2024年9月26日、世界最大級のゲーム展示会「東京ゲームショウ2024」が開幕しました。今年の注目点は、43カ国・地域から過去最多の535社が出展し、特にサウジアラビアが大規模なブースを設置したことです。

この動きは、E3の消滅に伴う世界的なゲーム産業の商談機会減少を背景に、東京ゲームショウの国際的な重要性が増していることを象徴しています。急成長する世界のゲーム市場は30兆円規模に達し、ビジネスパーソンにとっても無視できない産業となっています。

この大規模なイベントを通じて、サウジアラビアなど新興国の動向や、日本企業が直面する新たなビジネスチャンスが浮き彫りになっています。

東京ゲームショウ2024:E3消滅後の注目度とグローバル化

2024年9月26日に開幕した東京ゲームショウ2024は、43カ国・地域から過去最多となる535社が出展し、世界的な注目を集めています。特に、米国最大のゲーム展示会であったE3が2023年に終了したことで、東京ゲームショウは事実上、アジアを中心とした世界ゲーム産業の一大拠点となっています。この流れは、特に欧米やアジアのゲーム企業にとって商談の機会を増やす大きなチャンスです。

E3の閉幕は世界のゲーム産業にとって大きな転換点であり、東京ゲームショウが今後のグローバル市場における中心的な役割を担うことが予測されています。特に、今年の展示会には70を超える国や地域から来場予約があり、これまで以上に多様なビジネスチャンスが生まれています。

また、世界のゲーム市場は2023年時点で29.5兆円に達し、今後もさらなる成長が見込まれています。この中で、ゲームは単なる娯楽の枠を超えて、多様な産業を結びつける一大経済圏へと変貌しつつあります。特にアジア市場では、ゲーム産業の成長が顕著であり、企業間の競争が激化している中、東京ゲームショウがその主導的な役割を果たす場としての重要性が高まっています。

これにより、日本国内のゲーム産業もまた、国際市場へのアプローチが必須となりつつあります。セガやスクウェア・エニックスなどの大手企業は、国内外での競争力強化を図るため、トランスメディア戦略やIPの海外展開を強化しており、今回の展示会を機にさらにその動きを加速させることが期待されています。

サウジアラビアの大規模進出とゲーム都市構想

東京ゲームショウ2024では、サウジアラビアの大規模なブースが大きな注目を集めました。サウジアラビアは、国の経済多様化政策「ビジョン2030」に基づき、石油依存から脱却し、新たな成長産業としてゲーム産業を推進しています。その象徴的なプロジェクトが、リヤド近郊に建設が進む一大娯楽都市「キディヤ・シティ」です。

キディヤ・シティは、ゲーム、住居、飲食店などが一体化した未来型都市で、面積は約360平方キロメートルにおよびます。東京ゲームショウに出展された「Qiddiya Gaming」のブースでは、サウジアラビアが目指すゲーム都市のビジョンが具現化されており、テクノロジーとエンターテインメントを融合させたコンテンツが展示されました。この展示により、サウジアラビアがいかにしてゲームを国の主要産業として捉えているかが明確に示されました。

また、サウジアラビアは、日本のゲーム産業との連携にも積極的です。サウジの政府系ファンド「パブリック・インベストメント・ファンド(PIF)」は、任天堂やカプコンに対して多額の投資を行っており、日本のゲームIPを活用した事業展開を模索しています。今回の展示会では、サウジのファイサル・ビン・バンダル王子が来日し、日本企業との協力を強化する意向を示しました。

サウジアラビアのゲーム市場は、国内人口の70%が35歳以下という若年層の多さもあり、急速に成長しています。サウジ政府のゲーム産業への投資は、今後も大きな影響力を持つと予想されており、ゲームを中心とした経済の新たなモデルケースとして注目されています。

新興国とアジア市場の成長:東南アジアと中東の台頭

東京ゲームショウ2024では、東南アジアや中東といった新興国の進出が大きなトピックとなりました。特に東南アジア地域では、ゲームの開発受託が成長の重要な要因となっており、現地の優秀なエンジニアの技術力が日本や欧米の企業から高く評価されています。たとえば、マレーシアデジタルエコノミー公社のダト・ファズリ氏は、同国の豊富な人材リソースを活用し、ゲーム開発のグローバル化を進める意向を示しています。

さらに、タイのブース担当者は、技術力を高めながら自国産ゲームを制作する目標を掲げており、今後の成長に向けた戦略を明確にしています。東南アジアのゲーム市場は急成長しており、今後も大きなビジネスチャンスが期待されています。

一方で、中東地域もゲーム市場の拡大を目指しています。サウジアラビアのように国策としてゲーム産業を育成する動きが見られるほか、UAEやエジプトなどの国々でも、eスポーツを中心にゲーム産業の基盤が整備されつつあります。オランダの調査会社ニューズーによれば、2024年の中東・アフリカ地域のゲームプレーヤー数は前年比8.2%増加し、5億人に達する見通しです。

このように、新興国のゲーム市場は急速に拡大しており、特にアジアと中東地域は今後の成長ポテンシャルが非常に高いエリアです。ゲーム産業がグローバルに広がる中、日本の企業にとってもこれらの市場に目を向けることが、ビジネス拡大の重要な鍵となります。

日本ゲーム産業の課題と海外市場への期待

東京ゲームショウ2024で明らかになったのは、海外市場の拡大に伴い、日本のゲーム企業がどのように対応していくかという課題です。日本国内のゲーム市場は近年、成長が停滞しており、2023年の市場規模は1.9兆円で横ばい状態です。これは、世界市場の成長ペースに比べて明らかに遅れており、日本のゲーム企業にとっては海外市場の開拓が不可避な課題となっています。

セガやコーエーテクモゲームスといった大手企業は、海外市場での展開を強化しています。たとえば、セガは「ソニック」シリーズを中心に、映画やモバイルゲームの新作を世界市場に向けて展開する「トランスメディア戦略」を推進しています。これは、家庭用ゲーム機が普及していない地域でもブランド認知を高めるための戦略であり、中東や南米といった新興市場でも成功を収めています。

また、コーエーテクモゲームスは、アジア圏での人気が高いIPを活用し、新興市場への先行投資を進めています。同社の鯉沼久史社長は、特に「グローバルサウス」と呼ばれる新興国市場における成長可能性に注目し、三国志などのコンテンツを現地に合わせて展開する戦略を明らかにしています。

こうした取り組みは、日本のゲーム産業にとって海外市場がどれほど重要であるかを示しています。

Reinforz Insight
ニュースレター登録フォーム

最先端のビジネス情報をお届け
詳しくはこちら

プライバシーポリシーに同意のうえ