仮想ゲームプラットフォームであるディセントラランドは、3月の最終週に第2回メタバース・ファッションウィークを開催した。参加した著名なブランドには、トミーヒルフィガー、DKNY、アディダス、ドルチェ&ガッバーナなどの大手ファッション企業が含まれていた。
メタバース・ファッションウィークは減速鮮明
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しかし、昨年は10万人以上のユニークユーザーが集まったのに対し、今年は26,000人のユニークなアクティブユーザーしかいなかったと、ディセントラランドがMarketWatchに提供したデータで明らかになった。
ディズニーやメタなどの大手企業のメタバース部門での部門解散や解雇が相次ぐ中、メタバースの将来性に疑問符が付く論調が強くなっている。
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メタ、メタバースから撤退しジェネレーティブAIへ焦点をシフト?
メタバースの将来性に懐疑的な理由は、技術的限界、ユーザー体験の問題、セキュリティとプライバシーの懸念、ソーシャルメディアの代替としての機能不足が存在する。これらの問題が解決されなければ、メタバースの普及は困難となる、という見解も浮上する
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ファッションブランドはメタバースの将来性を引き続き探索
一方で、ファッションブランドは依然としてメタバースの可能性を信じているように思える。
例えば、今月、かの有名ブランドであるグッチは、人気のある非代替トークン(NFT)コレクション「Bored Ape Yacht Club」を手掛けるYuga Labsと提携を発表。Yuga Labsとグッチは、エイプテーマのメタバースゲーム「The Otherside」でリリースするNFTのリアル版として、グッチ製品を発売するとしている。グッチはメタバース関連の取り組みに専念するチームも保持している。
また最近1万人の従業員を解雇したメタは、DressXなどのデジタルファッションハウスと提携して、インスタグラムやFacebookユーザーのアバターに仮想衣装を販売している。
ファッション企業が他の企業が撤退する中でもメタバースから撤退しない主な理由は、メタバースで利益を上げることができ、他のゲームやエンターテイメントでますます時間を過ごす若者層にアプローチする機会があると見ているからだ。
海外のブロックチェーンアナリストによると、先述のOthersideは、2022年10-12月から237%も取引量を増加させ、2023年1-3月に2億2,200万ドルに達したとしている。
ディセントラランドでのメタバース・ファッションウィーク中、ユーザーはファッション企業からのウェアラブルスキンを約26,000ドル分購入し、76,000件近くの無料ウェアラブルを入手したという。これらの数値は、現在の有名ファッションブランドが得る収益と比較すると小さいが、若年層にアプローチするためのバーチャルワールドの潜在力を示している。
ゲームプラットフォームRobloxが調査した内容によると、メタバースファッションがうまく売れる主な理由の一つは、Z世代ユーザーの約半数が、バーチャルプラットフォームでアバターに衣装を着せることで、自分の人格を表現し、自分自身に自信を持つことができると感じているためだという。
メタバースはファッション業界の必須チャネルとなり得るか
現在の技術的限界やユーザー体験の問題は、技術が進化するにつれて改善される可能性はあり、既に多くのファッションブランドがメタバースに取り組んでいることを踏まえると、将来的にはメタバースがファッションの触媒として広く受け入れられるポテンシャルは存在するだろう。
また、セキュリティやプライバシーの懸念に対処することで、メタバースがソーシャルメディアの代替として機能し、さらに多くの利用者が移行することが期待される。メタバースファッションウィークが示すように、アバターのファッションを通じて個性を表現することが若い世代に受け入れられており、これがメタバースのファッション業界の成長につながるかも知れない。
現在のリスクや懸案を克服し、技術やインターフェースが更に向上すれば、メタバースはファッション業界において新たなマーケットや若い世代へのアプローチ手段として大きな可能性を秘めていると言える。