Googleは、最新のPixelデバイスに「Hold close to cast」と呼ばれる新機能を展開した。
この機能は、対応するPixelスマートフォンをPixelタブレットに近づけることで、メディアをタップなしで簡単に転送できる仕組みである。UWB(超広帯域無線)技術を活用したこの機能により、YouTube MusicやSpotifyといったアプリで双方向の再生切り替えが可能となる。
また、接続には同じWi-Fiネットワーク上での接続が必要とされており、これによりPixelエコシステム内でのシームレスなメディア体験が期待される。
「Hold close to cast」の概要と利便性
Googleは最新のPixelアップデートで、Pixelデバイス間のメディア共有を容易にする「Hold close to cast」機能を発表した。この機能は、PixelスマートフォンをPixelタブレットに近づけるだけで、メディア再生を瞬時に転送できるというもので、デバイス同士のペアリングや特別な操作が不要であることから、ユーザーにとって非常に直感的で利便性が高い。タブレットをリビングルームのドックにセットし、Pixelスマートフォンを手にしたまま音楽や動画の再生を簡単に移行できるため、部屋を移動する際などのシームレスな体験を可能にする。
また、YouTube MusicやSpotifyなど、一般的なストリーミングアプリに対応しており、音楽や動画を自由にタブレットとスマートフォン間で行き来できる点が特に魅力である。しかしすべてのメディアアプリが対応しているわけではなく、Googleは一部アプリにおいて対応していないことを明示している。とはいえ、音楽や動画の切り替えを必要とする場面での使いやすさは他に類を見ないものであり、Pixelデバイスを活用するユーザーにとって有用なアップデートといえる。
今回の「Hold close to cast」機能は、Pixelユーザーの利便性向上を目的としており、特にスマートホームの一環としてタブレットをリビングで活用する場合に大きなメリットをもたらす。Pixelエコシステムの中での新たな試みとして、Googleのデバイス間でのシームレスな連携の象徴といえる。
対応デバイスとUWB技術による接続要件
「Hold close to cast」機能を利用するには、対応するPixelデバイスが必要であり、Pixel 6 Pro、Pixel 7 Pro、Pixel Fold、Pixel 8 Proなどのプロバージョンや、最新のPixel 9 Proシリーズが含まれている。この機能は、UWB(超広帯域無線)技術を活用しており、Pixelスマートフォンとタブレットが短距離で通信し、メディアを即座に転送する仕組みである。UWBはBluetoothやWi-Fiよりも高精度な位置検出が可能で、デバイスが近接しているかどうかを瞬時に判断できるため、スマートフォンをタブレットにかざすだけでメディア転送が実現する。
また、使用するデバイスが同じWi-Fiネットワークに接続されている必要があるため、リモート操作とは異なり、家庭内での使用が前提とされている。この点から、リビングやキッチンなど、限られた空間内での利用に最適化されており、部屋を移動しながらのシームレスな音楽再生が求められるシーンで威力を発揮する。
UWB技術を利用することで、従来のBluetooth転送に比べ、より安定的かつ迅速なメディア共有が可能である点が「Hold close to cast」の利点である。Googleのこの新機能により、Pixelデバイスはスマートホーム体験を一層充実させる方向に進化している。
利用手順と注意点
「Hold close to cast」を利用するためには、まずPixelスマートフォンの設定メニューから「Castオプション」を有効にする必要がある。具体的には、設定アプリ内の「Google」メニューから「全サービス」を選び、「Castオプション」に進むとこの機能が表示され、ワンタップで有効にできる。タブレット側では特に設定が不要であり、スマートフォンをかざすだけでメディア転送が開始される仕組みだ。
利用時には、タブレットが専用ドックに置かれていることが推奨される。このドックにタブレットを固定することで、リビングルームなどでの安定したメディア再生が可能となり、デバイス間の通信がよりスムーズに行われる。また、タブレットが「ハブモード」にロックされている場合でも、スマートフォンさえアンロック状態であればメディアを転送できる。
ただし、スマートフォンを一度転送後にすぐ移動させないと、タブレットが逆にメディアをスマートフォン側に戻そうとするため、タイミングがやや繊細である。また、対応アプリが限られているため、すべてのメディアアプリで使用できるわけではない点に留意が必要である。
Pixelエコシステム内での相互操作性の強化
「Hold close to cast」機能の導入により、PixelスマートフォンとPixelタブレットの相互操作性が大幅に強化された。この機能があれば、ユーザーは場所に応じてデバイス間で音楽や動画を移動させることができ、Pixelエコシステムにおける利便性が向上する。特に、リビングに設置されたドックでタブレットを常設しておくことで、家庭内でのメディア体験が一層シームレスになる。
また、今回のアップデートにより、Pixelタブレット専用ドックの購入を検討するユーザーも増えることが予想される。スマートホームのハブとしてタブレットが機能するだけでなく、簡単な操作でスマートフォンからメディアを送信できるため、利便性が格段に高まるからである。
Pixelタブレットが2023年6月に発売された際、この機能が同時に発表されていれば、エコシステム全体の価値がさらに高まったであろう。しかし、今回の機能追加によってPixelユーザーはスマートホーム環境でのエンターテインメント体験を一層充実させることができるようになったといえる。Googleは今後もPixelエコシステムの強化に注力し、より多くのデバイス間での連携を目指すと見られる。