技術の急速な発展に伴い、国際的な規制や倫理基準の整備が必要となる機運は更に高まっていくだろう。技術革新を推進しながら、個人情報保護やデータ収集の透明性、言論の自由などの倫理的観点に配慮することが、AI技術が持続可能で公正な形で利用されるための鍵となる。

今後は、世界各国が協力して国際的な枠組みを構築し、AI技術の持続可能な発展を促していく方向に舵を切る可能性もある。

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