イオンは、1974年の東京証券取引所上場から50年を迎え、驚異的な成長を遂げてきました。
総合スーパー(GMS)からドラッグストア、ディスカウントストアまで、国内外で多角化を進め、現在では連結子会社が300社を超える日本最大級のコングロマリットに成長しました。
その中でも特に注目されるのは、営業利益が10年間で6倍に伸びたドラッグストア事業で、これが今後のイオンの成長を支える新たな柱として注目されています。

イオンの50年:ジャスコから小売業の巨人へ

イオンの歴史は、1969年に三重県の岡田屋、兵庫県のフタギ、大阪府のシロの3社が合併して設立された「ジャパン・ユナイテッド・ストアーズ・カンパニー(JUSCO)」に始まります。1974年9月10日にジャスコは東京証券取引所をはじめとする3市場に同時上場しました。当時のジャスコは、連結子会社13社、店舗数は約140店舗と比較的小規模でした。

しかし、イオンはその後、数々の企業買収を通じて急速に成長を遂げました。現在では、連結子会社は309社に達し、店舗数は1万7000店と、上場時の125倍にまで拡大しています。この成長の背景には、M&A(買収・合併)を積極的に活用し、地方スーパーやドラッグストアを次々と傘下に加えることで事業領域を広げたことが挙げられます。これにより、GMS(総合スーパー)や食品スーパー、ドラッグストアといった主要領域で国内首位の売上を誇るに至りました。

特に、1984年にはマレーシアに進出し、海外展開にも力を入れてきました。現在では、東南アジアを中心に12カ国で1292店舗を展開し、グローバルな市場でもその存在感を示しています。イオンはこの50年で、地方密着型のスーパーから国内外に影響力を持つ巨大コングロマリットへと進化しました。

多角化と拡大:イオンのM&A戦略

イオンの成長は、M&A戦略によって支えられています。1969年のジャスコ設立から始まり、数々の企業買収を通じて規模を拡大してきました。例えば、2008年に設立されたウエルシアHDは、イオンの傘下に入り、ドラッグストア事業の柱として成長しています。2024年2月期には、ウエルシアHDの売上高が1兆2173億円を記録し、国内ドラッグストア業界のトップに立っています。

また、近年では、2023年に東京西部のスーパー大手いなげやを連結子会社化することで、首都圏の市場攻略を強化しました。首都圏では「まいばすけっと」や「ユナイテッド・スーパーマーケット・ホールディングス(USMH)」を通じてスーパー1兆円連合を構築し、食品スーパーのシェア拡大を目指しています。

イオンのM&A戦略は、単なる規模の拡大に留まらず、各事業の統合効果を最大限に引き出すことを狙っています。吉田昭夫社長が「企業規模が大きくなれば、調達や物流で統合効果を発揮できる」と語るように、イオンはグループ全体でのシナジーを重視しています。これにより、コスト削減や効率的な経営を実現しながら、多角化を進めています。

ドラッグストア事業の急成長とその背景

イオンのドラッグストア事業は、過去10年間で営業利益が6倍に増加し、2024年2月期には426億円に達しました。この急成長を支えているのが、ウエルシアHDです。ウエルシアHDは、2008年に設立されてから、連結子会社を12社に拡大し、全国規模でドラッグストア事業を展開しています。さらに、2024年には国内2位のツルハHDとの経営統合が発表され、業界全体の再編が進んでいます。

このドラッグストア事業の成功の背景には、M&A戦略に加え、消費者のニーズに応じた柔軟なサービス展開があります。例えば、ウエルシアHDは、アマゾンジャパンと提携し、処方薬のネット販売に参入しました。これにより、実店舗と電子商取引(EC)の両方を活用する戦略が強化され、今後のさらなる成長が期待されています。

また、イオンはドラッグストア事業だけでなく、食品スーパーやディスカウント店など他の主要事業でも国内首位の売上を誇っています。これにより、同社の小売事業全体が底上げされており、特に利益率の高いドラッグストア事業がグループ全体の成長をけん引しています。

デジタル戦略とDXへの挑戦

イオンは近年、デジタル戦略にも積極的に取り組んでいます。2026年度までにデジタル売上高を1兆円に拡大するという目標を掲げ、DX(デジタルトランスフォーメーション)を加速させています。2022年の決算では、デジタル売上高は約1300億円でしたが、これを4年間で7.7倍に引き上げる計画です。

このデジタル戦略の中核には、顧客体験(CX)を重視した取り組みがあります。イオンは、顧客IDの統合を進め、グループ全体での顧客データを一元管理することで、顧客に対してシームレスなサービスを提供しようとしています。例えば、「レジゴー」というアプリでは、スマホを使って店内で商品をスキャンし、セルフレジで簡単に決済ができる仕組みを導入しています。

また、オンラインとオフラインを融合させたOMO(オンライン・マージ・オフライン)型のサービスも展開しており、ネットスーパー「グリーンビーンズ」では1時間ごとの配送指定が可能です。こうしたデジタルの取り組みにより、イオンは顧客満足度の向上と業務効率化を図っています。

次の半世紀を見据えたイオンの展望

イオンの次なる成長を支えるのは、国内外での事業拡大とデジタル戦略です。人口減少が進む日本国内市場においては、既存の実店舗の成長が鈍化する可能性があるため、東南アジアを中心とした海外展開が重要な役割を果たします。現在、イオンは12カ国で1292店舗を展開しており、今後も新規市場への進出が期待されています。

一方で、イオンは日本国内においても、都市部への進出を加速させています。特に首都圏では、小型スーパー「まいばすけっと」の展開を強化し、駅近の好立地に店舗を構え、顧客の利便性を高めています。また、ネットスーパーやAIを活用した物流システムの導入によって、業務の効率化と顧客サービスの向上を図っています。

イオンの岡田元也会長は「規模の拡大こそが企業の存続を可能にする」と語り、今後も規模の論理に基づいた経営を続ける方針です。次の50年に向けて、イオンは国内外でのさらなる拡大とデジタル技術の活用によって、世界の小売業界で存在感を示すことが求められています。

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