マイクロソフトは、2030年までにカーボンネガティブを達成すると宣言しているが、その一方で化石燃料企業へのAI技術提供が明らかになり、批判を浴びている。特に、同社がエクソンモービルやシェブロンと協力し、石油生産を効率化するためのアルゴリズムを開発している点が問題視されている。環境に対する公的なコミットメントと、裏で行われているこうした提携との間に大きな矛盾が存在する。

マイクロソフトの環境宣言と実態の矛盾

マイクロソフトは、2030年までにカーボンネガティブを達成するという大胆な目標を掲げているが、その実態には大きな疑問が残る。同社は、エクソンモービルやシェブロンといった化石燃料企業に対して、AI技術を提供していることが報じられており、これが環境宣言と矛盾する行動として批判を浴びている。マイクロソフトは、これらの企業向けに石油生産を効率化するためのアルゴリズムを開発し、さらなる化石燃料の抽出を助長しているとされる。

一方で、マイクロソフトの幹部は、このAI技術がエネルギーコストや排出量の削減に役立つと主張している。しかし、これは環境保護を謳う企業としての姿勢と相反するものであり、持続可能な未来を目指すというメッセージを曇らせている。加えて、マイクロソフトは過去数年間で温室効果ガスの排出量を増加させており、特に製品やサービスから発生する「スコープ3」の排出量が顕著である。これにより、同社の環境宣言の信憑性に疑問を投げかける声が高まっている。

化石燃料企業向けのAI技術の提供内容

マイクロソフトが化石燃料企業に提供しているAI技術の具体的な内容も批判の対象となっている。報道によれば、同社はエクソンモービルなどの石油大手に対し、石油探査や生産プロセスを効率化するためのアルゴリズムを開発している。これにより、最適な採掘地点の特定や、資源抽出の精度向上が可能となり、企業の収益が大幅に増加するという。

例えば、マイクロソフトが提供するAIツールにより、エクソンモービルは年間14億ドルの追加収益を見込んでおり、そのうち6億ドルはエネルギー効率の改善から得られるとされている。これにより、短期的な収益向上が実現する一方で、長期的な環境負荷の増大が懸念されている。持続可能なエネルギーへの転換が求められる中で、マイクロソフトがこうした企業と協力することは、環境保護に逆行する行為として強い批判を浴びている。

社内の懸念と内部告発者の声

マイクロソフト内部でも、化石燃料企業との協力に対して懸念の声が上がっている。同社の元サステナビリティプログラムマネージャーであったホリー・アルパインは、マイクロソフトのAI技術が石油生産の効率化に使用されていることに強い不満を抱いていた。アルパインは、化石燃料抽出に反対する立場に転じ、マイクロソフトの公的な環境保護への取り組みが実際には企業利益優先のものであると指摘している。

他にも、匿名の従業員からの内部告発があり、マイクロソフトの環境に関する公的な姿勢と、裏で行われている化石燃料企業との提携との間には大きな矛盾があるとの批判が相次いでいる。このような内部からの声は、同社のカーボンネガティブ宣言を実現するためには、単なる表面的な取り組みだけでなく、実質的な行動が求められていることを浮き彫りにしている。こうした告発者の声が、同社の方向性にどのような影響を与えるかが今後の焦点となる。

環境負荷の増加とカーボンネガティブ目標の限界

マイクロソフトが掲げるカーボンネガティブ目標には限界があることが、近年のデータからも明らかになっている。同社は2020年にこの目標を発表したが、その後も温室効果ガスの排出量は増加傾向にある。2023年には、同社の二酸化炭素排出量が1,540万メトリックトンに達し、これはシアトル市の年間排出量の5倍に相当する数字である。

この排出量の増加は、特にデータセンターのエネルギー使用量の増加によるものが大きい。さらに、マイクロソフトが提供する製品やサービスのライフサイクルにおける環境負荷も無視できない問題である。これにより、カーボンネガティブを目指す取り組みが実現可能なのか、その実効性が疑問視されている。同社は、再生可能エネルギーへの10億ドルの投資を発表しているが、これがどれほどの効果をもたらすかは依然として不透明である。

Reinforz Insight
ニュースレター登録フォーム

最先端のビジネス情報をお届け
詳しくはこちら

プライバシーポリシーに同意のうえ