2024年10月から、三菱UFJ銀行など大手5行が変動型住宅ローンの基準金利を0.15%引き上げます。この決定は、既存の契約者を含む多くの住宅購入者に影響を及ぼす見込みです。特に、住宅購入者の約8割が変動金利を選択している現状を考えると、ビジネスパーソンにとっても重要な課題となっています。
変動金利引き上げの背景:大手5銀行の動向
2024年10月から、三菱UFJ銀行、三井住友銀行、みずほ銀行、三井住友信託銀行、りそな銀行の大手5行が変動型住宅ローンの基準金利を0.15%引き上げます。これにより、基準金利は従来の2.475%から2.625%になります。これは、日銀が2024年7月31日に決めた政策金利の引き上げを受け、各行が短期プライムレート(短プラ)を0.15%上げたことを反映しています。短プラは優良企業への融資金利の指標であり、変動型住宅ローンの金利もこれに連動します。約17年ぶりの短プラ引き上げは、金融市場における大きな転換点といえます。
住宅購入者への具体的な影響とは
変動金利の基準金利が上昇しても、すぐに毎月の返済額が増えるとは限りません。多くの銀行では「5年ルール」を採用しており、金利が変動しても5年間は返済額が一定に保たれます。しかし、返済額に占める利息の割合が増えるため、元金の減少ペースが遅くなります。その結果、総返済額が増加し、返済期間が延びる可能性があります。また、適用金利の見直しは半年ごとに行われるケースが多く、今回の金利引き上げが実際の返済額に影響を与えるのは来年1月以降となる見込みです。住宅購入者の約80%が変動金利を選択している現状では、多くの家計に影響が及ぶことが予想されます。
取るべき戦略と対応策
金利上昇リスクに対処するため、固定金利への借り換えを検討することが有効です。現在、35年固定型の住宅ローン金利は1.8%から1.9%程度で、変動金利との差は約1.4%から1.5%です。将来的な金利上昇を見越して、早めに固定金利に切り替えることで、返済額の安定化が図れます。また、繰り上げ返済を活用し、元金を早期に減らすことで、総返済額の軽減が可能です。さらに、住宅ローン減税の適用条件を確認し、控除率(0.7%または1%)を最大限に活用することで、実質的な負担を軽減できます。資産運用や貯蓄計画の見直しも重要なポイントです。
今後の金利動向とリスク管理の重要性
日銀の政策金利が今後も引き上げられる可能性があり、中立金利の推計値である1%から2.5%程度まで上昇するシナリオも考えられます。政策金利が1%に達した場合、変動型住宅ローンの適用金利もそれに伴い上昇し、家計の返済負担が増大します。そのため、金利動向に注視し、リスク管理を徹底することが重要です。具体的には、金利上昇に備えて貯蓄を増やし、繰り上げ返済の資金を確保することや、必要に応じて固定金利への切り替えを検討することが挙げられます。適切なリスクヘッジを行うことで、将来的な不確実性に対応できます。