Appleが発表した新機能「Apple Intelligence」によるメモリームービー作成機能は、写真をAIが自動で編集し、一つのムービーにまとめるものだ。この技術により、ユーザーは指示を与えるだけで、特定のテーマに沿った映像作品を簡単に作成できる。実際にこの機能を使ってみた結果、可能性を感じさせる一方で、まだ改善が必要な部分も見られた。

メモリームービーとは?Appleの新機能を解説

AppleがiOS 18.1で導入した「メモリームービー」は、AIによる写真やビデオの自動編集機能を提供する。この機能では、ユーザーが提示したテキストプロンプトに基づき、iPhoneの写真ライブラリ内の画像やビデオを自動的に検索し、テーマに合ったムービーを生成する。さらに、AIは指定されたテーマに基づいてサウンドトラックを追加し、ムービーには独自の章立てが施されるという。

これまでAppleの「フォト」アプリは自動的に写真を組み合わせて「メモリー」を作成していたが、今回のメモリームービー機能は、ユーザーがより細かくムービーのテーマや内容を指定できる点で新たな進化を遂げている。この新機能により、ユーザーは自分の記憶を反映したオリジナルムービーを手軽に作成できるようになった。

この機能を利用するには、iOS 18.1のベータ版をインストールし、Apple Intelligenceに対応したiPhone 15 ProまたはiPhone 16シリーズのデバイスが必要となる。これにより、メモリームービーはデバイスのパフォーマンスとAI技術の進化を活かした、より高度な機能として登場している。

実際にメモリームービーを作成してみた

実際にiPhone 15 Proでメモリームービーを試した結果、その操作性は直感的であり、プロンプトを入力してわずか数秒でムービーが生成された。まず、写真ライブラリからテーマに合った画像や動画を自動的に選び出し、それらをまとめて一つのムービーにするプロセスは非常にスムーズである。特に、AIが適切に画像を選び、サウンドトラックを付ける点はユーザーにとって大きなメリットだ。

ムービー作成時には、ユーザーが独自にテーマを入力することも可能であり、試しに「2019年の旅行」や「娘と一緒の写真」というテーマを入力してみた。AIは素早くライブラリをスキャンし、それらの写真や動画を使って短時間で完成度の高いムービーを提供してくれた。さらに、ムービーの再生後には、音楽やフィルターの調整も可能で、編集の自由度も高い。

ただし、いくつかのプロンプトでは、AIが意図しない写真を選んでしまう場面もあった。例えば、「旅行の写真」をリクエストした際に、なぜかパリのディズニーランドの写真ばかりが選ばれるなど、AIの精度にはまだ改善の余地があると感じた。

メモリームービーの問題点と改善の余地

メモリームービーは非常に革新的な機能である一方、現時点ではいくつかの問題点も見受けられる。最大の課題は、AIがプロンプトに基づく画像選定の精度である。例えば「ヨーロッパ旅行の写真」と指定しても、AIがパリの特定の写真だけを選び、他の都市で撮影した写真が反映されないことがあった。AIがユーザーの意図を正確に理解しきれない点が現段階の課題といえる。

また、AIが生成するタイトルやストーリー展開にも問題がある。Appleは「テーマに基づく独自のストーリーラインを作成する」と謳っているが、実際には写真がほぼ時系列順に並べられているだけで、特段ストーリー性を感じられなかった。ムービーにより深い意味を持たせるためには、AIが写真のコンテキストをより正確に理解する必要があるだろう。

さらに、音楽の選定に関してもユーザーの好みに合わせた柔軟性が必要だ。特にApple Musicの加入者でないと利用できる音楽の選択肢が限られており、ユーザーはサウンドトラックのバリエーションに不満を感じる可能性がある。今後、AIの学習能力を高めることで、これらの問題点が解決されることを期待したい。

AIが作る記憶映像は今後の可能性を広げるか?

メモリームービーは、ユーザーが簡単に感動的な映像作品を作成できる点で非常に有望である。特に、家族や友人との思い出を振り返る際、AIが自動でムービーを生成してくれるのは時間を節約できる上、感動的な演出が加わるという利点がある。今後、この技術がさらに進化すれば、AIがより個別的でクリエイティブな提案を行い、プロ級の映像編集が誰でも可能になるかもしれない。

また、AppleのAI機能が改善されることで、ユーザーが撮影した写真や動画がより効果的に整理され、テーマに基づく高度な編集が可能になるだろう。例えば、将来的には特定の場所や時間帯、さらには感情を反映したムービーがAIによって生成されることも考えられる。これにより、個々のニーズに合わせたパーソナライズされた映像作成が実現する可能性がある。

一方で、現在のAI技術にはまだ限界があり、人間のクリエイティビティを完全に代替するには時間がかかるだろう。しかし、メモリームービーのような技術は、AIがどのように人々の生活に新しい価値を提供できるかを示す好例であり、今後の発展に大きな期待が寄せられている。

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