AIによる調達ソリューションを提供するスタートアップ「Zip」が、シリーズDラウンドで190百万ドルを調達した。このラウンドはBondが主導し、DST Global、Adams Street Partners、Alkeon Capitalといった新規投資家が参加した。評価額は22億ドルに達し、前年のシリーズCから47%の上昇を見せた。
Zipは2020年創業の企業で、顧客が新しいソフトウェアやハードウェアを効率的に調達するプロセスを支援している。今回の資金は、AIラボの設立や研究開発に加え、グローバルな市場拡大に活用される予定である。企業資源計画(ERP)の一分野である調達分野は投資が停滞気味だが、Zipの成長は市場全体を活性化する可能性を秘めている。
シリーズDで190百万ドル調達、評価額47%上昇
AI調達スタートアップ「Zip」は、シリーズDラウンドで190百万ドルを調達した。主導したのはベンチャーキャピタルのBondであり、DST Global、Adams Street Partners、Alkeon Capitalといった新規投資家も参加した。これにより、Zipの評価額は22億ドルに達し、前回シリーズCの15億ドルから47%の上昇を記録した。この資金調達は、調達関連企業の中で大規模な成功例といえる。
市場全体が低迷する中、Zipの調達力と成長戦略が際立っている。今年のERP(企業資源計画)分野で最大規模の資金調達となり、企業の効率化を支えるAI技術の需要の高まりを反映している。Zipのこれまでの総調達額は371百万ドルに達し、短期間での急成長が顕著である。今後もさらなる成長を見据えた投資が予定されており、同社の価値向上が続くと予想される。
AI活用の調達ソリューションで企業効率化を推進
Zipの調達プラットフォームは、企業が新しいソフトウェアやハードウェアを導入する際に直面する複雑な手続きを効率化することに特化している。購買、承認、支払いといった一連のプロセスを簡素化することで、顧客は迅速かつ正確にビジネスツールを調達できるようになる。
特に、AIを活用した意思決定支援機能が顧客から高く評価されている。複雑な選定プロセスを最適化し、コスト削減と業務効率化を実現するZipのサービスは、経済の不確実性が高まる中で需要が拡大している。こうした環境において、同社のサービスは多くの企業にとって不可欠な存在となりつつある。
Bondのパートナー、ジェイ・サイモンズは「Zipの製品革新と顧客重視の姿勢は他社にない強みである」と述べており、競争が激化する市場でも同社の差別化要因を強調している。
資金はAIラボ設立とグローバル展開に充当
今回の調達資金の一部は、AI研究開発に特化した新しいラボの設立に充てられる予定である。このAIラボでは、同社の調達プラットフォームをさらに強化するためのツール開発が進められる。ZipはAI技術を活用し、企業の購買業務のさらなる効率化を目指している。
加えて、同社は地理的な市場拡大にも注力する方針である。アメリカ市場に留まらず、グローバル展開を加速させることで、同社の成長ポテンシャルを引き上げる計画だ。特に、経済成長が期待される地域でのビジネス機会を積極的に探る構えを見せている。
研究開発と市場拡大の両軸で進む戦略は、競争の激しいERP市場においてZipをより優位なポジションに押し上げるだろう。新たな投資で強化された技術力が、将来の事業展開の鍵を握る。
ERP市場の中で際立つZipの成長
ERP分野全体が低迷する中で、Zipの存在感は際立っている。Crunchbaseのデータによれば、2023年のERP関連スタートアップへの投資額は240百万ドルと振るわなかった。しかし、今年に入っても同分野の資金調達環境は厳しく、これまでに314百万ドルしか調達されていない。
そうした市場環境の中で、Zipは大きな成果を上げた。2023年のシリーズCラウンドに続き、今回のシリーズDラウンドはERP分野で今年最大の資金調達となった。同社の躍進は、調達業務のデジタル化と効率化の波に乗った結果であり、他の企業にとっても刺激となるだろう。
Zipの成功は、ERP市場が新たな方向性を模索する転換点を示唆している。革新的なAI活用が新たな価値を創出し、従来のERPシステムに変革をもたらしているのである。