AMDは、次世代GPU「RDNA 4」シリーズにおいて、ハイエンドゲーミング市場の優先順位を下げる方針を明らかにした。これにより、同社はミッドレンジ市場への注力を強化し、NVIDIAとの競争構造に変化が生じている。

この決定は、ハイエンド製品での競争が収益性や市場シェア拡大には繋がりにくいという認識に基づくものである。AMDはこれにより、より幅広いゲーマー層をターゲットにした製品展開を目指す。

AMD、次世代GPU「RDNA 4」シリーズにおけるハイエンド市場から一歩後退

AMDは次世代GPU「RDNA 4」シリーズにおいて、ハイエンドゲーミング市場から一歩後退する方針を明確にした。この動きは、従来の高性能志向から脱却し、より多くの市場シェアを獲得するための戦略転換である。AMDの上級副社長であるジャック・ヒュン氏によれば、同社は現在、ハイエンド市場での競争よりも、規模拡大を優先しているという。

この決定は、過去の戦略の見直しに基づいている。2019年にも、同社はRDNA 1シリーズでハイエンド競争を避け、ミッドレンジ市場にフォーカスしていたが、その後の世代では再びNVIDIAとの競争を試みた。しかし、NVIDIAが依然として市場を支配しており、AMDは全体のGPU市場シェアの12%に留まっている。

AMDの新たな方針は、NVIDIAとのトップ争いを避け、中堅から下位市場での拡大に重点を置くものだ。ハイエンド市場は限られた購買層にしかアピールできない一方で、より幅広い層に向けた製品が、同社の市場シェア拡大に寄与すると見込まれている。この戦略変更がどのように展開されるかは、今後のRDNA 4シリーズの発売により明らかになるだろう。

ゲーミング市場でのシェア拡大を狙う新方針

AMDがハイエンド市場よりも規模拡大を重視する背景には、ゲーミング市場でのシェア拡大を狙う明確な意図がある。ジャック・ヒュン氏は、特にミッドレンジおよびエントリー市場に注力することで、同社のシェアを40%から50%に引き上げたいと述べている。この規模拡大を通じて、開発者との協力体制を強化し、競争優位を築くことがAMDの狙いだ。

ハイエンド市場は全体の10%に過ぎないが、ミッドレンジ以下の市場は80%を占める。これを踏まえ、AMDは「規模の力」を活用し、より多くのユーザー層に向けた製品展開を進めていくという方針を明らかにしている。このアプローチは、過去にNVIDIAとの「King of the Hill」戦略で効果が見られなかったことを教訓にしている。

AMDは今後も、価格対性能比に優れた製品を提供することで、ゲーミング市場における存在感を強化する方針だ。ヒュン氏は、より手頃な価格で高性能な製品を提供することで、ミッドレンジ市場でのシェア拡大を図り、最終的には開発者との関係強化に繋げたいと語っている。

高価格帯よりもミッドレンジ市場に注力する理由

AMDが高価格帯よりもミッドレンジ市場に注力する理由は明確である。ジャック・ヒュン氏は、これまでの「King of the Hill」戦略が期待した成果を上げなかったと指摘している。高価格帯の製品は市場の一部にしかリーチできず、結果としてAMDの市場シェア拡大には寄与しにくかった。

一方で、ミッドレンジ市場は圧倒的な規模を持ち、多くのユーザーに製品を届けるチャンスがある。AMDは、この80%の市場をターゲットにすることで、開発者からの支持を得て、さらなるシェア拡大を目指す。この戦略が成功すれば、最終的にはハイエンド市場にも再参入する可能性があるとされているが、現時点では規模の拡大が最優先事項だ。

さらに、AMDは価格設定においても競争力を発揮する意向だ。高価格帯の製品にこだわることなく、手頃な価格でパフォーマンスに優れたGPUを提供することで、NVIDIAと差別化を図る。これにより、より多くのユーザーにリーチし、同時に開発者との連携を強化することで、長期的な成功を収めたいとしている。

AMD、データセンター市場では「King of the Hill」戦略を継続

ゲーミング市場での戦略転換とは対照的に、AMDはデータセンター市場では引き続き「King of the Hill」戦略を継続する意向を示している。ジャック・ヒュン氏は、データセンター市場においては依然としてトップの性能を追求し、リーダーシップを維持することが重要だと述べている。

データセンター市場では、コストパフォーマンスが非常に重要な要素であり、AMDはその分野で大きな成功を収めている。例えば、同社のEPYCプロセッサは世界市場で約3分の1のシェアを占めており、性能とコスト効率において強力な競争力を誇っている。また、AI分野でも、MicrosoftがChatGPT4をAMDのMI300で最も高速に実行できると認めていることが、同社の技術力の高さを物語っている。

このように、データセンター市場ではトップの性能を維持することが、企業にとって非常に重要であり、AMDは引き続きこの分野でのリーダーシップを強化していく方針である。ゲーミング市場とは異なり、ここでは「King of the Hill」戦略が有効であると認識されている。

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