2024年のComputexで、AMDのCEOリサ・スーは、同社の最新チップアーキテクチャ戦略を発表しました。これは、AIデータセンターとAI搭載PC向けに、CPU、NPU、GPUの技術を革新するものです。
特に、AMD Instinctアクセラレータの新たなロードマップ、5世代目のAMD Epycプロセッサ、そしてRyzen AI 300シリーズプロセッサが注目されています。これらの技術は、AIのトレーニングと推論を支える次世代のインフラを構築し、AI業界におけるリーダーシップを強化することを目指しています。
AMDの新戦略発表: AIデータセンターの未来を拓く
2024年のComputexで、AMDのCEOリサ・スーは、AIデータセンターとAI搭載PC向けの革新的なチップアーキテクチャ戦略を発表しました。この新戦略は、中央処理装置(CPU)、ニューラル処理装置(NPU)、グラフィックス処理装置(GPU)を活用し、AIインフラストラクチャのエンドツーエンドなソリューションを提供することを目指しています。特に、AMD Instinctアクセラレータの新たなロードマップが注目されています。
AMDのInstinctアクセラレータは、毎年のリーダーシップAIアクセラレータを提供する計画を示しており、新しいAMD Instinct MI325Xアクセラレータが2024年第4四半期に発売される予定です。このアクセラレータは、業界をリードするメモリ容量と帯域幅を備え、AI推論性能を大幅に向上させます。さらに、AMDは、CDNA 4アーキテクチャを採用した次世代のMI350シリーズを2025年に発売予定で、現在のMI300シリーズと比較して最大35倍のAI推論性能を提供します。
リサ・スーは、これらの新製品がパートナー企業や顧客によって広く採用されていることを強調しました。Microsoft Azure、Meta、Dell Technologies、HPE、Lenovoなどが、AMD Instinct MI300Xアクセラレータの性能と価値提案を評価し、採用しています。AMDは、AI業界の進化を推進するために、継続的なイノベーションと製品開発を続ける決意を表明しました。
AMD Instinctアクセラレータの最新ロードマップ
AMDは、AIデータセンター向けのInstinctアクセラレータの最新ロードマップを発表しました。このロードマップは、毎年のリーダーシップAIアクセラレータの提供を目指しており、新たな技術革新が次々と導入される予定です。最初に登場するのは、2024年第4四半期に発売予定のAMD Instinct MI325Xアクセラレータです。
MI325Xアクセラレータは、288GBのHBM3Eメモリと毎秒6テラバイトのメモリ帯域幅を備え、OAM互換性を持ち、MI300シリーズアクセラレータと共通のプラットフォームを提供します。これに続くMI350シリーズは、CDNA 4アーキテクチャを採用し、AI推論性能が現行モデルの最大35倍に達する予定です。これにより、AIデータセンターにおける性能と効率が大幅に向上します。
2026年には、CDNA “Next”アーキテクチャを採用したMI400シリーズが登場する予定で、さらに先進的な機能と性能を提供します。AMDは、これらの新製品を通じて、AIインフラストラクチャの次世代モデルの開発を推進し、顧客のニーズに応え続けます。この戦略は、AMDのイノベーションと技術リーダーシップを強化し、AI業界における競争力をさらに高めるものです。
5世代目のAMD Epycプロセッサ: 高性能と効率の融合
AMDは、Computexで5世代目のEpycプロセッサ「Turin」を発表しました。この新しいプロセッサは、Zen 5コアを採用し、スーパコンピュータからクラウド、PCまで広範な用途においてリーダーシップ性能とエネルギー効率を提供します。第5世代のAMD Epycプロセッサは、2024年後半に発売予定で、次世代AI体験の実現を目指しています。
Turinプロセッサは、Zen 5アーキテクチャを基盤にしており、従来のプロセッサに比べて大幅な性能向上とエネルギー効率の改善を実現します。特に、AIトレーニングと推論の負荷を効率的に処理するために最適化されており、高度な計算能力を提供します。これにより、データセンターの運用コストを削減しながら、より迅速なAIモデルのトレーニングとデプロイが可能となります。
さらに、AMDは新しいXDNA 2 NPUコアアーキテクチャを導入し、最大50TOPSのAI処理性能を提供します。これにより、従来のNPUに比べて高精度なデータ処理が可能となり、AI推論の精度が向上します。これらの技術革新は、AMDがAIデータセンター市場でのリーダーシップを維持し、顧客に対して最先端のソリューションを提供するための重要なステップとなります。
