生成型AIが登場し、経営者はビジネスへの大きな影響を予想しているが、KPMG米国の新しい調査によると、多くの人が即時導入には準備ができていないという。

参考:KPMG US 「KPMG U.S. survey: Executives expect generative AI to have enormous impact on business, but unprepared for immediate adoption

米国経営者の65%が生成型AIが強いインパクトを与えると想定

調査対象の米国の経営者225人のうち65%が、今後3~5年で生成型AIが高いか極めて高い影響を組織に与えると考えている。しかしほぼ同じ割合である60%が、最初の生成型AIソリューションを導入するまでに1~2年はかかるとしている。

生成型AIは経営者や取締役会のアジェンダに入っているが、組織は技術の進歩に追いつくのに苦労しているという。回答者の半数以下が、生成型AIを成功裏に導入するための適切な技術、人材、ガバナンスが整っていると考えている。回答者は今後6~12ヶ月、生成型AIの仕組みを理解し、内部能力を評価し、生成型AIツールに投資することに集中する予定である。

生成型AIはこれまでに見た技術の中で最も破壊的なものとなる可能性があるとレポートは述べている。生成型AIの膨大な可能性を引き出すためには、組織が実験段階から産業化へと迅速に移行する明確な戦略が必要、としている。

変革的技術と競争力の差別化要因

KPMGの調査によると、経営者の77%が、今後3~5年で生成型AIが他の新興技術よりも広範な社会への影響が大きいと考えている。

2023年はAIが数千人のデータサイエンティストから1億人の人々の手に移ることでゲームチェンジャーとなった。これは、コンピューティングパワーの急落、インターネットを利用した大量のトレーニングデータの利用可能性、そして巨大な「AI学習工場」(大規模言語モデル)の構築と運用に何十億ドルも投資する企業がいることの複数のゆっくりとしたトレンドが交差するポイントである。

経営者は、企業全体のイノベーション、顧客成功、技術投資、営業およびマーケティングを促進する分野で最も影響が大きいと予想している。生成型AIの企業レベルへの影響について、回答者の78%がイノベーションを促進する分野で高いまたは非常に高い影響があると考えており、技術投資が74%、顧客成功が73%で続く。そして、研究開発、製品開発、運用に最も変革的な影響を与えると考えている。

また生成型AIはビジネスと社会にとって真に革命的である可能性がある。経営者の3分の2以上が、顧客の要求の変化と市場競争が生成型AIの必要性に影響を与える最大の要因であると述べている。生成型AIの革新のペースでは、真のファーストムーバーの利益がある。勝利する組織は、今すぐ決定的な行動を取りながら、リスクを緩和し、責任あるAIを導入するための適切なステップを踏むことで競争優位を築く、としている。

各インダストリーにおける適用度合いの差異

生成型AIへの経営者の優先度は業界によって大きく異なる。テクノロジー、メディア、通信(TMT)およびヘルスケア・ライフサイエンス(HCLS)の経営者の71%および67%が生成型AIを適切に優先していると感じているが、消費者および小売業界では30%しか優先していないと感じていない。

経営者の72%が生成型AIが利害関係者の信頼を築き維持する上で重要な役割を果たすと同意しているが、45%は適切なリスク管理ツールが実装されていない場合、生成型AIが組織の信頼に悪影響を与える可能性があると述べている。

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また回答者の多くは、人間+生成型AIの仕事を組み合わせた労働力の新時代に向かっていると考えている。生産性向上(72%)、働き方変革(66%)、イノベーション促進(62%)について最も楽観的である。しかし、潜在的なマイナス面も意識している。

経営者の約4割(39%)が、生成型AIが社会的な交流や同僚との人間関係の減少につながり、労働力に悪影響を与える可能性があると考えている。また、32%が、仕事の喪失や将来に対する不確実性のストレスにより労働者の心の健康問題が増加すると懸念している。

企業は、業界や機能を問わず、チームの能力を向上させるためのハイブリッドアプローチに焦点を当てている。

経営者は生成型AIの導入による競争優位性の獲得を考えるべき

KPMGのサーベイによれば、生成型AIは企業と社会に大きな影響を与えると予想されているが、その導入に関しては多くの組織がまだ準備が整っていない。これは新技術の導入に伴う一般的な課題であり、組織は以下の点に注意を払うべきである。

  • 責任あるAIの実装: 生成型AIの潜在的なリスクを管理し、利害関係者の信頼を維持するために、組織は倫理的なAIの使用とリスク軽減策の策定に取り組む必要がある。
  • 教育と人材開発: 生成型AIが労働力に与える影響を最小限に抑えるために、組織は従業員のスキル向上と再訓練に投資すべきである。また、心の健康や人間関係の維持にも注力する必要がある。
  • クリアな戦略とビジョン: 生成型AIを成功裏に導入するために、組織は明確な目標と戦略を設定し、実験段階から実用段階への移行を迅速に進めるべきである。
  • 組織全体での取り組み: 生成型AIの導入は組織全体の取り組みとして進められるべきであり、各部門が協力して技術の適切な活用を図る必要がある。

生成型AIは急速に進化する技術であり、競争優位を確保するためには組織は柔軟性を持ち、変化に適応していく必要がある。将来の不確実性に対処するためには、継続的な学習と技術革新への取り組みが重要である。

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