編集部
メタバース市場は、2023年の620億ドル規模から2033年までに1.2兆ドルへと急成長すると予測されている。コロナ禍によるリモートワークとオンライン教育の拡大が、その成長を後押ししたとされる。この分野を牽引する北米地域は、今後も市場の中心として君臨し続けるだろう。
コロナ禍が促進したメタバースの拡大
メタバース市場の急成長は、コロナ禍によるリモートワークやオンライン教育の普及が大きな要因となっている。パンデミックによって人々は物理的な距離を置かざるを得なくなり、仮想空間でのコミュニケーションや活動が急速に求められるようになった。
特に、教育やビジネスの分野では、従来のリアルな場で行われていた活動が次々とデジタル化され、メタバースがそのインフラとしての役割を担った。この結果、メタバース技術は一時的な流行にとどまらず、社会的なインフラとしての地位を確立しつつある。加えて、インタラクティブな体験や遠隔地とのリアルタイムでの交流が可能となったことが、メタバースの普及に拍車をかけている。
パンデミック後もこの動きは継続しており、大手企業はこぞってメタバースへの投資を強化している。例えば、FacebookはMetaに社名を変更し、メタバースの開発を全面的に推進することを表明した。こうした企業の動きが、さらに市場を押し上げる要因となっている。
北米が牽引するメタバース市場の現状
メタバース市場において、北米地域が世界をリードしている。北米は主要な市場プレーヤーが集積しており、また技術インフラの整備が進んでいることから、この分野での優位性を確立している。
特にアメリカは、Meta（旧Facebook）やMicrosoftといった巨大テクノロジー企業がメタバース市場を牽引している。また、北米では法的な規制環境も比較的整備されており、新興技術が比較的スムーズに市場に導入されることが可能である。これにより、他の地域に比べて迅速に新しい技術やサービスが提供され、市場の拡大が進んでいる。
さらに、北米市場では消費者のデジタルリテラシーが高いことも、メタバースの成長を後押ししている要因である。消費者が新しい技術に対して受容性が高いことで、メタバース関連のサービスや製品が容易に普及している。こうした要素が相まって、北米は今後もメタバース市場をリードする中心的な地域であり続けるだろう。
ゲーミングが主導するメタバースの未来
メタバース市場における最も重要なセグメントは、依然としてゲーミングである。2023年時点で市場全体の35%を占めるこの分野は、今後10年にわたってもその地位を維持する見込みである。
ゲーム業界は、既にバーチャルリアリティ（VR）を利用した没入型体験を提供しており、メタバースへの移行がスムーズに進行している。特にVRヘッドセットの普及が進んだことで、従来のゲーム体験から一歩進んだ、より深い没入感を得られる環境が整備されている。これにより、ゲーマーたちは早期にメタバースに親しみ、積極的に参加する層として市場を牽引している。
また、ゲーミング以外の分野においても、ゲームから派生した技術やプラットフォームが応用される例が増えている。例えば、企業研修や医療分野でのシミュレーションなど、ゲーム技術が実社会のさまざまな領域で活用されている。これにより、ゲーミングがメタバース市場の中核を成し続けるとともに、その応用範囲はさらに広がっていくことが予想される。
エンタメ以外への展開が示すメタバースの可能性
メタバースは、エンターテインメント業界を超えて、その可能性を広げつつある。エンタメ分野が2023年に市場の20.11%を占めた一方で、教育、医療、リモートワークなどの他のセクターへの応用が急速に進んでいる。
特に教育分野では、インタラクティブな学習体験が提供されることで、従来の教室での学習とは異なる、より深い理解が得られるようになっている。また、医療分野においても、遠隔診療や医療シミュレーションがメタバースを利用して行われるようになり、その精度や効率が飛躍的に向上している。
一方で、メタバースの拡大には課題も存在する。特に、サイバー攻撃のリスクが高まっていることが指摘されており、これが市場の成長を妨げる要因となる可能性がある。しかし、こうしたリスクに対応するための技術開発も進んでおり、今後は安全性の向上とともに、より広範な分野でのメタバースの応用が期待される。これにより、エンタメ以外の分野でもメタバースはその可能性を広げ続けるだろう。