リチウムは、電気自動車(EV)や蓄電池の需要拡大により、2025年に向けて注目度が急上昇しています。しかし、最新の市場予測では、供給過剰が見込まれ、リチウム価格の不安定化が懸念されています。

特に、ExxonMobilがSKグループと提携し、中国の圧倒的な製造能力に挑む構図が注目されています。このように、リチウム供給チェーンは、世界規模で激しい競争の舞台となりつつあります。

これからのリチウム市場を理解するためには、主要企業や生産国の動向、そして需給バランスの変化を把握することが欠かせません。

2025年リチウム市場の供給過剰と価格の行方

2025年に向けたリチウム市場では、供給過剰の懸念が広がっています。チリ銅委員会(COCHILCO)のレポートによると、2024年には世界のリチウム供給量が炭酸リチウム換算で124万6,000トン、需要は112万9,000トンに達し、供給過剰が11万7,000トンになる見込みです。この傾向は2025年にも続き、供給過剰が19万1,000トンに拡大すると予測されています。

リチウムの用途別では、67%が電気自動車(EV)のバッテリーに、13%が蓄電池システムに、9%が電動バイクのバッテリーに利用されるとされています。したがって、全体の約89%がバッテリー関連の用途に集中していることが明らかです。この需要の偏りは、エネルギー変革の加速とともに、リチウム供給のバランスを大きく左右する要因となるでしょう。

価格動向に関しては、2023年にリチウム価格が大幅に低下した後、2024年第4四半期には平均で1トン当たり15,950ドルに持ち直すと見られています。さらに、2025年には1トン当たり16,450ドル、2030年以降には18,280ドルに達する可能性があります。これにより、リチウム鉱山の新規プロジェクトへの投資意欲が高まり、供給量のさらなる増加が期待されます。

しかし、これらの予測は需要の急増を前提としているため、予測通りの供給過剰が実現するかは、電動車市場の成長速度や各国のエネルギー政策に大きく依存しています。リチウム市場における価格の変動は、今後の業界全体に影響を及ぼす重要な指標となりそうです。

主要企業の動向:ExxonMobilとSKグループの戦略的提携

リチウム市場における企業間競争が激化する中、ExxonMobilとSKグループの戦略的提携が注目されています。2024年6月、ExxonMobilはSKグループと共同でMobil Lithiumの購入を検討しており、これにより100万台以上の電気自動車(EV)向けにリチウム供給を確保する計画です。この提携により、SKグループはグローバルなサプライチェーンの強化を目指し、特にアジア市場での影響力を高めることを狙っています。

また、SKグループはリチウムイオンバッテリー技術において世界的なリーダーであり、既存の技術を活かして新しいバッテリーソリューションを開発しています。これにより、EV市場の成長を支えると同時に、持続可能なエネルギー供給の確保に向けた一歩を踏み出しています。ExxonMobilの資本力とSKグループの技術力が融合することで、新たなイノベーションが期待されます。

この提携は、中国を中心とするリチウムバッテリー市場の競争激化に対抗するための戦略的な動きと位置付けられています。特に、アメリカ市場でのシェア拡大を目指し、リチウム供給の確保とバッテリー製造能力の強化が急務とされています。今後、この提携がどのように業界全体に影響を与えるのか注視が必要です。

中国が支配するリチウムバッテリー市場:圧倒的な製造能力

中国は、2025年に向けて世界のリチウムバッテリー市場で圧倒的な存在感を誇示しています。BloombergNEFの報告によると、中国は2025年までに年間7.9テラワット時(TWh)のバッテリー製造能力を確保する予定です。これは、世界の総需要予測である1.6TWhをはるかに上回る数字であり、中国がリチウム供給チェーンの中心的な位置を占めていることを示しています。

この優位性は、中国の主要企業であるCATL(Contemporary Amperex Technology Co. Limited)やBYDなどのリチウムバッテリーメーカーによって支えられています。特にCATLは、テスラやBMW、フォルクスワーゲンといった大手自動車メーカーにバッテリーを供給しており、世界市場でのシェアを急速に拡大しています。また、BYDも独自のバッテリー技術を用いて、世界中の電動車市場に深く関与しています。

中国政府もリチウム資源の戦略的重要性を認識し、国内外でのリチウム鉱山投資を積極的に推進しています。特に南米のリチウム三角地帯(アルゼンチン、ボリビア、チリ)への投資を強化し、安定的な供給源を確保しています。こうした投資戦略により、中国はリチウム供給の完全な支配を目指しているとされています。

米国の新たな供給戦略:国防総省の国内採掘拡大計画

米国は、中国依存を減らすために国内のリチウム供給戦略を見直し、国防総省(DoD)がリチウム採掘を拡大する新たな計画を打ち出しました。この取り組みは、2023年9月に発表され、米国のバッテリーサプライチェーンを強化するための重要な一歩となっています。この計画により、米国は国内でのリチウム採掘を拡大し、電気自動車(EV)や再生可能エネルギー向けのバッテリー生産を促進する狙いです。

