バイデン政権は、ジェネレーティブAIツールであるChatGPTなどの技術が虚偽や差別など倫理的な問題が含まれる情報やコンテンツを拡散するために利用される可能性があることを懸念し、規制に向けた動きを見せている。ウォールストリートジャーナル、ロイターなど複数の海外報道機関が伝えた。
米商務省が規制に向けての検討を開始
米商務省は、潜在的にリスクのある新しいAIモデルを含む技術に対し、パブリックコメントの要求を公表。今後、ChatGPTのようなAIモデルは、リリース前に認証プロセスを経る必要となる可能性がある。
ChatGPTを始めとするジェネレーティブAIは、ビジネスに大きな変革を生み出すツールとして大多数の大企業が技術開発や導入を検討している。開発者と顧客は、大量のデータを分析し、業務効率を大幅に向上させるAIの精度を歓迎的に受け入れる傾向にある。
▼関連記事▼
ジェネレーティブAIとは?ビジネスパーソンが知っておくべき基礎知識
しかし一方で、ChatGPTのようなツールが、新しい技術と同様に、犯罪を犯したり、有害な情報を広めたりするために悪用される可能性があるとの警告が、公的な機関や専門家から発せられている。イタリアではデータ利用やプライバシー保護に懸念があるとして国内での利用が禁止されている。
▼関連記事▼
ChatGPTのOpenAI、イタリアでの利用禁止へ対策
ハーバード、ジェネレーティブAIの知的財産権に関わる問題へ言及
Tesla Inc.の最高経営責任者であるイーロン・マスク氏や他の数百人のテクノロジーリーダーたちは、約1ヶ月前にリリースされたOpenAIのチャットボットであるGPT-4よりも強力なシステムの開発を6ヶ月間停止するよう呼びかけている。彼らは、マイクロソフト社が大きな出資を行っているOpenAIと、Alphabet Inc.のGoogleが、十分な管理や潜在的なリスクへの対策を講じずにエスカレートしていると警告している。
▼関連記事▼
米AI倫理団体、ChatGPTがFTCルール違反と主張し調査を求める
またこうした動きに対し、OpenAIはイタリア政府との対話を進めるなど融和的な動きを見せている。人類にとって有害なツールとして普及させるのではく、その便益を最大化するため、官民での連携が進むと考えられる。
今後ますます重要になるAI技術の取り扱い
AI技術の規制が現代社会においてますます重要になっている。一方で、AIはビジネスや科学の分野で多くの利点をもたらしており、データ分析や業務効率の向上に寄与している。
AIがもたらす利点とともに、悪用の可能性や有害な情報の拡散、差別の助長などのリスクも生じる。米国のサイバーセキュリティ企業によれば、ChatGPTなどのジェネレーティブAIの進化と普及により、サイバー攻撃が急増したとの報告も存在する。
▼関連記事▼
ジェネレーティブAI活用による詐欺・サイバー攻撃、わずか1か月で135%増加
そのため、適切な規制や認証プロセスが、これまで以上に技術の発展と共にバランスを保つために重要。バイデン政権がAIツールの規制に向けて動いていることは、社会がこれらのリスクに対処しようとしている兆候だ。
加えて、テクノロジーリーダーたちが、より強力なAIシステムの開発に対する一時的な停止を求めていることは、業界自体がリスク管理や潜在的な問題に対処するための時間を確保したいと考えていることを示している。
AI技術の規制は、技術の進歩を促進しながらも、社会全体にポジティブな変化をもたらすために、バランスが求められる難題だ。大きな変革をもたらすジェネレーティブAIはそのインパクトも甚大だが、人間社会内でのバランスを保持した上で適切な利用が可能になる枠組みを構築する必要がある。