IBMは、新たなオープンソースAIモデル「Granite 3.0」シリーズを発表した。これはエンタープライズ向けの生成AI市場を拡大するための重要な一手となる。今回のモデルは、2億から8億パラメータのバリエーションを持ち、多岐にわたる業務用途に対応する。
モデルの訓練には12兆個のトークンが使用され、複数の言語データやコードデータを活用することで性能を向上させた。さらに、IBM独自の「InstructLab」により、企業の特定ニーズに合わせたモデルの調整が可能となる。安全性に特化した「Guardian」モデルも導入され、AIモデルの誤用を防ぐ仕組みを強化している。これにより、企業がAIを迅速かつ安全に活用するための新たな基盤が提供される。
Granite 3.0の特徴とモデルラインナップ
IBMが発表したGranite 3.0は、エンタープライズ向けに特化した生成AIモデルである。新モデルは2億から8億のパラメータを持つ多様なオプションが用意されており、企業の複雑なニーズに対応できる柔軟性が特徴だ。特に「Granite Guardian」モデルは、安全性を重視した設計で、AIの誤用防止を目的としたガードレール機能を強化している。
さらに、IBMは「Mixture-of-Experts(MoE)」構造を採用し、特定のタスクに応じてモデルが効率的にリソースを配分する仕組みを導入している。これにより、IT業務の自動化からアプリケーション開発、サイバーセキュリティまで幅広い分野での活用が期待される。これらのモデルは、IBMの「watsonX」やAmazonの「Bedrock」「Sagemaker」、さらにはHugging Faceでも提供される予定である。
モデルの汎用性だけでなく、IBMはその高速な商業展開にも自信を見せている。同社の最高商務責任者ロブ・トーマスは、同モデル群が既に20億ドル規模の生成AI市場の拡大を支えていると述べた。Granite 3.0は、単なる技術的な進化にとどまらず、エンタープライズAIの未来を切り開く重要なツールとなる。
データ品質と訓練プロセスがもたらす性能向上
Granite 3.0の大きな特徴は、その訓練プロセスと使用するデータの品質である。IBMは12兆個のトークンを使用してモデルを訓練し、言語データとプログラムコードの両方を組み合わせることで、より高度な生成能力を実現した。これにより、従来のモデルを上回る精度と応答性が得られる。
この訓練はIBMの「データモデルファクトリー」によって実施され、モデルの調整やデータの選定が集中的に行われた。特に注目すべき点は、IBM自身が最初の顧客として自社のAIモデルを活用する点である。これにより、リアルタイムでのフィードバックを得て、モデルの品質を迅速に向上させることが可能となっている。
また、IBMは他の主要なAIモデルと比較しても高い性能を主張しており、GoogleやAnthropicの最新モデルを上回る成果を挙げたと発表している。こうした高性能なモデルの開発には、アーキテクチャの革新と独自データの活用が大きな要因となっている。