編集部
2024年4月、英進館が開始した「バーチャルキャンパス」は、九州の教育界に新たな風を吹き込んでいます。メタバース技術を活用したこの取り組みは、塾業界における新たなモデルとして注目を集めています。
福岡市を拠点とする英進館は、石川県のスタートアップ企業と共創し、これまで対面学習が難しかった生徒たちに新たな学習環境を提供。初日の募集で100人を超える応募が集まるなど、成功の兆しが見えています。
オープンイノベーションによるメタバース塾の誕生
英進館の「バーチャルキャンパス」が2024年4月に登場した背景には、オープンイノベーションの活用があります。九州最大手の学習塾である英進館は、石川県のスタートアップ企業oViceと連携し、仮想空間を活用したメタバース塾を開設しました。このプロジェクトは、福岡市で開催された「NCBオープンアクセラレーター@福岡」におけるスタートアップとのマッチングプログラムを通じて誕生しています。
このプログラムは、九州電力や西日本鉄道といった大企業が新興企業と共創し、新規事業を展開するために設立されたものです。英進館は、この枠組みを活用して、石川県七尾市のoViceとパートナーシップを築きました。oViceはバーチャルオフィスサービスを手掛ける企業であり、仮想空間技術に強みを持っています。この技術を活用して、塾業界における新たな教育モデルを創り出したのです。
英進館は、メタバースを通じて、不登校や通塾が難しい生徒に対して学習環境を提供することを目指しました。初日の募集では100名以上の応募があり、従来の塾では対応できなかった生徒層にアプローチすることができました。この取り組みは、オープンイノベーションによって生まれた新しいビジネスの形であり、スタートアップとの協力が九州企業にもたらす影響は大きいと言えます。
英進館「バーチャルキャンパス」のユニークな学習体験
英進館のバーチャルキャンパスでは、生徒がアバターとして仮想空間内で自由に移動し、授業を受けることができます。具体的には、生徒がログインすると、まず1階の受付ホールに通され、そこから授業や面談に応じて各階に移動します。2階には、定員30人の教室が4つ設置され、アバターを操作して入室します。授業が始まると、講師のリアルタイム映像や板書が映し出され、他の受講者の様子もワイプ画面で確認できます。
この仕組みは、従来のオンライン授業とは一線を画しており、あたかも実際の教室にいるかのような没入感を提供します。生徒たちは、他の生徒や講師とリアルタイムでコミュニケーションを取り、質問や意見交換が可能です。また、メタバースの仮想空間は、生徒たちにとって緊張感や対人関係のストレスを軽減し、学習に集中できる環境を提供します。
英進館は、もともと名門中学や高校への進学実績で高い評価を受けており、メタバースキャンパスはその教育の質を維持しながら、新しい学習方法を提供することに成功しています。特に、東京都や海外からも生徒が「通学」している点は、従来の地域限定型の教育サービスでは成し得なかった成果です。これは、デジタル技術がもたらす教育の革新と言えるでしょう。
塾生を惹きつける理由とオンライン教育の可能性
英進館のバーチャルキャンパスは、既存のリアル校舎とは異なる理由で生徒たちを惹きつけています。実際、募集初日には100人以上が殺到し、その多くがリアル校舎の通塾圏内に住んでいたにもかかわらず、従来の塾には通っていませんでした。理由として挙げられるのは、「人見知り」「対人関係の不安」など、コミュニケーションに対する抵抗感です。メタバースならば、そのような生徒たちでも安心して学習に取り組むことができるという点が、強力な魅力となっています。
加えて、物理的な制約がなくなったことで、遠方や離島、さらには海外に住む生徒も参加できる点が注目されています。英進館はこれまで福岡市を中心に九州での進学塾としての地位を確立していましたが、このメタバース塾により、全国的な生徒獲得が可能になっています。事実、在籍している約150人の塾生には東京都や海外からの参加者も含まれており、この新しい形態の塾は、今後さらに広がる可能性があります。
オンライン教育の可能性は、英進館の取り組みを通じて明確になりつつあります。特に、メタバースという仮想空間を活用することで、単なるオンライン授業以上の学習体験を提供することができ、これが他の学習塾との差別化要素となっています。
教育業界の少子化対策としてのメタバースの可能性
少子化が進む中で、教育業界は生徒数の減少という課題に直面しています。英進館も例外ではなく、この問題に対する対策が求められていました。そこで注目されたのが、メタバース技術を活用したオンライン学習の提供です。これにより、従来の塾では対応できなかった遠隔地や不登校の生徒をターゲットにし、新たな顧客層を獲得することができています。
英進館の筒井俊英社長も、「少子化という逆風の中、教師陣がビジネスの世界を学び、新規事業を考える良い機会になった」と語っており、メタバース塾がもたらすビジネスチャンスに期待を寄せています。また、メタバースの技術を活用することで、これまで地理的に塾へ通うことが難しかった生徒たちにも、高品質な教育を提供できるようになり、少子化対策としても有効です。
さらに、英進館は、午前中などの空き時間を活用した貸会議室事業も展開しており、半年で約300万円の売上を達成するなど、教育業界のビジネスモデルに新たな可能性を見出しています。このように、メタバース塾は単なる教育手段にとどまらず、ビジネスの多角化や少子化対策としての役割も果たしています。
メタバース塾がもたらすビジネスモデルの進化
英進館がメタバース塾を開設した背景には、従来のビジネスモデルにとらわれない革新がありました。学習塾業界は少子化や都市部への人口集中など、地域によって異なる課題に直面しています。英進館は、メタバースを通じてこれらの課題を克服し、新たなビジネスモデルを展開しています。特に、物理的な制約がない仮想空間を活用することで、従来の地域限定のビジネスから全国規模、さらにはグローバルな展開が可能となりました。
また、英進館は教育分野においても新たな収益源を開拓しています。午前中の空き教室を貸し会議室として活用し、半年で約300万円の売上を達成しました。このように、教育の提供にとどまらず、施設の活用方法を柔軟に考えることで、新たなビジネスチャンスを生み出しています。さらに、メタバース塾の成功によって、他の教育機関や企業も同様の取り組みを始める可能性が高まっており、業界全体に対する影響力も大きいでしょう。
メタバース塾は、教育業界にとどまらず、ビジネスの多角化やデジタルトランスフォーメーションの成功事例としても注目されるでしょう。このように、英進館はメタバースを通じて、教育業界における新たな成長戦略を打ち出しています。