AWSは、ビデオストリーミングにおける品質向上を目的とした新しい技術的な発展を発表した。
iOS 18のアップデートにより、ストリーミングアプリケーションでのCMCD(Common Media Client Data)のサポートが強化され、これにより開発者はリアルタイムの再生パフォーマンス分析が可能となる。
また、Amazon TimestreamとQuickSightを活用することで、CMCDデータの効果的な収集と視覚化が可能となり、iOSユーザーへのビデオ視聴体験が大きく向上する見通しだ。
iOS 18でCMCDのサポート開始
iOS 18の登場により、ビデオストリーミング業界は新たな進展を迎えている。これまで、CMCD(Common Media Client Data)は、特にiOSデバイスでのサポートが不足しており、広範な採用が進まない一因となっていた。しかし、iOS 18でHTTP Live Streaming(HLS)がCMCDデータの収集に対応したことで、この問題が解消された。
HLSの新しい仕様では、CMCDデータがHTTPリクエストヘッダーにのみ送信される形で実装され、iOSデバイスにおいてもビデオ再生の観測性が飛躍的に向上する。これにより、開発者やストリーミングプラットフォームは、再生パフォーマンスやユーザー体験をさらに深く理解することが可能になる。また、CMCDの導入により、ビデオ再生中のバッファリングや品質の低下など、従来把握が難しかった問題を迅速に発見し、解決することが期待されている。
iOS 18でのCMCDサポートは、特にモバイル環境でのストリーミング品質向上を目指す重要なステップであり、エンドユーザーにとってもシームレスな視聴体験が提供されるだろう。
AVPlayerの新機能「AVMetricEvent」とは
iOS 18では、AVPlayerに新たな機能として「AVMetricEvent」が追加された。この機能により、開発者はビデオ再生中のパフォーマンスをリアルタイムでモニタリングし、分析することができるようになる。これまで、ストリーミングの品質を測定するためのデータは限られていたが、AVMetricEventの導入によって、開始時間、バッファリングイベント、ビットレートの切り替えなどの重要な指標が提供される。
特に、ビットレートの切り替えやバッファリングの発生状況をリアルタイムで把握できることは、開発者にとって非常に有益である。これにより、ストリーミングアプリケーションの最適化が進み、ユーザーに提供される視聴体験の向上が期待される。また、AVMetricEventを使用することで、特定の端末やネットワーク環境における問題を特定し、ターゲットを絞った最適化が可能になる点も大きなメリットである。
AVPlayerの新機能は、ストリーミングパフォーマンスの分析をより詳細かつ正確に行う手段を提供し、ビデオストリーミングの品質向上に寄与するだろう。
CMCDデータの収集・可視化:Amazon TimestreamとQuickSightを活用
iOS 18でのCMCD対応を活用し、AWSではさらに高度なデータ収集と可視化の手法を提供している。CMCDデータは、Amazon Timestreamに保存し、そこからAmazon QuickSightを用いて視覚化することで、開発者はリアルタイムにストリーミングパフォーマンスを監視できる。Timestreamは高性能な時系列データベースであり、QuickSightとの組み合わせにより、CMCDデータの詳細な分析が可能だ。
具体的な導入手順としては、まずTimestreamデータベースにCMCDデータを送信し、そのデータセットをQuickSightに接続する。その後、QuickSight上で自然言語を用いたクエリを作成し、特定のビデオパフォーマンス指標を容易に分析できるようになる。このアプローチにより、ビデオの開始時間やビットレートの変化など、複雑なデータを簡単に理解できる可視化ダッシュボードを構築することができる。
このデータ収集と可視化のプロセスを通じて、開発者はビデオストリーミングの品質を高精度で監視し、最適化のためのインサイトを迅速に得ることが可能である。
ビデオストリーミング観測性の未来:AWSとiOSの統合
AWSとiOSの統合により、ビデオストリーミングの観測性は新たな段階に進化している。CMCDを活用することで、開発者はクライアントサイドからのデータとサーバーサイドのデータを組み合わせ、より包括的な可視化を実現できる。特にAmazon CloudFrontとの統合により、ビデオ再生のセッション追跡やバッファリングの分析が可能となり、全体的なストリーミング品質の向上が期待される。
また、CMCDデータを収集することで、エンドユーザーの視聴体験を詳細に追跡し、問題の早期発見と解決が可能となる。このデータは、ビデオ再生時のバッファリング発生やセッションの中断などのトラブルを迅速に特定するための強力なツールとなる。加えて、QuickSightやTimestreamなどのAWSサービスと組み合わせることで、リアルタイムのデータ分析と視覚化が可能となり、さらなる最適化が期待される。
今後、AWSとiOSの統合は、ビデオストリーミング業界にとって不可欠な技術基盤としてますます重要な役割を果たしていくだろう。