メタバースが今後のデジタル世界の主流になるためには、子供の安全と規制の課題を解決しなければならないと、IT専門家が指摘している。
BCS(英国コンピュータ協会)によるメタバース調査概要
BCS(英国コンピュータ協会)がオンラインで実施した調査によると、毎日の生活の一部としてメタバースが存在するためには、保護、スキル、規制といった課題を克服する必要がある。この調査は、2023年4月24日から5月9日までの間に、1,036人のBCS会員が回答した。
BCSの調査によると、テクノロジー専門家の77%がメタバースにおける安全性に関心を持っており、81%の専門家は仮想環境が新たな規制上の課題を引き起こすと考えている。
このBCSの調査結果は、2023年5月15日の月曜日、ウェストミンスターで開催されたメタバースとWeb 3.0に関する全党議員グループ(APPG)のセッションで議論された。
また、BCSの調査では以下のような結果も得られた。
- IT専門家の25%だけが、メタバースや没入型技術が社会に利益をもたらすと信じている。
- Web 3.0が社会を改善すると考えているのは38%だけである。
- メタバースやWeb 3.0から経済的に恩恵を受けるための英国のデジタルスキルに対する自信は相対的に低く、メタバースに対しては19%、Web 3.0に対しては26%しか自信がない。
- メタバース(81%)とWeb 3.0(77%)が新たな規制上の課題を引き起こすと、大半が合意している。
- 調査に参加したIT専門家の半数は、メタバースが地球の気候に対して負の影響を及ぼすと考えている。32%は影響がないと述べ、18%は影響がポジティブであると示した。Web 3.0についても結果は同様である。
メタバースは、3Dデジタル空間を使用して人々がオンラインで生活に近い経験をすることが可能な空間として説明されることが多い。
Web 3.0は、分散化やブロックチェーン技術などの概念を取り入れた新たなバージョンのウェブとされている。しかし、BCSの調査によると、メタバースとWeb 3.0のいずれも、専門家と一般大衆の双方に意味が伝わるような明確で受け入れられた定義は存在していない。
メタバースによる公教育、透明性、信頼
BCSのCEOであるラシク・パルマールは、「私たちはすぐにメタバースで生活や仕事をすることにはならない。しかし、仮想環境での時間が増える可能性があるため、その世界を信頼することが重要だ」と語った。
彼はさらに、「テクノロジー専門家は、特に子供たちの安全性が大きな懸念事項であると考えている。現実とデジタルの世界の境界がぼやける中で、規制、保護問題、利用可能なスキルの深さがすべて解決される必要があり、メタバースが日常生活の一部となる前に環境への影響も大きな課題となる」と語っている。
「没入型技術、そしてAIと同様に、それらは倫理的で、高度に有能で、包括的な専門家のチームによって構築・維持されるべきである。これにより、ソーシャルメディアで依然として見られるミスを避ける可能性が高まる。理想的には、メタバースを”運営”している個人や組織を、一定のプロフェッショナルな説明責任の基準に照らして評価することができるべきである」とパルマール氏は述べた。
メタバースとWeb 3.0の課題に社会が一丸となって取り組む
メタバースとWeb 3.0は、その潜在的な影響力と革新性から見て、デジタル世界の未来を大きく左右する可能性がある。しかしながら、BCSの調査が示すように、これらの新たな技術領域が社会全体に受け入れられ、ポジティブな影響を及ぼすためには、多くの課題を解決する必要がある。
子供の安全性、規制の課題、デジタルスキルの欠如、環境への影響など、これらの問題は無視できない。IT専門家や政策立案者がこれらの課題に真剣に取り組むことが求められており、これらが解決されなければ、メタバースやWeb 3.0の普及は難しいと言える。
さらに、パルマール氏が指摘するように、公教育、透明性、信頼が不可欠である。メタバースやWeb 3.0がもたらす可能性を最大限に引き出すためには、それらの技術についての理解を深め、公正で公開された基準に基づいて規制することが重要だ。
以上のような視点から見ると、メタバースとWeb 3.0は、単なるテクノロジーの進歩以上のものを必要としている。それは、社会全体が新たなデジタル世界とその可能性を理解し、その中で生きるためのスキルと規範を身につけることだ。この過程は挑戦的であるかもしれないが、それは同時に新たな機会をもたらす可能性があり、社会全体が一緒に取り組む価値のある課題であると言えるであろう。