中国のBaiduプラットフォーム上で、Qualcommの新型プロセッサ「Snapdragon X」のダイショット画像が公開された。この画像からは、巨大なCPUコアと大容量キャッシュ、そして比較的控えめなGPUの存在が明らかになった。Snapdragon Xは、データセンター向けプロセッサとしても開発されていたNuviaの技術を取り入れており、その高い性能が期待されている。

AppleのM4と比較してもわずかに大きい169.6mm²のダイサイズを持ち、TSMCのN4Pプロセス技術で製造されている。この新たなプロセッサが、今後の市場にどのような影響を与えるのか注目が集まる。

Snapdragon Xのダイショットで見えたCPUコアの驚異的な大きさ

Snapdragon Xのダイショットから明らかになった最も注目すべき点は、その巨大なCPUコアである。12コアを備えるSnapdragon X Eliteは、各コアが2.55mm²というかなりの大きさを持ち、これは通常のArm CPUコアと比べて大幅に大きい。また、これらのコアはNuviaが元々データセンター向けに開発していた高性能Oryon(コードネームPhoenix)コアをベースとしており、最大で3.80GHzで動作することが可能だ。

このOryonコアの設計は、プロセッサ全体のパフォーマンスを大幅に向上させることが期待されている。ダイ全体に占めるCPUドメインの面積は48.2mm²であり、これは非常に大きな割合を占めている。このサイズは、プロセッサ全体の性能向上を図るために相当なリソースを割り当てていることを示している。Snapdragon Xは、単なるモバイル向けSoCではなく、データセンターや高性能コンピューティング用途にも対応する意図があると考えられる。

一方で、AppleのM4と比較すると、TSMCの異なるプロセス技術(N4P vs N3E)の違いを考慮しても、Snapdragon XのOryonコアは依然として非常に高性能である。このことは、Qualcommが競合他社に対抗するための強力な戦略を持っていることを示唆している。

GPUは控えめな性能だが、キャッシュ容量が圧倒的

Snapdragon XのGPUは、CPUコアと比較するとかなり控えめな存在感を持っている。GPUドメインの面積は24.3mm²と、CPUドメインの約半分の大きさである。しかし、性能面では決して見劣りするわけではなく、4.6 FP32 TFLOPSの処理性能を持つ。この性能は、NvidiaのGeForce RTX 3050の4.8 FP32 TFLOPSに匹敵し、モバイルSoCとしては非常に高いパフォーマンスを発揮することができる。

注目すべき点は、Snapdragon Xが持つ圧倒的なキャッシュ容量である。GPUだけで12MBのキャッシュを備えており、これは多層構造で構成されている。さらに、CPUコアにも12MBのL2キャッシュが3つのクアッドコアクラスタに配置され、全体で54MBという大容量のキャッシュを持つ。これは、Snapdragon Xがデータ転送効率を最大限に高めるために設計されていることを示している。

このようなキャッシュ設計により、Snapdragon Xは高い処理速度と効率性を実現している。GPU性能自体は控えめかもしれないが、キャッシュ容量の豊富さが全体のパフォーマンスを支えているといえる。

Oryonコアのサイズが示すプロセス技術の違い

Snapdragon Xに採用されているOryonコアは、そのサイズと性能からプロセス技術の違いを如実に示している。Oryonコアの1つあたりのサイズは2.55mm²であり、これは最新のプロセス技術を活用した結果である。TSMCのN4Pプロセス技術(4nmクラス)で製造されているが、この技術の採用により、より高い動作周波数と効率的な電力消費が実現されている。

AppleのM4と比較すると、M4はTSMCのN3E(3nmクラス)プロセスを採用しているため、より小型でありながら複雑な設計となっている。しかし、Snapdragon XのOryonコアは、プロセス技術の違いを超えた性能を持っていると考えられる。これは、Nuviaが開発したオリジナルのOryonアーキテクチャが、非常に効率的なパフォーマンスを提供できることを示している。

Oryonコアの存在は、Qualcommが高性能CPU市場でAppleに対抗するための強力な武器である。この差は、今後のプロセッサ市場でSnapdragon Xがどれだけのシェアを奪うかの重要な指標となるだろう。

メモリとNPUも充実の仕様、未来への展望

Snapdragon Xには、128ビット幅のLPDDR5X-8448メモリインターフェースが搭載されている。これは高帯域幅と低レイテンシを両立するものであり、プロセッサ全体のパフォーマンスを大幅に向上させる。また、45 TOPSの推論能力を持つNPU(ニューラルプロセッシングユニット)も搭載されており、AI関連の処理にも対応できる。

さらに、ディスプレイコントローラやISP(画像信号プロセッサ)、各種の特殊用途コンポーネントも集積されている。これにより、Snapdragon Xは単なるCPUやGPUの性能にとどまらず、多様な用途に対応する汎用性を持つプロセッサとして設計されている。このような充実した仕様は、Snapdragon Xがモバイルデバイスだけでなく、PCやデータセンターなど幅広い分野で活用される可能性を示している。

今後、Snapdragon Xが市場に登場することで、Qualcommがどのようなシェアを獲得するか注目される。その性能と多機能性により、既存のプロセッサ市場に新たな変革をもたらす可能性が高い。

Reinforz Insight
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