Ryzen AI 300シリーズ: AI体験の新時代
AMDは、最新のRyzen AI 300シリーズプロセッサを発表し、AI体験の新時代を切り開いています。このシリーズは、Zen 5アーキテクチャとXDNA 2 NPUコアアーキテクチャを組み合わせ、AI推論性能を大幅に向上させています。最大50TOPSのAI処理性能を提供し、高精度なデータ処理が可能となり、AI推論の精度を飛躍的に向上させます。
Ryzen AI 300シリーズは、ノートブックとデスクトップPCの両方に対応しており、次世代のAI体験を提供します。HPやLenovoなどの主要パートナー企業がこの新しいプロセッサを採用し、革新的なAI機能を搭載したPCを市場に投入しています。特に、HPは、画像生成モデルStable Diffusion XL TurboをRyzen AI 300シリーズプロセッサを搭載したノートブック上で実行し、その性能をデモンストレーションしました。
さらに、MicrosoftもAMDと提携し、Copilot+ PCの要件を満たすRyzen AI 300シリーズプロセッサの優位性を強調しています。これにより、企業はよりインテリジェントで個別化された体験を提供できるようになります。Ryzen AI 300シリーズプロセッサは、消費者向け、商業向けの両方のラップトップに採用され、AIソフトウェアの新たな可能性を引き出しています。AMDは、この新シリーズを通じて、AI技術のリーダーシップをさらに強化し、業界に革新をもたらします。
エッジAIの革新: Versal AI Edge Gen 2の導入
AMDは、エッジAIの分野においても革新を続けています。最新のVersal AI Edge Gen 2デバイスは、リアルタイムの前処理を可能にするFPGAプログラマブルロジック、効率的なAI推論を実現する次世代AIエンジン、そして後処理を担当する組み込みCPUを統合しています。これにより、エッジAIのアプリケーションにおいて最高のパフォーマンスを発揮する単一チップの適応型ソリューションを提供します。
Versal AI Edge Gen 2は現在、30以上の主要パートナー企業との開発が進行中で、早期アクセスが可能となっています。これにより、様々な業界でエッジAIの革新が促進されます。例えば、スバルは、AMDの技術を活用してEyeSight ADASプラットフォームを強化し、2030年までに交通事故死ゼロを目指す取り組みを進めています。また、キャノンは、自由視点ビデオシステムにVersal AI Coreシリーズを採用し、ライブスポーツの視聴体験を革新しています。
その他にも、日立エナジーは、リアルタイム処理のためにAMDの適応型コンピューティング技術を活用し、電圧過大の予測を行うHVDC保護リレーを開発しています。これらの事例は、Versal AI Edge Gen 2デバイスが、エッジAIの可能性を最大限に引き出し、様々な産業における新たな価値を創出していることを示しています。
パートナー企業との連携: 新たなAI体験の実現
AMDは、パートナー企業との連携を強化し、新たなAI体験の実現を目指しています。特に、Microsoft、HP、Lenovo、Asusなどの主要企業が、AMDの最新プロセッサを採用し、革新的なPCを市場に投入しています。これにより、企業はより高度なAI機能を提供し、消費者とビジネスユーザーのニーズに応えています。
Microsoftは、長年にわたりAMDと協力しており、AMD Ryzen AI 300シリーズプロセッサがMicrosoftのCopilot+ PC要件を超えることを発表しました。これにより、インテリジェントなPC体験が実現され、ユーザーはより効率的に作業を進めることができます。HPも、AMDプロセッサを搭載した新しいCopilot+ PCを発表し、画像生成モデルStable Diffusion XL Turboのデモを行いました。これにより、高性能なAI処理が可能となり、クリエイティブな作業がより迅速に行えます。
Lenovoは、消費者向けおよび商業向けのラップトップにRyzen AI 300シリーズプロセッサを搭載し、新しいAIソフトウェアを活用しています。また、Asusは、ビジネスユーザー、消費者、コンテンツクリエーター、ゲーマー向けにRyzen AI 300シリーズプロセッサを搭載した幅広いAI PCポートフォリオを発表しました。これにより、様々なユーザーがそれぞれのニーズに合わせた最適なAI体験を享受することができます。
AMDは、これらのパートナー企業との協力を通じて、AI技術の普及と革新を促進し、次世代のインテリジェントなコンピューティング環境を構築しています。これにより、ユーザーはよりパーソナルで効率的な体験を享受でき、AIの可能性を最大限に引き出すことができます。