アナリストの業績予想は、2024年度に入り上方修正が優勢な展開を見せている。円高が進む中でも、生成AIやデジタルトランスフォーメーション(DX)の需要増加、そして訪日観光客の増加が、業績予想を押し上げる重要な要因となっている。

例えば、東京エレクトロンの25年3月期の純利益予想は、前期比30%増の4800億円超と、7月末からさらに上方修正された。このような例は多く、日本株市場には明るい展望が見えてきた。この上方修正の背景には、どのような要因があり、日本株の今後の行方はどうなるのか。詳しく考察していく。

日本企業の業績予想が好調を維持する理由

2024年度において、日本企業の業績予想は上方修正が続いている。その主な理由の一つが、生成AIやデジタルトランスフォーメーション(DX)を中心としたテクノロジーの急速な進展である。特に、東京エレクトロンのようなAI関連企業は、世界的な半導体需要の増加に伴い大きな利益を上げている。

東京エレクトロンの25年3月期の純利益予想は、前期比3割増の4800億円強に引き上げられており、その背景には、生成AIに関連する設備投資が旺盛であることが挙げられる。このようなテクノロジー企業の活躍が、日本株市場における業績上方修正の一因となっている。

一方、為替相場が円高に振れたにもかかわらず、日本企業の業績予想が引き続き強気な理由としては、訪日客の回復や国内消費の堅調さが挙げられる。9月1週のリビジョン・インデックス(RI)は18.2%となり、過去1年の平均12%を大幅に上回った。これにより、今後も日本企業の業績がさらに向上する可能性が高い。

また、リクルートホールディングスや日本郵船のような企業も、国内外の人材派遣や運輸業の需要増加を背景に、上方修正の対象となっている。これらの業界は、円高による輸出企業の不利な影響をある程度回避し、日本経済全体を支える役割を果たしているといえる。

生成AIとDXが企業業績に与える恩恵

生成AIやDX(デジタルトランスフォーメーション)の進展が、日本企業の業績に大きな影響を与えている。東京エレクトロンの例では、生成AIに必要な半導体の需要増加に伴い、メモリー半導体向け製造装置の売上が好調だ。25年3月期の純利益予想は、7月末から4%引き上げられた。これにより、同社は約4800億円の利益を見込んでいる。

さらに、フジクラも生成AI関連の利益を享受している企業の一つである。25年3月期の純利益予想は680億円と、7月末に比べ26%の上方修正が行われた。生成AIに関連する光配線部品の需要増加が、この利益増加の要因である。

DX関連企業の業績も顕著に上昇している。ラクスは、クラウドサービス「楽楽精算」の売上が好調で、業績予想が上方修正されている。また、ネットワンシステムズは、企業向けのセキュリティー支援が成長を牽引しており、業績予想の改善が期待される。

このように、生成AIやDX関連の企業は、世界的なデジタルシフトに伴い、業績を伸ばし続けている。これにより、テクノロジー分野は今後も日本株市場を支える重要な柱となることが予想される。

インバウンド拡大が市場予想を押し上げる

訪日観光客の増加が、日本企業の業績予想を押し上げている。2024年度におけるインバウンド需要の回復は、特に三越伊勢丹ホールディングスやサンリオといった、消費者向けビジネスを展開する企業にとって追い風となっている。

三越伊勢丹ホールディングスでは、訪日観光客の増加に伴い、25年3月期の純利益予想が7%引き上げられた。特に、富裕層向けの戦略が評価され、観光客による消費が業績を大きく押し上げている。

サンリオも同様に、インバウンドの恩恵を受けている。テーマパーク事業やライセンス事業の好調さが、純利益予想を引き上げる要因となっており、訪日客による商品購入が業績を後押ししている。

この他、国内外の人材派遣や物流業務に強みを持つリクルートホールディングスや日本郵船も、インバウンドの影響を受けて業績が上向いている。こうした企業は、観光客による消費や貿易活動の増加が、収益の伸びにつながると見込まれている。

訪日客の回復が業績を押し上げる要因として、市場の期待感は依然として強く、今後もインバウンド関連企業の成長が続くことが予想される。

円高の影響と輸出企業の逆風

円高が進む中で、輸出企業には厳しい状況が続いている。2024年7月には、1ドル=160円を超えていた為替レートが急激に円高に転じ、足元では1ドル=143円前後で推移している。これにより、輸出企業の利益が圧迫されている。

特に、トヨタ自動車や日産自動車などの完成車メーカーは、円安による恩恵が減少し、業績予想の下方修正が相次いでいる。さらに、米国市場での新車販売奨励金の増加が、収益の重荷となっている。

欧州市場でもダイキン工業などの企業が苦戦しており、シリコンウエハーの需要減少が、SUMCOの業績に大きな影響を与えている。資生堂も、中国向けビジネスでの競争激化により業績予想が引き下げられている。

円高によるデメリットが大きい一方で、生成AIやDX関連の企業は、為替の影響を受けにくいビジネスモデルを持っており、円高の逆風を乗り越えつつある。これにより、テクノロジー関連企業は引き続き日本経済の重要な成長ドライバーとなることが期待されている。

今後の焦点:AIの成長と米国経済の動向

今後の日本株市場において注目されるのは、AIやDX関連企業の成長の持続性と、米国経済の動向である。特に、米国の利下げや景気の軟着陸が、日本企業の業績にどのような影響を与えるかが焦点となっている。

ニッセイ基礎研究所の井出真吾氏は、米国経済のリスク要因として、個人消費の失速や景気の軟着陸が不透明であることを指摘している。一方で、2024年度の日本企業の業績予想は、例年以上に保守的であり、今後の決算発表で上方修正が期待されるとの見方が強まっている。

AIやDX関連企業に対する市場の期待は依然として高く、特に東京エレクトロンやフジクラといった企業は、生成AI需要の増加により、引き続き利益を上げることが見込まれている。また、ラクスやネットワンシステムズのようなDX関連企業も、成長を続けると予想される。

今後、米国の経済政策が日本企業にどのような影響を与えるか、そして生成AIやDX関連の技術革新がどこまで業績を押し上げるかが、日本株市場の動向を左右する重要な要素となるだろう。

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