ポストコロナの厳しい財政状況が、多くの貧困国で国家デフォルトを引き起こし、その波がようやく収束に向かいつつある。ガーナ、スリランカ、ザンビアなどは、苦しい債務再編を経て危機を乗り越えたが、代わりに資金不足という新たな脅威が現れた。
今週、ワシントンD.C.で開催されるIMF・世界銀行の秋季会合では、西側諸国の支援が滞る中、この問題への対応が重要な議題となっている。融資不足は、教育やインフラ投資の停滞を招き、各国の経済成長と気候変動対策を遅らせる深刻な要因となる。中国の融資減少に加え、先進国の予算削減が進む現状は、発展途上国の未来に影を落とす。
デフォルト後の新たな危機:資金流動性の枯渇
ポストコロナの経済混乱が原因で、ガーナやスリランカなど複数の貧困国が債務不履行(デフォルト)に陥り、その再編を経てようやく安定の兆しを見せている。しかし、新たな問題として浮上したのが資金流動性の不足である。これにより、発展途上国では社会インフラの整備や気候変動対策が滞り、経済の停滞を招く深刻なリスクが広がっている。
国際通貨基金(IMF)と世界銀行は、この問題を解決するため、短期的な資金供給策を模索している。しかし、先進国による海外援助の縮小が進む中、その取り組みには限界がある。今週開催されるIMFと世界銀行の秋季会合では、こうした課題への対応が重要な議題となっているが、迅速かつ大規模な支援を必要とする声が上がっている。各国政府は、債務返済のために教育や医療といった基本的な公共サービスへの支出を削減しており、国民生活への影響が懸念される。資金流動性の枯渇がもたらす危機は、一時的なデフォルト以上に深刻な問題として各国の発展を阻害している。
IMFと世界銀行、緊急支援策の限界
IMFと世界銀行は、債務危機に直面する発展途上国を支援するため、いくつかの施策を講じてきた。世界銀行は今後10年間で300億ドルの融資拡大を計画し、IMFも最も困窮する国々の負担を軽減するため、追加金利(サーチャージ)の削減を進めている。しかし、こうした努力は限界に達しつつあり、抜本的な解決策が求められている。中国が融資規模を縮小し、西側諸国が財政援助を削減する中、多くの国は資金調達の選択肢を失っている。
インターナショナルな協調が進む一方で、開発銀行はIMFの特別引き出し権(SDR)の活用を促し、少ない資金でより多くの融資を引き出す戦略を取っているが、その効果には限りがある。新興国の経済が低迷する中で、IMF主導の金融安全網はもはや十分とは言えない状況にある。こうした資金不足の問題が解消されなければ、債務国が再びデフォルトに陥る可能性が高まることが懸念されている。
債務返済が社会基盤を圧迫する実態
債務返済の負担が重くのしかかり、多くの発展途上国で教育、医療、インフラといった公共サービスへの投資が削減されている。この結果、社会基盤が脆弱化し、長期的な経済成長が阻害される悪循環が生じている。IMFの分析によれば、すでに2022年時点で26カ国が外部からの融資額を上回る債務返済を行っており、その傾向は今後も続く見込みである。
特に、借り入れコストの上昇が状況を悪化させている。ケニアは2024年にドル建て債務の返済を迫られ、10%以上の高利率での資金調達を余儀なくされた。これにより、財政予算内でのインフラ投資が不可能となり、社会サービスへの支出も大幅に抑制されている。こうした状況は市民生活にも直接的な影響を及ぼし、各国で不満が高まっている。ナイジェリアやケニアでは政府への抗議運動が相次いでおり、債務返済による社会基盤の崩壊が深刻な問題となっている。
中国の融資減少と西側諸国の援助の後退
中国の融資縮小が、新興国の経済に深刻な影響を与えている。かつては主要な融資元であった中国の資金が減少し、各国は借入金の返済に追われる一方で、新たな投資資金を確保できない状況に陥っている。西側諸国も財政的な制約から援助を削減しており、フランスやイギリスは既に海外支援を相次いで減らしている。これにより、発展途上国は深刻な資金不足に直面しており、経済の停滞が進んでいる。
特に、強いドルの影響で円安が進む日本は、現状維持のためには拠出額を大幅に増やす必要があるが、それを実現するための国内合意は難しい状況である。こうした資金難の影響は社会不安を引き起こし、各地で抗議活動が活発化している。政府への信頼が失われつつある中、世界経済のバランスを維持するためには、各国が協調して資金支援を拡充する必要がある。