英・BBCによると、ウェールズに本部を置くカーディフ大学の学生たちが、ChatGPTを使ってエッセイを執筆、これまでで最高の成績を獲得したとし、英国で話題になっている。カーディフ大学は、AI利用に関わるポリシーの見直しを行っており、近々大学全体の新たな指針を発表する予定。
参考:ChatGPT: Cardiff students admit using AI on essays
大学のエッセイでChatGPTを利用
「トム」(仮名)は、ChatGPTを使った実験を行った学生の一人で、1月にチャットボットを使ってエッセイを書いたところ、大学で今までで最高の成績を受け取った、と告白した。一方、ChatGPTを使わなかったエッセイでは低い成績を受け取った。
カーディフ大学によると、2023年1月の評価期間中、大学のWi-Fiネットワークを介してChatGPTサイトへのアクセスが14,443件あった。しかし、大学はこれらのアクセスが不正目的であったことを示す証拠はないと考えているという。
学生たちは、ChatGPTを使ってエッセイを直接書くのではなく、得た回答を修正して使用していると言う。また、「ジョン」(仮名)は、彼のエッセイにAIが書いた証左が検出されることはないと確信している、と伝えている。
ただし、将来的に発覚することを懸念しており、AIネットワークとのやりとりの記録が見つかると、学位が取り消されるのではないか、と恐れていると話した。
カーディフ大学は、剽窃を含む学術不正の疑いを「非常に真剣に」取り扱っていると述べています。また、「AIの不適切な使用は、誠実性に関わる本学のポリシーによってカバーされている」との声明を発表し、学術分野における誠実性の維持が最優先事項であり、学生に対して不正を犯さないよう積極的に働きかけていると述べている。
利便性は高いが剽窃、能力向上阻害、事実誤認を生じさせるリスク
今回話題になっているカーディフ大学の学生は、効率的に情報を取得し、エッセイの品質を向上させる方法を求めていたのだろう。また、近年のAI技術の発展により、ChatGPTのような対話型AIが人間のようなレスポンスを生成できるようになったことも、学生たちがAIを利用する動機になっている。
対話型AIの利用にはいくつかの課題が存在する。今回の様な学術的な不正や剽窃が増加する懸念がある。また、学生がAIの支援に過度に依存し、自らのリサーチや分析能力が向上しないことも大きなリスクだ。さらに、AIが生成した内容が正確でない可能性もあり、そのプロセスで学生が誤った情報をインプットしたり使用してしまう恐れもある。
今後、対話型AIの利用が一般的になることで、大学を始めとする教育機関は新しい評価方法やカリキュラムの見直しを検討する必要がある。例えば、リアルタイムでの試験や、学生のクリティカルシンキングや創造性を評価する新しい手法の導入が考えられる。
一方で、学生側は、AI技術を正しく活用することで、学生が研究や情報収集を効率化し、より深い理解や分析に時間を割くことができるようになるだろう。教育機関としては、対話型AIの利点を活用しつつ、学術的な誠実性や倫理を維持する方法を模索することが重要だ。このためには、AI技術に関する教育やガイダンスを提供し、学生が正しくAIを活用できるようサポートすることが必要になる。
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