NordVPNは、世界中に6,400以上の超高速VPNサーバーを展開する人気のVPNプロバイダーである。
同社は、Windows on ARMデバイス向けにネイティブアプリの提供を開始し、この分野での最初の対応プロバイダーの一つとなった。
Surface ProやSamsung Galaxy Book4を含む最新のARMデバイスで、インターネットトラフィックの暗号化において向上したパフォーマンスを実現している。
Threat Protection機能はまだ搭載されていないが、今後のアップデートで追加される予定だ。
NordVPN、ARMデバイス向けに最適化された新アプリを発表
NordVPNは、Windows on ARMデバイス向けにネイティブアプリをリリースし、ユーザーに新たな利便性を提供している。このリリースにより、ARMアーキテクチャを採用したデバイスでのVPN利用が、従来よりもスムーズかつ高性能になった。Surface ProシリーズやSamsung Galaxy Book4、Lenovo Flex 5Gなどの最新デバイスがサポートされ、これらのデバイス上でインターネットトラフィックの暗号化がより効率的に行われるようになった。
従来、ARMデバイス上でのVPN利用は、x86エミュレーションに依存していたが、今回のアップデートにより、ネイティブで動作するアプリが利用可能になった。これにより、特にVPN接続時の速度や応答性が改善されている。ただし、現時点では「Threat Protection」や「Threat Protection Pro」といったセキュリティ機能は未実装であり、これらは今後のアップデートで追加される予定である。VPN市場において、ARMプラットフォーム対応の進展は、ノートPCやタブレットを含むデバイスのさらなる普及を後押しするだろう。
パフォーマンス向上の背景にある技術
NordVPNの新アプリが実現したパフォーマンス向上の背景には、ARMネイティブ対応による最適化がある。従来、Windows on ARMデバイスでは、x86エミュレーションを通じてアプリが動作していたため、パフォーマンスに制約があった。今回のリリースによって、NordVPNはARM向けに専用に設計されたアプリを提供し、デバイスの性能をフルに活かすことが可能となった。
ARMアーキテクチャは、特にモバイルデバイスや低消費電力デバイス向けに最適化されており、VPNの利用時にもより少ないリソースで高い暗号化性能を発揮することができる。また、ARMネイティブアプリの恩恵として、バッテリーの持続時間も改善されるとされている。このように、NordVPNのARMネイティブ対応は、単なる性能向上に留まらず、より広範なユーザー体験の向上に寄与するものである。
ExpressVPNとの競争とARMプラットフォームの未来
VPN業界において、NordVPNはExpressVPNとの激しい競争を繰り広げている。先月、ExpressVPNもWindows on ARM向けのアプリをリリースしており、こちらはPrismエミュレーターを利用したx86エミュレーション方式で動作する。このため、ExpressVPNはアプリのUIやバックエンド部分をエミュレートしながら、特定のプロトコル用ドライバのみをARMに最適化するという異なるアプローチを採用している。
NordVPNの完全なネイティブ対応とは対照的に、ExpressVPNの選択肢はエミュレーションに頼っており、今後のARMプラットフォームへの完全移行がどう進展するかが注目されている。Windows on ARMは、MicrosoftのSurface Proシリーズを中心に徐々に普及しつつあるが、まだ完全なエコシステムとは言いがたい。VPNプロバイダーによるネイティブ対応が進むことで、ARMデバイスの利用環境がさらに整備され、将来的にはARMがより広く採用される可能性が高まっている。
Windows on ARM対応のアプリエコシステムの拡大
Windows on ARMプラットフォームは、ここ数年で徐々に注目を集めているが、特に最近の動きが顕著である。多くのサードパーティ製アプリがARMネイティブで動作するようになり、VPNに限らず、さまざまなツールやソフトウェアがこのプラットフォームをサポートし始めている。具体的には、ChromeやSpotify、Zoom、WhatsApp、Adobe Photoshopといった人気アプリがネイティブに動作し、ユーザーに快適な操作性を提供している。
今後も、SlackやGoogle Driveなどの主要アプリがARM対応する予定であり、Windows on ARMプラットフォームのエコシステムはさらに拡大していく見込みである。この流れは、低消費電力かつ高性能なARMチップの進化と相まって、PC市場においてもARMが主流になる可能性を示唆している。ARMデバイスの性能が高まり、対応アプリが増加することで、ユーザーはより快適で効率的なデジタルライフを送ることができるようになるだろう。