編集部
TikTokの親会社であるByteDanceは、自社のAI向けGPUを台湾の半導体大手TSMCと共同で開発する計画を進めている。これにより、Nvidiaに依存する現在の状況から脱却し、中国国内でのAI技術競争をさらに加速させる狙いだ。
ByteDanceは既にNvidiaのAI GPUに20億ドル以上を投資しているが、供給不足と高額なコストが課題となっている。この背景には、アメリカの輸出規制も大きな影響を与えている。
ByteDanceがNvidiaに依存しないAIチップ戦略
ByteDanceは、これまでNvidiaのGPUに大きく依存してきたが、その状況を脱却するために独自のAIチップ開発に着手した。2023年にはNvidiaのH20 AI GPUに対し、約20億ドルを投じて200,000ユニット以上を購入したと報じられている。だが、供給不足や価格高騰が大きな問題となり、安定した供給が困難であることが明らかになった。このため、ByteDanceは自社製AI GPUの開発に動き出したのである。
特にアメリカの輸出規制により、NvidiaのAI GPUの中国市場向けのバージョンは性能が制限されている。これが中国企業にとっては技術開発において不利な状況を生んでいる。ByteDanceもその影響を受け、より自由な技術開発を求める中で、Nvidiaに依存しない道を模索することとなった。自社開発のGPUは、将来的にAIのトレーニングと推論の両方に使用される予定である。
ByteDanceのこの動きは、同社のAI戦略を大きく左右するものとなるだろう。AI技術は、TikTokを含むByteDanceの様々なプロダクトにおいて中核的な役割を果たしており、その性能と効率性を向上させるために、独自GPU開発は不可欠なステップと見られている。
TSMCとの連携によるGPU開発の背景
ByteDanceは、自社製AI GPUの製造において、台湾の半導体大手TSMCと提携している。この提携により、TSMCの高度な製造技術を活用し、性能の高いGPUの生産を目指している。TSMCは、Nvidiaの最新AI GPUであるBlackwellシリーズを製造する技術も持っており、ByteDanceの開発するGPUも同様に4nmまたは5nmプロセスで製造される見込みだ。
TSMCとの連携は、単なる製造パートナーシップにとどまらない。ByteDanceは、Nvidia製品への依存から脱却するだけでなく、自社GPUの量産によって将来的なコスト削減や供給の安定を図る狙いがある。TSMCは半導体市場において世界最大級の生産能力を持っており、その技術力を最大限に活用することで、AI GPU市場において競争力を持つ製品を作り出すことが期待されている。
また、TSMCの製造技術は非常に先進的であり、ByteDanceのAI GPUは2026年にも量産が開始される予定である。これにより、ByteDanceはAI技術開発において、さらなる飛躍を遂げることになるだろう。
AI GPU市場における競争とアメリカの輸出規制の影響
AI GPU市場は現在、Nvidiaが圧倒的なシェアを占めているが、アメリカの輸出規制がその競争環境を大きく変えつつある。特に中国企業に対しては、高性能なAI GPUの供給が制限されており、HuaweiやByteDanceのような企業は、この制約を乗り越えるために独自の開発に乗り出している。
ByteDanceがTSMCと共同でAI GPUを開発する理由の一つは、アメリカの輸出規制による影響を最小限に抑えるためである。Nvidiaの中国向けGPUは、性能が大幅に制限されており、これは中国国内のAI研究や商業アプリケーションにおいて大きなハンデとなっている。例えば、NvidiaのH20 GPUは、NvidiaのハイエンドモデルH100に比べて大幅に性能が劣るが、それでも価格は高額であり、中国市場では供給が追いつかない状況が続いている。
この状況は、中国国内の企業にとって非常に深刻であり、ByteDanceが自社GPU開発に乗り出す背景には、この市場競争と規制の圧力が存在する。
ByteDanceのAI戦略とGPUの将来展望
ByteDanceのAI戦略は、TikTokをはじめとする同社の多くのプロダクトにおいて、中心的な役割を果たしている。AIのトレーニングや推論の処理能力を強化することは、今後の競争力を維持するために不可欠であり、そのためのインフラとしてAI GPUの自社開発は大きな意味を持つ。
現在、NvidiaのGPUに依存している状況は、供給不足や価格高騰の問題を抱えているため、長期的な視点から見てリスクが大きい。そのため、自社開発のGPUは、AI技術の進化を支える重要な要素となるだろう。また、TSMCとの提携を通じて、最新の半導体技術を活用し、2026年には量産体制が整う見込みである。
ByteDanceが独自にAI GPUを開発することは、同社のAI研究と実用化における競争力を大幅に強化するだけでなく、将来的には中国全体のAI産業にも影響を与える可能性がある。