DoDの支援のもと、リチウム採掘プロジェクトはネバダ州やカリフォルニア州を中心に展開される予定です。これには、リチウム鉱山の開発企業であるLithium AmericasやPiedmont Lithiumなどの協力が期待されています。特に、Lithium Americasは米国最大のリチウム鉱床であるThacker Passプロジェクトを手がけており、この開発が成功すれば米国のリチウム供給が大幅に強化される見込みです。

また、米国政府はリチウム供給の多様化を図るため、オーストラリアやカナダとのパートナーシップも強化しています。これにより、アジア圏に対する依存度を低減し、より持続可能な供給チェーンの構築を目指しています。

リチウム採掘業界のキープレイヤー:Albemarle、Ganfeng、天齐リチウム

リチウム採掘業界において、Albemarle、Ganfeng Lithium、天齐リチウム(Tianqi Lithium)は世界トップクラスのプレイヤーとして注目されています。これらの企業は、リチウムイオン電池の需要拡大に伴い、積極的に採掘プロジェクトを推進し、市場シェアを拡大しています。Albemarleは米国最大のリチウム生産企業であり、南米のリチウム三角地帯やオーストラリアのGreenbushes鉱山での生産を強化しています。

中国のGanfeng Lithiumは、世界的なリチウム供給チェーンにおいて重要な役割を果たしており、テスラやBMWといった大手自動車メーカーへの供給を行っています。Ganfengはまた、バッテリーリサイクル技術にも注力しており、持続可能なリチウム供給を実現するための取り組みを進めています。

天齐リチウム(Tianqi Lithium)は、オーストラリアのTalison Lithiumとの合弁事業を通じて、高品質なリチウム資源の安定供給を確保しています。天齐リチウムは、中国国内での製造能力を大幅に拡大しており、リチウムバッテリー市場での影響力を強化しています。これらの企業の競争と協力が、リチウム供給の安定と市場の成長を支えています。

EVバッテリー需要と供給ボトルネックのリスク分析

2025年に向けて、電気自動車(EV)のバッテリー需要は急速に増加すると予測されており、これがリチウム供給チェーンに大きな圧力をかけると見られています。Automotive Logisticsのレポートによれば、EVバッテリーの生産能力が需要に追いつかず、供給ボトルネックが発生するリスクが高まっています。特に、ヨーロッパや北米の自動車メーカーがこの影響を大きく受ける可能性が指摘されています。

リチウム供給のボトルネックは、特に鉱山の開発スピードや精製プロセスの効率に左右されます。現在、新規プロジェクトの立ち上げには数年単位の時間がかかるため、短期的な需要に対応するのは困難です。これにより、各国の政策や市場環境が供給チェーンに与える影響が一層重要となっています。

さらに、リチウム価格の不安定な動向が新規参入者にとって大きなハードルとなる一方、大手企業にとっては市場支配を維持するための機会ともなります。これにより、リチウム供給チェーン全体の効率性と持続可能性が問われる局面を迎えています。

投資家必見!今後のリチウム関連銘柄の動向と見通し

リチウム関連銘柄への投資は、今後の市場動向に大きく影響されることが予想されます。特に注目されるのは、Albemarle、Livent、そして中国のBYDやGanfeng Lithiumなどの企業です。これらの企業は、電気自動車(EV)市場の成長を背景に、リチウム採掘やバッテリー製造の分野で圧倒的な競争力を誇っています。2025年に向けて、これらの銘柄が大幅に成長する可能性が指摘されています。

Albemarleは、リチウムの採掘と精製においてリーダーシップを持つ企業であり、特に南米とオーストラリアの鉱山プロジェクトに力を入れています。一方、Liventは、高純度のリチウム化合物を提供し、特に先進的なバッテリー技術において独自の地位を確立しています。Liventの技術力は、エネルギー効率の高いバッテリーの製造に寄与しており、今後も多くの投資家の注目を集めるでしょう。

中国のBYDは、リチウムイオンバッテリーの製造とEV開発においてグローバルなプレゼンスを持ち、Teslaを含む多くの自動車メーカーに供給を行っています。また、Ganfeng Lithiumはリチウム採掘から精製までを一貫して手掛ける企業として、中国国内外での影響力を拡大しています。これらの企業の動向は、今後のリチウム市場に大きな影響を与えることが期待されています。

各企業が展開する技術革新や新規プロジェクトが、リチウムの供給と需要のバランスを左右する可能性が高いため、投資家はこれらの動きを注視する必要があります。

Reinforz Insight
ニュースレター登録フォーム

最先端のビジネス情報をお届け
詳しくはこちら

プライバシーポリシーに同意のうえ