ダイキン工業はAI技術を活用した新たな空調サービスを展開し、省エネ性能の向上に大きな成果を上げています。今年9月から導入された「遠隔自動省エネ制御」サービスは、日射や外気温に応じてエアコンを効率的に運転させることで、最大2割の消費電力削減を実現しました。ヤマハ本社ビルでの実証実験でも、その効果が裏付けられています。こうした取り組みは、ハードウェアの性能向上だけでなく、AIによるソフト面の革新がもたらす新しい価値を象徴しています。

ダイキンはこの他にも、エアコンの遠隔監視や故障検知を可能にする「エアネットサービスシステム」を強化し、企業向けの省エネ支援を拡大しています。省エネ運転制御は追加料金なしで提供され、既存エアコンにも対応可能です。これにより、従来の製品売り切り型のビジネスモデルから、継続課金型のサービス提供へとシフトを進めています。こうした背景には、AI・IoT分野の発展によるDXの重要性の高まりがあり、ダイキンは社内でのDX人材育成にも注力しています。

AIで進化するダイキンのエアコン制御システム

ダイキン工業は、AIを活用した「遠隔自動省エネ制御」サービスを導入し、空調業界に革新をもたらしています。このサービスは、屋内外の環境に応じてエアコンの運転を最適化するもので、日射や外気温、室内のパソコン稼働状況に基づきAIが効率的な運転方法を導き出します。具体的には、室外機に接続した専用ネットワーク端末が5分ごとに運転データを収集し、各エリアの熱負荷をAIが学習しながら最適化を図ります。これにより、圧縮機のモーター回転数を制御し、冷房効率を高めながら消費電力を削減します。

試験的に導入されたヤマハ本社ビルでは、1年間で最大20%の消費電力削減を実証しました。すでに国内の約20カ所で実証実験が行われており、平均で10%、最大で20%の削減効果が確認されています。この新サービスは、AIによる省エネ制御を追加料金なしで提供し、既存のエアコンにも対応可能です。これにより、企業はエアコンの消費電力を効果的に削減しつつ、設備投資を抑えることが可能になります。

ダイキンのこの取り組みは、空調機のハードウェア性能の向上だけに留まらず、AI技術を積極的に取り入れたソフト面での革新を示しています。こうした先進的な制御システムは、空調負荷の変動を的確に捉え、ビル全体のエネルギー効率を向上させるため、脱炭素化を目指す企業にとって非常に有用です。

省エネと脱炭素化を目指すダイキンの新たな取り組み

ダイキンは、省エネと脱炭素化を推進するため、新たなサービスや技術の開発に注力しています。中でも注目されるのが「エアネットサービスシステム」の進化です。このシステムは、エアコンの遠隔監視機能に加え、AIを用いた省エネ制御を実現し、室外機15台の場合で月額約6万円の価格設定となっています。消費電力の8割近くが圧縮機の稼働に使われるため、モーターの回転数をAIで最適化することで、従来よりも高い省エネ性能を達成しています。

ダイキンはエアコンの売り切り型ビジネスモデルから、継続課金型のサービスモデルへと移行しつつあります。この戦略は、企業が直面する省エネニーズを満たすだけでなく、持続可能な収益モデルを構築するためのものです。さらに、すでに設置されているエアコンにも新たなネットワーク端末を接続することで、迅速にAI制御の恩恵を受けることが可能です。

実際に、ヤマハ本社を含む国内の複数拠点で行われた実証実験では、年間の電力消費量が最大20%削減され、省エネの効果が明確に示されました。こうした実績は、エネルギーコストの削減と脱炭素への貢献を強く求める企業にとって、ダイキンの新サービスの価値を高める要因となっています。エアコン制御の高度化を通じて、ダイキンは企業の持続可能な成長を支援しています。

DX人材育成の革新:ダイキン情報技術大学の役割

ダイキンは、AIやデジタル技術の普及に対応するため、独自のDX人材育成機関「ダイキン情報技術大学」を設立しました。この大学は2017年に設立され、2年間で新入社員100名をAI技術の専門家として育成することを目標としています。受講生は、大阪大学の講師による座学や演習を通じて、AIの基礎から応用までを学び、2年目には実際のビジネス課題を解決するプロジェクト型学習(PBL)に取り組みます。

ダイキン情報技術大学の受講生は、機械系や化学系などの非情報系学部出身者が85%を占めており、AI技術と元々の専門分野を融合した「Π型人材」として育成されています。これにより、ダイキンは社内にAI活用に長けた人材を増やし、現在では同社の全社員の10%以上がAIに関する知識と技術を備えています。こうした人材は、社内の各部門でDX推進の原動力となっており、業務の効率化や新たなビジネス創出に貢献しています。

ダイキンは、AI分野での競争力を維持・強化するために、ISIDの支援を受けてPBLの運営を進め、各プロジェクトでの成果を次のステップに活かしています。DX人材の育成は、単なる技術者の確保にとどまらず、社内の組織改革や新規事業の創出にも寄与しており、今後のダイキンの成長を支える重要な取り組みです。

次世代技術と事業戦略の未来展望

ダイキンは、AIとIoT技術を駆使して次世代の事業戦略を構築し、競争力を高めています。現在、ダイキンが注力しているのは、AIによる省エネ技術だけでなく、製造現場やサービス分野でのデジタル化の推進です。例えば、メンテナンス作業のデジタル化では、フェアリーデバイセズ社の「THINKLET」というデバイスを活用し、修理作業の効率化と品質向上を図っています。このデバイスは作業員の視点を記録し、AIが次の作業手順をアシストする仕組みの構築が進められています。

ダイキンの取り組みは、AI技術の実装による新サービスの創出や、グローバル市場での競争力強化を目指しています。特に、空調市場が2050年には現在の3倍に成長する見込みがある中で、ダイキンは生産能力の増強と同時に、AI技術を活用した効率的な運営モデルの確立を急いでいます。これにより、人手不足を補い、持続可能な事業成長を実現することが期待されています。

ダイキンは、単なる製品の販売にとどまらず、デジタル技術を活用して価値を創出する「コトづくり」に注力しています。こうした戦略は、企業としての収益性向上だけでなく、社会全体の脱炭素化や持続可能な未来に向けた貢献にもつながるものです。ダイキンのAIとデジタル技術を駆使した挑戦は、今後も注目を集めるでしょう。

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