2024年の米国IPO市場は、これまでの年に比べて非常に低調な状態にある。特に、例年であれば秋に向けたIPO活動が活発化する時期であるにもかかわらず、大きな動きは見られない。今年の8月には有望視されていたテック企業の上場申請が一件もなされておらず、残りの数ヶ月で大きな転機が訪れる兆しも乏しい。
IPO市場の停滞が続く背景
2024年のIPO市場は、過去数年間の活発な状況とは対照的に、停滞が続いている。特に、毎年レイバーデー後に盛り上がりを見せるテック企業のロードショーが今年はほとんど行われておらず、市場全体が静かな状態だ。これは、多くのベンチャー企業がIPOに消極的な姿勢を示していることが原因の一つだ。例えば、8月には期待されていた企業の上場申請が一件もなされなかった。通常、この時期は秋の上場に向けた準備が活発に行われる時期だが、2024年は異例の静けさが漂っている。
IPOアドバイザーであるリース・バイヤー氏は、「今年中にIPOが大幅に増加することは期待できない」と語っており、市場が再び活発化するのは早くても2025年後半か、それ以降になると見込んでいる。こうした市場の停滞は、成長企業のペースが鈍化していることや、投資家が期待する高い成長率を満たしていないことが要因だ。さらに、バイヤー氏は多くの企業がIPOのタイミングを「様子見」していると指摘しており、慎重な判断が続く状況だ。
このような背景から、2024年のIPO市場はこれまで以上に静かな年として記憶される可能性が高い。
企業成長の鈍化とIPO遅延の関係
IPO市場が低迷している一因には、企業成長の鈍化がある。特に、企業の成長率が期待されている水準に達していないことが、上場の遅延を招いている。バイヤー氏によれば、かつては40%から50%の年間成長率を達成していたエンタープライズソフトウェア企業が、現在では20%から30%の成長率にとどまるケースが増えているという。この成長率の低下が、投資家の期待値を下回るため、企業がIPOを避ける要因となっている。
特に、技術系企業の多くがIPOを控える理由は、株式市場において大企業が健全な成長を続けている中で、自社の成長が相対的に見劣りすることにある。成長の見通しが不透明な企業が市場に出ると、初期の評価額が低くなり、長期的な成長見込みを損なうリスクがある。そのため、成長率が改善するまで上場を先送りする判断が増えている。
このような現状は、特にエンタープライズソフトウェアやテック企業に顕著であり、2024年のIPO市場の停滞に大きく影響を与えている。
バリュエーション調整はほぼ完了か
市場の停滞に影響を与えているもう一つの要因として、企業のバリュエーション調整が挙げられる。かつてはユニコーン企業として高い評価を受けていた企業が、市場の下落を受けてバリュエーションを引き下げざるを得ない状況に直面している。しかし、バイヤー氏によれば、バリュエーションの調整は既にほぼ完了しており、この問題がIPOを阻む主な要因ではなくなってきているという。
多くの企業経営者は、バリュエーションが一時的に低下していると考えているが、成長率が回復しない限り、以前の高い評価額に戻ることはないとバイヤー氏は指摘している。そのため、企業は今後の成長見込みを見極めた上で、最適なタイミングで上場を図る必要がある。バリュエーションが再び上昇するには、企業が安定した成長を示すことが不可欠だ。
このように、バリュエーション調整が完了しているものの、成長率の低下がIPOを遅らせる主要な要因として残っており、市場の動向は今後も不透明な状況が続くと考えられる。
大統領選を控えたIPO市場の今後
2024年11月に予定されている米国大統領選挙は、IPO市場にも影響を及ぼす可能性が高い。選挙直前の時期は、企業が上場を避ける傾向があり、市場全体が一時的に冷え込むことが予想される。特に、選挙結果が経済政策や市場の動向にどのような影響を与えるかが不透明なため、企業はリスクを避けるために上場時期を見送る傾向が強まる。
過去の選挙年でも、選挙前後の期間はIPO市場が停滞する傾向が見られた。2024年も例外ではなく、多くの企業が選挙後の経済状況を見極めた上で上場を決定する可能性が高い。特に、テック企業やバイオテック企業は、政治的な不安定さが市場に与える影響を慎重に評価している。
このような背景から、2024年のIPO市場は、大統領選挙の影響を受けてさらに冷え込む可能性が高い。企業は選挙後の経済政策や市場の動向を注視し、最適なタイミングを見計らう姿勢を見せている。選挙後に市場が活発化するかどうかは、依然として不透明である。