米国司法省は、Googleが広告テクノロジー市場での支配力を不当に維持し、競争を妨げているとして、新たな反トラスト訴訟を開始した。これは、同社が過去に敗北した検索事業に続く2件目の訴訟である。訴訟では、Googleが競合他社を排除し、広告費を高騰させることで市場を独占しているとされ、最悪の場合、企業の分割も視野に入る。
Googleに対する新たな訴訟の背景
米国司法省と8つの州は、Googleが広告テクノロジー市場での支配力を乱用し、競争を排除しているとして新たな反トラスト訴訟を提起した。今回の訴訟は、Googleの親会社であるAlphabetが広告関連技術の大部分を支配し、市場を歪めていると主張している。司法省は、Googleが競合他社を買収し、広告取引に必要な技術の独占を確立することで、市場全体をコントロールしていると非難している。
この訴訟は、Googleにとって2023年に提起された2件目の大規模な反トラスト訴訟である。以前の訴訟では、Googleが検索市場で反競争的行為を行っているとされ、裁判所から独占的な行動を指摘された。今回の訴訟も同様に、競争の復元と市場の健全化を目指すものだが、焦点は広告テクノロジー市場に移っている。もし司法省が勝訴すれば、Googleには市場からの撤退や事業の分割といった厳しい措置が求められる可能性がある。
反競争的行為の具体的な指摘
訴訟で米司法省が指摘するGoogleの反競争的行為は、多岐にわたる。まず、Googleは競合する広告技術企業を次々と買収することで、市場の主要なツールと技術を独占してきた。これにより、広告スペースの販売や購入に必要な技術がほぼ全てGoogleの管理下にある状態が生まれた。さらに、Googleは広告主が広告スペースを購入する際に使用する主要なツールも支配しているとされ、広告市場全体を一手に握る構造を作り上げている。
また、Googleが運営する最大の広告取引所では、広告主とパブリッシャーのマッチングをコントロールしており、この市場支配が競争を著しく妨げているとされる。司法省は、Googleが15年以上にわたり、競合他社を排除し、市場競争を阻害する行動を続けてきたと断じている。これにより広告費は高騰し、パブリッシャーの収益は減少し、全体的な情報交換やイノベーションが阻害されているとされている。
米司法省の狙いと求められる改革
司法省と提訴した各州の目的は、広告テクノロジー市場における競争の復元である。訴訟では、Googleの独占的行為による市場の歪みを是正し、アメリカの消費者や企業が公平な取引環境を享受できるようにすることを求めている。具体的には、司法省はGoogleに対し、過去の反競争的行為に対する金銭的な賠償と、今後の市場運営における是正措置を求めている。
司法省は、Googleが市場に与えている影響があまりに大きく、企業が持つ力を適正に管理することが急務であると強調している。もし今回の訴訟でGoogleが敗訴すれば、広告技術部門の分割など、極めて厳しい規制が導入される可能性がある。この訴訟は、デジタル広告市場の将来を左右するものであり、最終的な判決はテクノロジー業界全体に大きな影響を及ぼすことが予想される。
Googleの反論と今後の展開
Googleは、今回の訴訟について「誤った主張に基づくものであり、政府が市場の勝者と敗者を決めるべきではない」と反論している。Googleの広告部門の副社長であるダン・テイラーは、ブログ投稿で「我々はウェブ全体にわたる広告技術事業の構築と投資を続けてきた」と述べ、訴訟を強く批判している。彼は、広告市場には多くの競争相手が存在し、競争はむしろ激化していると主張する。
テイラーはまた、MicrosoftやAmazon、Appleなどの大手企業も同様の行為を行っており、市場におけるGoogleの行動は特段異なるものではないと強調する。Googleは「長年にわたり競争的な業界で成功を収めてきた結果」であり、市場の公平性を損なっているわけではないとしている。今後の展開として、Googleは徹底的な法廷闘争を行う構えであり、この長期にわたる訴訟の行方が注目される。